表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に愛された宮廷魔導士  作者: 桜花シキ
第3章 学園編(二年生)
89/173

25 ささやかなお茶会

 勉強会の成果もあってか、あの日参加していたメンバーは全員進級できることになった。

 ほっと一安心していたところに、グランディール様から招待状が届いた。ささやかなお茶会をするので、私にも参加してほしいとのこと。

 断る理由もないので、リーファに身支度を手伝ってもらい、城へと足を運んだ。


 グランディール様に会ったのは、獣人たちとの戦いに参加させて欲しいと頼みに行った時以来になるだろうか。

 戦いが終わってからはグランディール様も色々と忙しくて、直接報告する機会は今日までなかった。

 無理を言って自分の意見を押し通してしまったし、そのこともちゃんと話しておかないとな。

 

 日当たりのよいテラスに通されると、そこにはすでにグランディール様が椅子に座って待っていた。


「お待たせして申し訳ありません。他の方々は?」

「いや、君と会うのが楽しみで準備が早く終わってしまっただけだ。今日は他に誰か呼んでいるわけではないよ。君と私の二人きり、ささやかなお茶会だ」


 なんと、そうでしたか。聞けば、完全にプライベートなお茶会だと教えてくれた。貴重な時間を一緒に過ごすのが私で恐縮だが、楽しみにしていたという言葉を信じることにしよう。

 引いてもらった椅子に座り、グランディール様と向かい合う。


「お疲れの顔をされていますね」

「そう見えるか? ここ最近、色々と立て込んでいてな。あまり休息がとれていないのは確かかもしれない」

「少し失礼します」


 本当はちゃんと休んでもらった方がいいのだけれど。少しでも疲れが軽減するよう、癒しの魔法をかける。


「ありがとう。身体が軽くなったよ」

「でも、同じ生活を続けていれば、すぐに元通りですよ。休める時には休んでくださいね」

「善処しよう」


 彼が忙しいのは知っている。そう簡単に休めと言われて休める状況にはないだろう。

 今日だって、時間があるのならゆっくり休息をとってもらった方がよかったのではないかとも思う。

 だが、誘ってくれたのは彼の方だし、何かしら意味があることなんだろうな。


「先日は、送り出していただきありがとうございました。おかげで、心残りはありません」

「君のおかげで、犠牲者は一人も出なかったと聞いている。私からも礼を言わせてほしい。君の力なくしては、あり得なかったことだ。本当にありがとう」

「宮廷魔導士や騎士の皆さんの力があったからですよ。私は後方から支援させていただいただけですので」

「だが、君の力なくして、犠牲者をゼロにすることはできなかっただろう。聞けば、魔獣まで襲ってきたらしいな。複数出現した魔界の門を閉じたのも君だったと」


 魔獣が村を襲ったことについては予期せぬ事態だった。ギャロッド様が早めに伝えにきてくれなければ、気づくのが遅れて被害は広がっていただろう。


「結果だけ見せられれば、君の力を借りることが最善の選択だったのだろうと思う。だが、送り出してから何度も悩んだ。危険な場所に君を放り込んで、本当によかったのかと。力尽くでも止めるべきだったのではないかと」


 余計な心配をかけてしまったことについては、申し訳なく思う。でも、行かないという選択肢だけは考えられなかった。


「あまり自分から危険なことに突っ込んでいかないようにな」

「エルにも同じこと言われました……ご心配をおかけして申し訳ありません。気をつけるようにします」

「だろうな。しかし、君の気をつけるは信用ならないからな」

「はは……」


 やれやれ、という顔をされてしまった。

 よく危険に突っ込んでいくと言われるけど、そこまでだろうか? ううん……こういう自覚がないところを心配されているんだろうな。


 何となく気まずくなり、お菓子を摘む。


「今日の菓子類はギャロッドに選んでもらってね。恥ずかしい話、君が何を好んでいるか分からなかったんだ」


 それを見ていたグランディール様が、そう教えてくれる。


「わざわざ聞いてくれたんですか。ありがとうございます」


 確かに、テーブルに並んでいるお菓子は、どれも私が好んでいるものばかりだった。

 改めて見てみると、ギャロッド様と一緒に食べたものが多いなと思い当たる。彼が情報源なら納得だ。


「ギャロッドとは、今でもお茶会をしているのか?」

「いえ、学園に入ってからはほとんど。たまにお城に行った時に、任務先で手に入れたっていうお菓子をもらうことはありますが」


 以前のように頻繁にお城へ立ち寄る機会はなくなってしまったため、自然とギャロッド様とのお茶会もなくなっていった。

 だが、交流がなくなったわけではなく、たまに顔を合わせればお菓子をくれたりする。

 そういえば、元紅玉国で魔獣との戦いを終えた時にも砂糖菓子をもらったな。


 その話を聞いたグランディール様は、難しい顔で考え込んでしまった。何かまずいことを言ってしまっただろうか。

 婚約者候補として、他の男性から物をもらうのはよくないとか? ギャロッド様とのやり取りは幼い頃(見た目は)からだから、うっかりしていた。


「申し訳ありません、何か気に触ることを言ってしまったでしょうか?」

「いや、私は君の婚約者候補だというのに、ギャロッドの方が君のことに詳しい気がして……少し悔しくなってしまった」


 どうやら違ったようだ。

 それに関しては、ギャロッド様と話す機会の方が多かったから仕方ない気もする。グランディール様の婚約者候補になる前から、ギャロッド様とは交流をもっていたから。


「もっと君のことが知りたい。また、こうして会ってもらえるだろうか?」

「私でよろしければ」


 気にすることもないと思うのだけれど、婚約者候補のことをちゃんと知ろうとする姿勢は流石だなぁ。

 そういうところが、彼の良いところだ。頑張り過ぎないでほしいと思うこともあるけどね。


 他愛のない話をしながら、穏やかに時間は過ぎていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ