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神に愛された宮廷魔導士  作者: 桜花シキ
第6章 宮廷魔導士編
150/173

39 魔王3

 その日、世界が朝を迎えることはなかった。

 正確には、もう朝日が昇っていてもおかしくない時間だというのに、世界は闇に包まれていた。

 人々は窓から空を見上げ、絶望の声すら上げることができずに呆然と立ち尽くしていた。


 ついにこの日がきた。

 私の心は、思っていたよりも穏やかだった。こうなることが分かっていたというのもあるが、ここまで築き上げてきた入念な準備と、心強い仲間たち。

 あとは、やれることをやるだけだ。


 各地に配備されていた魔導士たちが、ポウッと杖に光を灯す。暗闇に包まれていた世界に、星の輝きが散りばめられたようだ。

 その光に勇気づけられたように、人々は少し安堵の表情を見せる。

 この暗闇において、人々が混乱して滅茶苦茶に行動することが何よりも危険だ。騎士たちは国民に声をかけてまわり、安心させようと努めた。


 至急、城の前の広場に集められた宮廷魔導士と騎士たちは、空から魔王が降りてくるのを見た。

 その姿は人間の少年と何ら変わらないが、その本質を解析してみると、莫大な闇の力の塊が渦巻いている。幾度も魔獣や魔物、魔人との戦闘を繰り返してきた魔導士や騎士でさえ、魔王を前にして恐怖の表情があった。

 魔王に率いられるように、魔界の門からは魔獣や魔物、魔人たちが溢れ出してくる。私たちへの敵意があることを疑う余地はなかった。


「宮廷魔導士、並びに宮廷騎士の皆には、急な呼び出しにも関わらず迅速に集まってもらったこと、感謝する」


 国王が直々に私たちの前に現れ、勅命を下す。その傍らには、グランディール様やグレース様、ハイン様といった王族たちも勢揃いしていた。


「今日集まってもらったのは、魔王を討伐せよと命じるためだ」


 その言葉に驚く者は誰もいない。誰もが、いつかはこうなると覚悟していた。


「魔界の門が開いてから、しばらくは様子を見ていた。しかし、こちらへの敵意があると分かった今、放置しておくことはできぬ」


 たとえ、恐怖で逃げようとも。魔王からは逃げられないと、頭のどこかでは皆悟っているようだった。

 異議を唱える者はいない。ただ、ついにこの日がきたのだと受け入れている。


「必ずや魔王を討伐し、再びこの国の、世界の平和を取り戻す!」


 おおーっ!! と、騎士たちが剣を振りかざして勇ましい掛け声をあげる。その中には、エルやアルランデ様の姿もあった。

 魔導士たちは声こそあげないものの、魔石でつくられた魔道具を握りしめた。

 私も、胸元で輝くペンダントに手をかける。以前、グランディール様から頂いたエメラルドグリーンの宝石がはめ込まれたものだが、今はそこに白い魔石の装飾が施されている。最終決戦を前に、グランディール様が改めて手を加えてくださったものだ。


 ペンダントからは、以前とは比べものにならない守護の力が伝わってくる。

 ふと、グランディール様と目が合った。お互いに頷き合い、必ず無事に帰ってくるという意志を固める。


 いこう。

 今度こそ、見ることの叶わなかった世界の明日へ。

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