妻と夫
最終話です。
魔王討伐からしばらくしてーー
「ふん、私の結婚式に招待して差し上げたこと、感謝してくださいませ!」
そう高らかに、豪華な式場で叫んだのは、アミリア・アルテ・プリンシア改め、アミリア・アルテ・ガザークだった。
私とグランディール様の結婚式の日取りが決まった後、それと被らないよう十分配慮されて、私たちよりひと足早く式を挙げることになった。
「おいおい、相手は王太子妃になる人間だぞ、アミリア」
その隣に立つのは、リトランデ様。アミリア様のパートナーになったのは、昔から彼女のことをよく知っている人だった。
「今日の主役は私ですもの」
そう言って、ふいと顔を逸らしたが、これまでにないほど嬉しそうな顔をしていた。
「ルナシアさん、私はあなたに負けたとは思っておりません。だって、今、私は誰よりも幸せなのですもの」
それを聞いたリトランデ様が、照れたように頭をかく。
「グランディール様、ルナシアさんのこと、必ず幸せにすると約束してくださいませ」
「ああ、約束する」
かつては、グランディール様の婚約者になるため奮闘していた。だが、今はその未練もないようである。
彼女に幸せを願ってもらえたことが、私は何よりも嬉しかった。
アミリア様とリトランデ様の幸せな結婚式の後、次々と嬉しい知らせが舞い込んできた。
エルは、リトランデ様の弟、アルランデ様と付き合い始めたらしい。
エルは彼に色々と面倒を見てもらっていたし、エルについていけるのも、アルランデ様のようなタフな方だろう。
グレース様は、サフィーア帝国のヴァールハイト皇子の元へ嫁ぐことになった。魔王との戦いの後、しばらくエルメラド王国に滞在しているうちに、仲良くなっていたのだという。
あの戦い以降、銀竜の存在が世間に広まってしまった。だが、そこにエルメラド王国の王族が嫁いだとなれば、人間が簡単に手出しすることはできなくなるだろう。
ヴァールハイト様は、竜の瞳のこともあって、次期皇帝になることが決まっている。
皇太子妃となることを知ったグレース様は、「荷が重い!」と、叫んでいたが、嬉しそうだった。
私もグランディール様の正式な伴侶になり、間もなく、第一子を授かることになる。その数年後には、第二子も。
多くの幸せが溢れるこの世界で、あなたの隣に立てること。同じ景色を見られることが、何よりも喜ばしい。
「ルナ」
愛する人が、私の名を呼ぶ。
「グラン、これからもあなたの隣で、未来を見させてください」
「ああ、もちろんだ」
これからも、共に守っていこう。
愛すべきものがふえた、この世界を。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。




