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神に愛された宮廷魔導士  作者: 桜花シキ
第1章 幼少期編
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12 社交界デビュー3

 プリンシア公爵家の屋敷近くには、招待客らしき人たちが続々と集まって来ていた。

 その中には見知った顔もある。あちらも気がついたようで、駆け寄って来てくれた。


「ルナシアさん!」

「アル様、お久しぶりです」


 ガザーク家に通うようになって仲良くなった、リトランデ様の弟アルランデ様。今ではアル様と愛称で呼ばせていただいている。

 最近はヴァン様の研究資料を読むのに夢中になっていたので、ガザーク家の方にはあまり顔を出せずにいた。

 しばらく見ないうちに、アル様はがっしりとした体格になり、アレグリオ様の面影が色濃く出てきていた。リトランデ様とも似ているが、アル様の方が髪が短いのでまた違った印象を受ける。


「もしエスコート役がいなければ僕がさせてもらおうと思っていたのですが」

「ありがとうございます。でも、今日は養父(ちち)が一緒ですから。またの機会に、ということでお願いします」

「いつでも歓迎ですからね!」


 初対面の時からそうだけど、アル様のこの溌剌とした笑顔を見るとこっちまで元気になる。

 私のエスコート役のことまで考えていてくれていたなんて、優しいな。確かに、ガザーク家の人たちとは仲良くさせてもらっているから、相手が婚約者でなくても理由はつけられる。いざという時にはお願いしようかな。アル様の外聞が悪くならないといいんだけどね。


「久しぶり、ルナシアさん。最近はなかなか会えてなかったね」

「お久しぶりです、リトランデ様。今年から学園に通われているのですよね?」


 三歳年上のリトランデ様も、アル様と一緒にパーティーに参加される。

 リトランデ様とアル様の着ている礼服には、二本の剣がクロスしたガザーク家の家紋が、胸元と背中に刺繍されている。武術を極めた一族、それがよく表れていた。

 今年からエルメラド王立学園の騎士科に入学した彼は、その名に相応しく、将来を有望視されているようだ。

 このくらいの年齢になると、もう時間が戻る前のリトランデ様とあまり変わらないね。もう少し背は伸びるはずだけど。

 

「ああ。今日は時間が取れたけど、自由に動ける時間は減ってしまったから。君が元気にしてるか気になっていたんだ。まさか、こんなところで会えるとはね」

「お気遣いありがとうございます。私は変わらず元気にやっていますよ」

「それならよかった。安心したよ」

「リトランデ様こそ、お体には気をつけてくださいね」

「ありがとう、自己管理も訓練のうちだからね」


 少し言葉を交わしたあと、リトランデ様はお養父様の方に向き直る。


「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。あなたが、ファブラス伯爵ですね? 初めまして、ガザーク伯爵家次男、リトランデと申します。こっちは三男のアルランデです」

「初めまして!」


 表情の分かりにくいお養父様に対しても、アル様は臆せず挨拶してくれた。

 こういう公の場にお養父様が一緒にいてくれるっていうのも、何だか新鮮な気分だ。


「こちらこそ、初めまして。ファブラス伯爵家当主のイーズと申します」

「あなたが来ていると知ったら、パーティー嫌いの父も参加したかもしれませんね」

「おや、それはそれは。お茶会の方には顔を出せず申し訳なかったとお伝えください」

「あなたが来ていたことは黙っておきましょうか? また煩くしては申し訳ないので」

「お誘い自体は嬉しいのですが……そうですね、お願いします」


 リトランデ様が気の利く方でよかった。表情の変化は分かりにくいけど、お養父様もきっと安心したよね。リトランデ様のことだから、アル様にも口止めしてくれるだろう。


「それにしても、今日は一段と綺麗だね」


 リトランデ様がそんなことを口にする。


「たくさんの人たちが力を尽くしてくれましたから。ドレスやお化粧がきちんとしていれば、人って変わるものですね」

「いや、君の場合は素もいいからーーああ、この話はやめておいた方がいいな。今日は()()()も来てるんだから」


 急に言葉を切ったリトランデ様の視線の先を見て、はっと息をのんだ。


「グランディール様……」


 すっかり大人びた出で立ちの彼は、共に過ごした学園時代の姿を彷彿とさせた。

 まさか、彼までこのパーティーに参加しているなんて。


 他の参加者たちも気がついたらしく、ざわざわと辺りが騒がしくなる。


「あれ、グランディール様じゃない?」

「本当! あの隣にいらっしゃるのは……これじゃあ、婚約者はアミリア様に決まったようなものね」

「まだ候補だっていうだけなのに。どうせ、身分を笠に着て頼んだんでしょう」


 グランディール様の隣には、桃色の髪を結い上げ、豪華な髪飾りが眩しく光る少女が連れ添っていた。


「アミリアのやつ、やりやがったな……」


 私の隣にいたリトランデ様が不機嫌そうな声を出す。彼のこういう面を見るのは珍しい。

 他のご令嬢たちが言うように、婚約者候補たちが集まる場で自分のパートナーにグランディール様を選ぶのは色々とよくないのだろう。リトランデ様にとってアミリア様は幼馴染だし、心配なのかな。


「な、なんか、大丈夫ですかね? 周りの方々が殺気立っている気が……」

「君は気にすることないよ。ちょっと用事ができたから、行ってくる。また後で。ルナシアさんはこういう場に慣れていないだろうから、何かあればアル、お前が助けてやるんだぞ」

「はいっ、お任せください!」


 びしっ、といい返事をしたアル様を残し、リトランデ様はグランディール様の方へ向かっていった。アミリア様関連のお話かな……。


 そちらが気になりながらも、お養父様、そしてアルランデ様と一緒にパーティー会場に入る。

 ま、眩しい……なんであちこちピカピカ光ってるんだろう。宝石を使ってるのかな? あるもの全て高そう……。


「アミリア様の家のパーティーは、色々と凄くて……僕もあまり得意じゃないんです」


 会場に入った途端、アルランデ様の顔がげんなりしてしまう。ああ、いつもの太陽のような笑顔はどこに。


「でも、今日はルナシアさんがいますから。アミリア様の家でのパーティーに関しては少し先輩なので、困ったことがあれば頼ってくださいね。とりあえず、アミリア様には近づかない、これが鉄則です」


 なるほど。何で、時間が戻る以前はアミリア様の幼馴染としてリトランデ様の名前があがるのに、アルランデ様の名前は出てこなかったんだろうと思っていたが……近づけなかったんだね。


「ありがとうございます。でも、折角なのでアミリア様とも仲良くなっておきたいんですが」

「やめておいた方がいいですよ……こういうパーティーでも、問題が起きないことがないんです。主にアミリア様の我儘で」


 やはり、今回のアミリア様も性格はさほど変わらないようだ。学園時代もトラブルが絶えなかったもんな。


「ほら、さっそく始まりましたよ」


 アルランデ様の示す方を見れば、数人のご令嬢に対して指差しながら怒鳴るアミリア様の姿があった。


「あなたたち、私と同じ色のドレスを着るなんてどういうつもり?」


 何事かと思えば、アミリア様と同じ色のドレスを着てきてしまったご令嬢に対して、一緒の色は嫌だから着替えて来いと強要しているらしい。


 アミリア様が着ているドレスの色はーー赤。

 まずい、私も被ってるよ。多少、私の方が暗い赤だけどね? でも、アミリア様にとってそれは関係ないんだろうなぁ。


 アルランデ様が場所を変えようとしてくれたけど、それより先に見つかってしまった。

 話そうとは思っていたけど、ちょっとこれは出会い方として最悪じゃないかな?

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