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神に愛された宮廷魔導士  作者: 桜花シキ
第6章 宮廷魔導士編
162/173

39 魔王9

 ホロウ二人がかりで、ようやく魔王に対して優勢になることができた。

 絶え間なく続くこちらの攻撃に対し、先ほどから魔王は防戦一方になっている。

 まだ力を隠しているかもしれないので、こちらも力を緩めることなく全力で臨む。


 魔王の動きが鈍くなったことで、距離をとっていた騎士たちや、銀竜、獣人たちも再び加勢する。


(勝てる、今度こそ)


 これは、目の前の事実からほぼ確実なことだった。

 魔王から溢れんばかりだった闇の力は徐々に減っていき、「魔力切れ」を起こす寸前の状況だと読み取れた。

 みんなが力を合わせて絶え間なく攻撃を続け、回復の隙を与えなかったためだろう。

 さらに私たちは攻撃の激しさを増していく。


 一度は崩壊した世界。

 時間が巻き戻り、もう一度得たチャンス。これを逃せば、この世界に明日が来ることはないだろう。

 必ず、ここで未来を変えてみせる。

 私は、両手に魔力を力一杯こめた。


「光よ、未来(あす)を照らせ!!」


 そして、私の全力の光魔法が直撃したのを最後に、ついに魔王は動かなくなった。

 地面に倒れ伏した魔王からは、魔力をほとんど感じない。その残滓があるばかりだ。


「勝った……?」


 状況がしばらく飲み込めないまま、しんと辺りが静まり返っていたが、レイディアント様の言葉ではっと我に返る。


「勝ちました……魔王に、私たちが勝ちました!!」


 私も思わず、感情を抑えきれずに叫ぶ。

 それに続くように、歓声が響き渡った。ここまで共に戦ってきた戦士たちは、国や種族の垣根を越えて抱き合い、喜びを分かち合う。


「やりましたね、ルナシアさん!!」


 エルが私の手を両手で握り、涙を流して喜んでいる。

 その後ろからは、妹のことを心配して駆けつけたのか、エルの兄アンヘルの姿があった。兄妹水入らずで話してもらおうと、私は少し距離をとる。


 私は、思わずあの人の顔を思い浮かべた。

 今、彼と喜びを分かち合いたい。そんな気持ちが湧き上がる。

 遠巻きに、その姿を捉えた。

 これから、エルメラド王国を共に守っていくパートナー。共に明日を見たいと願った人。


 その人の名前を呼ぼうとした時、驚愕の表情に彼の顔が歪んだ。そして、絶叫する。


「ルナシアっ!!」


 驚いて振り返ると、魔王が、私に向かって最後の力を振り絞り、攻撃を仕掛けていた。

 どう足掻いても間に合わない。

 最後の最後で、ああ、私はここまでなのか。

 ごめんなさい、一緒にこの国の未来を見ることができなくて。

 走馬灯が流れる。

 ーーでも、今度こそ世界が崩壊しなくてよかった。未来が変わってよかった。

 私は、それで満足。だから、彼に向かって微笑んだ。


 グランディール様の悲鳴にも似た叫びが聞こえる。

 視界が黒く染まる中で、エメラルドグリーンの光が弾けた。

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