■3■ フードファイター千歳
お墓参りに付き合った帰り、歩いて百合丘駅まで行った。
「今日はどちらにお泊りになられますの?」
「えーっと、多分どこかの旅館かホテルに泊まろうかと思ってますが……」
彩お姉ちゃんは人差し指をあご先に添えながら言った。
「なら今日は是非うちに泊まってってくださいな」
「ええっ、そんな迷惑じゃ……」
彩お姉ちゃん、なんだかちょっと動揺してる。
「いえいえ、いいんですよ、今はわたしとこの子の二人っきりですし、賑やかな方がこの子も喜ぶでしょうし」
「でも……」
困ったように私の方を見る。私の許可を求めてる、のかな? それとも助けを求めてる?
「ふむふむ彩お姉ちゃん、くるしゅうない。その申し出を受けることを許可いたす」
彩お姉ちゃんの表情がますます曇った。
「千歳の食事が、一番の不安材料なんだけど……」
彩お姉ちゃんの言葉に、進も得心がいったとばかりにうなずく。
「んなっ!」
私は……反論することも出来ずに悔しさを噛み締めた。
おばあちゃんの家では、それはそれは食べるに食べてしまった。私以外の全員の一日分の食事を一食で食べる勢い。
「大食漢といいますか、大食女が一人いますが、大丈夫ですか?」
「もちろん、大丈夫ですよ」
老婦人はふっと私に微笑みかけた。夏の昼下がり、涼しい風になびく風鈴の音が遠くで聞こえた。