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神に愛された宮廷魔導士  作者: 桜花シキ
第1章 幼少期編
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9 闘技大会

 ガザーク家でのお茶会以降、私はこの身体での魔法制御に関してひたすら研究を重ねた。

 イディオにも手伝ってもらって、たまに模擬戦をお願いしている。はじめは手加減してくれてたイディオも、最近は必要ないと思ったのか本気で相手になってくれる。

 魔王が現れるまで時間に余裕があるわけじゃないから、子どもだからって手加減してもらってちゃ以前の自分より成長はできないからね。


 あれから二年。私は七歳になった。

 あの日以来、イディオが闇魔法について語ったことはない。模擬戦の難易度を上げるなら使ってもらった方がいいのだけれど、こればかりは強要できないからなぁ。


「お嬢様、王都で行われる闘技大会に出場されるというのは本当ですか?」


 模擬戦終わりに、休憩がてらイディオが聞いてくる。


「うん。あれ以来、頻繁にお養父様のところにガザーク家から手紙が届いているらしいんだけど、私が七歳になったのなら出場させてみたらどうかって書いてあったんだって」


 エルメラド王国では、年に一回、国が主催する闘技大会が行われている。大人の部と子どもの部に分かれており、子ども部には七歳から十五歳までの子どもがエントリーできる。

 子どもの部はさらに二つに分かれ、十歳未満の子とそれ以上の子は一緒に戦うことのないよう配慮されている。大人の部に制限はないが、成長の差が大きい子どもたちは同世代でまとめられているようだ。


 闘技大会では、武器でも魔法でも好きに使っていい。ただ、相手に重傷を負わせるような攻撃はタブーとされている。

 万が一に備えて、治癒魔法が得意な魔導士たちも待機しており、安全対策はしっかりしている大会のようだ。


「お嬢様が出たら圧勝かもしれませんね」

「イディオにもいつも訓練に付き合ってもらってるし、その成果を出せるように頑張るよ。イディオもついてきてくれる?」

「もちろんです。しっかり応援させていただきますよ」


 この大会は、日頃の成果を試すよい機会かもしれない。

 私が出るのは十歳未満の子どもの部なので、負ける可能性はほぼないだろう。もしも、ということもあるので油断はできないが。


 この小さい身体に合わせるために、魔力をコントロールする訓練を重ねてきた。身体が小さい分、溜めておける魔力量も少ない。宮廷魔導士時代の気分で魔法を使うと、ごっそりと魔力をもっていかれてしまう。

 あまり余裕がない状態になるから、魔法の形成に気を取られて、魔力のコントロールが疎かになっていることは自分でも分かっていた。


 以前の自分がいかに考えなしに魔法を使っていたのか分かるね。以前は、本格的に魔法の勉強をし始めたのはもう少し大きくなってからだったから、魔力量に関してはあまり気にする必要なかったんだけど。

 成長すれば威力の大きい魔法も気にせず使えるようになるだろうが、この訓練は魔法の精度を高めることにも繋がるので無駄にはならないだろう。少しの魔力でも効率よく、威力の出る魔法も編み出せた。持久戦でも持ち堪えられそうだね。


 闘技大会が開催されるのは王都なので、ヴェルデ領から移動しなければならない。日帰りできる距離ではないので、王都に着いてからの滞在先も必要になる。

 前に住んでた家は王都にあったけど、もう売り払ってしまっているから戻れない。


 どこか宿でも取ろうかと考えていると、タイミングよく「うちに泊まりませんか」という手紙をくれた人がいた。

 私が闘技大会にエントリーしてるのをどこかで知ったみたいだね。

 お養父様の許可もおりているので、お言葉に甘えよう。



 闘技大会の前日、私はイディオと何人かのお屋敷の人たちと一緒に王都にやってきていた。途中で魔獣に襲われたあの村の横を通ったけど、何事もなかったかのように日常に戻れていたようなので安心した。


 馬車に揺られつつ、辿り着いたのはファブラス家よりも遥かに大きなお屋敷。いや、ファブラス家も十分立派なんだけど、ここと比べたら見劣りしてしまう。

 意匠を凝らした装飾に、手入れの行き届いた美しい庭。眩しいねぇ。

 そして極めつけはーー


「ああっ! ルナシアさん、お待ちしておりました!!」


 テンションが今日も振り切れている、ご当主ディーン様のお出迎えだった。ホロウを戴いたとき以来の再会になるんだけど、相変わらずだね。


 ディーン様は宮廷魔導士として働いているけど、エトワール侯爵家の現当主でもある。兄弟姉妹は他にたくさんいるみたいなので、城で働き詰めになっていてもサポート体制は整っているらしい。

 彼自身は当主であることに拘りはないそうで、長男だからやることになった程度の認識だ。その座を譲ってくれと兄弟たちに言われればそれでもいいと考えているようだが、私の記憶では世界崩壊の日までエトワール家の当主はディーン様だった。


「お久しぶりです、ディーン様」

「覚えていてくれましたか!」


 忘れられていなかったことが嬉しいのか、ディーン様は満面の笑みだった。わざわざ屈んで目線を合わせてくれるあたり紳士的だよね。


「お招きいただき、ありがとうございます。少しの間お世話になります」

「いえいえ、こちらこそ来ていただけて嬉しいですよ。好きなだけ滞在してくださいね」


 挨拶を済ませると、到着したばかりの私たちに食事の席を用意してくれた。くっ、私の胃袋の状況は筒抜けということか。

 私の他にも、イディオや比較的外出が苦ではない魔導士も同行してくれているので、その気遣いは有り難かった。

 さすがは宮廷魔導士ディーン様。扱い慣れていらっしゃる。

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