11 確執(エル視点)
最近、ギャロッドとルナシアさんが一緒にいるところをよく見かけるようになった。
ギャロッドといえば、ルナシアさんのことを魔王呼ばわりした男だ。何の根拠もない噂を流し、彼女を悪者に仕立て上げようとした。今思い出しても許せない。
時間が遡り、忌まわしい出来事が起こる前に戻った。今回は以前とは異なる出来事も多いため、同じことは繰り返さないかもしれない。
だが、私の村が魔獣に襲われたり、リトランデ様はやっぱりガザーク家の方だったり、ルナシアさんがホロウを戴いたりと、大まかな流れは変わっていなかった。
ルナシアさんが魔王だと言われ始めたのは、彼女が宮廷魔導士になってからだった。ギャロッドとの面識は、それまでなかったはず。だから、まだ先の話だと楽観視していた自分がいた。そんな甘い考えを抱いていた自分を殴ってやりたい。
「ルナシアさんと一緒に食事をするなんて、なんて羨ましい……」
「エル、気づかれちゃうからあまり身を乗り出さないで」
リトランデ様も私と同じく記憶持ちだと知り、ルナシアさんを絶対に守るという目的のもと協力してもらっている。
今日は、中庭の休憩スペースで一緒にいるルナシアさんとギャロッドを茂みから観察していた。
天気の良い日は度々ここを訪れ、食事をしているようだ。今のルナシアさんは事情を知らないのだろうが、あの男は危険である。私が守らねば。
観察を続けていると、ギャロッドがルナシアさんに怪しい袋を手渡した。
あれは、シュークリーム? いつもはルナシアさんが持参したお菓子を食べていたはずなのに、今日はどういう風の吹きまわしだ。
ルナシアさんの分しかないところを見ると、まさか毒でも入っているのでは。
「お菓子をシェア……!?」
「落ち着いて!」
じっとルナシアさんの手元を見ていると、なんとシュークリームを割ってギャロッドに半分渡すではないか!
ギャロッドもそれを食べたので毒は入っていなかったのだろうと安心するが、ルナシアさんと半分こなんて……なんて羨ましい。
食べ終えると、二人は別々に去っていった。
残された私はルナシアさんがいた席を呆然と見つめていた。
「な、何事もなくてよかったな」
「何事もない……?」
「ひっ……」
ギャロッドめ、許すまじ。私でもお菓子を分け合うとか、今回はまだしたことないのに。一体、どんな手を使ったんだ。
やはり危険人物に変わりはない。より一層目を光らせておかねば。
「リトランデ様、今後もギャロッドの動きを注意して見ていきましょうね」
リトランデ様はこくこく、と何度も力強く頷いてくれた。頼もしい。
ルナシアさんにまた何かよからぬことをしようものなら、徹底的に叩きのめさなくてはなりませんね。
私は改めて決意を固めた。




