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神に愛された宮廷魔導士  作者: 桜花シキ
第2章 学園編(一年生)
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19 婚約者候補(アミリア視点)

 娘を王族に嫁がせて、自分が国を操る権力を得るつもりだったーーと、少し強く問い詰めればすぐに白状したそうだ。

 黒幕であるトリル男爵とリーネ嬢は爵位を剥奪され、地方へと飛ばされることになった。二度と悪巧みできないように監視もつけられて。

 よく調べてみると、トリル男爵が多額の寄付金を納めてリーネ嬢の入学をゴリ押ししたという不正が確認された。魔法の基礎も知らないような人間がこの学園にいるなんて、不思議な話だと思いましたわ。不正に関与した学園の職員たちも当然処分を受けたとのこと。


 リーネ嬢の他に子もおらず、このまま取り潰しになるかと思われたトリル男爵家だが、ルナシアが待ったをかけた。

 あれでもやはり伯爵令嬢というべきか、他の貴族たちの情報もしっかりおさえていたようだ。

 トリル男爵には元々黒い噂が絶えなかったが、その弟は兄と違って誠実で、彼の方が当主となるのに相応しいと囁かれていたほどである。だが、次兄であったということで結局継ぐことはできなかった。

 自分よりも周囲に認められている弟が気に食わなかったのか、自分が当主となってすぐ、トリル男爵は弟を追い出してしまった。


 ルナシアはそれを踏まえて、「トリル男爵の弟に当主の座を与えてはどうか」と。

 国王陛下に判断を仰いだところ、承諾を得ることができた。

 すぐさま弟を探し出し、事情を説明したところ、兄に代わってトリル男爵家の当主として責任を果たすと約束してくれたそうだ。

 彼の性格が昔のままであれば、新しいトリル男爵は王家に忠誠を誓ってくれることだろう。兄である元トリル男爵に不審な動きがないか監視する目の役割も担ってくれるはずだ。ルナシアがそこまで見越して提案したのであれば、少しは見直すところである。


 今回の件について、私はグランディール様の身に迫る危機に気づくことができなかった。私が大人しくしているのをいいことに、纏わりつくリーネ嬢が鬱陶しいと思うばかりで。

 私もリーネ嬢を正そうとはしたが、魅了魔法(チャーム)を使っていたことには気づけなかった。

 そこから明らかになった、トリル男爵の思惑。今は大したことがなくても、将来的にエルメラド王家に害を及ぼしかねない存在だった。


 ーーまた、ルナシアには敵わなかった。

 でも、どこか納得している自分もいた。


 グランディール様はまだ迷っているのか、ルナシアを婚約者候補にしようとしない。

 彼にとって、ルナシアは特別だ。だから、慎重になっているのだろうというのも容易に想像できる。

 でも、私はアミリア・アルテ・プリンシア公爵令嬢。グランディール様を愛していて、かつてその邪魔になる存在を遠ざけようと画策していた人間だ。

 嫉妬、してしまう。彼女が大切に思われていることに。

 私が狂ってしまう前に。以前の私に戻ってしまう前に。

 早く諦めさせてほしい。この恋を。


 今回の一件で、グランディール様自身も「婚約者候補」とそうでない者の間にはきちんと線引きしていると分かった。

 だから、ルナシアのことをそれほどまでに想っているなら、婚約者候補にしておかないと、婚約者になる可能性すら潰えてしまう。

 ーー私にもまだチャンスはあるかもなんて、淡い期待を抱いてしまう。


 婚約者候補になったとしても、自分の意志で抜けることは可能だ。

 なかなか婚約者を確定させないグランディール様を見て、少しずつ候補者たちの数も減ってきている。この歳まで残っている者たちは、皆グランディール様のことを強く好いているのだろう。

 グランディール様ももう最終学年。卒業と同時に婚約者を決めてもいい年齢だ。


 魔王の問題が解決しないことには、と理由をつけて先延ばしにしているのは知っている。

 婚約者を正式に定めるのは魔王を討伐したあとでもいい。そもそも、倒さないことには始まらない。

 だが、候補者には入れておくべきだ。グランディール様のことが好きだからこそ、彼が心から大切に想う人と幸せになってほしい。

 ルナシアが断るのならそれまでだが、気持ちを伝えることなく諦めてしまうのでは、私の気が済まない。


 だから、これが最後。それで動かないのなら、もう手は貸しません。

 もう一度だけ、貴方の背中を押しますわ。

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