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神に愛された宮廷魔導士  作者: 桜花シキ
第1章 幼少期編
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9 闘技大会2

 食事の席で、ディーン様は会えなかったここ二年のことを聞きたがった。

 ファブラス家の養子になったこと、ガザーク家のお茶会に参加したことなど、これまでの出来事を要約して話した。話はなかなか途切れないけど、食事はちゃんと頂いています。あ、この魚美味しいですね。


「しかし、ファブラス家に先を越されるとは誤算でしたね」

「というと?」

「エトワール家も、あなたに養子縁組のお話をしに行こうと思っていたところだったんですよ」


 そうだったんだ。もし、お養父様と出会っていなかったらディーン様のお誘いを受けていたかもしれない。以前の私の上司だし、どんな人かは分かっているから。


「ホロウの肩書きばかり気にするような貴族にとられてしまうよりは、と。まさかファブラス家から打診があるとは思ってもみませんでしたが、あそこなら問題はないでしょう」

「お養父様には、よくして頂いています。私の両親も雇っていただいたので、離れなくて済みましたし」

「それは何よりです。でも、わが家にお迎えしたかった気持ちもあるんですよね。出遅れてしまったのが今でも悔やまれて……」


 さっ、と顔を逸らしたディーン様がハンカチを目元に当てる。


「失礼しました。もう、本当に、一生の不覚です。もしかしたら、あなたがわが家の子になって、毎日一緒に過ごせていたかもしれないというのに」

「そうなっていたとしても、ディーン様だって仕事があるんですから、毎日は無理ですよ」


 以前は上司として会っていたからいいものの、毎日このテンションについていけるのかといえば分からない。


「はぁ……それでも、ファブラス伯爵が羨ましい。まぁ、同じく魔術を研究する者としてあなたに興味を示すのは当然のことなのですが、あの大人しいイーズ君の行動力を甘くみていましたね」

「お養父様とお知り合いなんですか?」

「貴族としての関わりもありますが、私の同級生です。あまり話したことはありませんが」


 なんと、そうだったんですね。


「お養父様は、どんな学生だったんですか?」

「目立たない学生でしたね。ああ、魔導士としての腕は確かですよ。授業の時、彼の魔法の見事さには私も目を奪われました。でも、それ以外は記憶に残らないような人で」


 ディーン様もイディオも、他のうちの魔導士たちもお養父様の腕を認めている。ここまで口を揃えて言われると気になるな。そのうち私にも見せてもらえないだろうか。


「そういえば、ディーン様はどうやって私が闘技大会に参加することを知ったんですか?」

「闘技大会はトーナメント戦です。城下町の広場にトーナメント表が貼り出されていたのは確認しましたか?」


 私は頷いた。すごい人数いたけど、自分と同じブロックにいる人の名前は確認してから来たよ。同じブロックに知り合いはいないみたいだったね。

 予め知っていたけど、この大会にはリトランデ様も出場する。アレグリオ様が私を誘っておいて、リトランデ様を参加させないわけがないもんね。

 でも、彼は今年で十歳になるので部が違う。当たることはない。


「私は闘技大会の治癒魔導士として呼ばれているので、参加者は全員把握しています。それで、あなたの参加にも気がついたんですよ」


 参加者全員把握って、さすがはディーン様。どれだけの人数がいたんだろう。

 国主催のイベントとあって、呼び出しを受ける職員は皆ハイレベルな魔導士や騎士たちだ。信頼されているんだろうな、たまに残念な感じになるけど。


「あなたも出場すると聞いて、俄然やる気が出ましたよ。正直面倒だったのですが、間近で観戦できるのなら、この仕事も悪くありません」


 ディーン様、相変わらず自分の気持ちに正直だね。王様から任命されてるのに面倒とか普通に言っちゃうんだもんな。確かに、涼しくなってきたとはいえ、外にずっといなければならないのは辛いと思うけど。


「明日は健闘を期待していますよ」

「はい、頑張ります」


 おや、話は終わったはずなのにディーン様がソワソワしている。なんだろう、あまりいい予感はしない。


「大会前日ですので、派手なトレーニングは控えた方がいいかと思いますが、少し身体を動かしたくはありませんか? ほら、魔法の試し打ちとか」

「それは……できるなら、嬉しいですが」


 そう答えれば、ディーン様の表情がぱぁっと明るくなる。


「というわけで! わが家()()的を用意させていただきました!!」


 どういうわけですか、ディーン様。いや、言いたいことは何となく察しましたけども。わが家()()、って明らかにガザーク家での一件、話すまでもなく知ってましたね?


「実は、アレグリオ殿と話す機会がありまして。あなたの素晴らしい魔法の腕前を嬉々として語られ、いてもたってもいられず……」


 作っちゃったんですね……形から入るタイプですか。


「いつかあなたが来たら使っていただこうと」

「では、せっかくなのでお言葉に甘えさせていただきます」

「本当ですか! ああっ、これでガザーク家での出来事に立ち会えなかった悔しさで枕を濡らすこともなくなります」


 相変わらず……本当に相変わらずですね。ディーン様の安眠のために頑張ろう。


 食事を終えてから、ガザーク家での再現をした。今はそんなこと起こらないんだけど、ディーン様が聞いた話を忠実に再現するため、あえて同じように的を爆裂四散させた。

 これで落ち着くだろうと思ったのだが、興奮状態のディーン様の話がなかなか終わらず、寝る寸前までその熱が冷めることはなかった。

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