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神に愛された宮廷魔導士  作者: 桜花シキ
第6章 宮廷魔導士編
144/173

37 覚悟3

 魔人との戦闘も、これで何度目だろうか。以前の世界からカウントすると、数えきれないくらいになっていた。

 初めて魔人と戦ってから、日に日に魔人の出現頻度は高まっている。しかも、ますます人間に似た姿に変化し、攻撃性も増してきていた。


 魔王が現れるのも、時間の問題か。

 しかし、こちらも着々と準備を進めている。以前のように、簡単に負けたりしない。


「魔人も、楽に倒せるようになってきましたね」

「だからって油断するなよ」


 一緒に任務に出ていた宮廷魔導士たちが、そんな会話をしている。

 魔人が現れたばかりの頃は、皆どうしたらよいか分からず混乱していたが、適応が早い。今では、魔人とも対等に渡り合えるようになっていた。

 魔石で作られた魔道具もよく機能しており、光魔法が使えない魔導士たちの助けになっている。


 仲間たちを横目に、私も迫り来る魔人たちを相手にしていく。

 それにしても、自分と似た形をしているものを相手に戦うのは、分かっていても気分がいいものではない。


(魔人は、何を思って人間の形をしているんだろう?)


 魔人たちにもだんだんと()()らしきものが出てきており、より人間に近くなっているようだった。

 ここまでくると、魔人は私たちから学習し、自らの形を変えているとしか思えない。

 でも、どうして人間なのだろう。

 初めは獣だった。今度は野生生物や人間に取り憑いた。そして、自らが人間になろうとしている。


(私たちのことを倒そうとしているのに、なぜ私たちの姿を真似るのだろう)


 自分たちを倒していく者を真似することで、私たちの力をコピーしているのかもしれない。


 今更ながら、なぜ私たちのことを襲うのだろうか。

 そこに意思があるのかは分からないけれど、百年前、突如として開かれた魔界の門。初めから、魔獣がいたわけではなかった。

 この世界に魔界の門が開いたのには、何か理由があるのだろうか。それとも、単なる偶然なのだろうか。


 またひとり、魔人が私の前に立ち塞がった。

 襲い来る魔人を、光魔法で作った刃で切り裂く。

 届くはずのない黒い手を私の方に向けて彷徨わせる。消える間際。魔人の口が動いた。


「ナゼ……オマ……エ……タチ……ダケ」


 え? 一瞬思考が止まる。

 サアッ、と黒い霧になって消えるのを見ながら、呆然と立ち尽くした。

 今、魔人が喋った? それにーー


 その言葉には、人間に対する怒りのような感情が込められていたように感じた。


(なぜ、お前たちだけ?)


 その言葉を発した魔人はもういないので、その言葉の意味を尋ねることはできない。

 意味のある言葉を発したということは、意思があるということ。魔人に意思が芽生えたということだ。

 それが重大な危機だということは分かっていたが、それ以上に、魔人が私たちに対して怒っていた理由が気になって仕方がなかった。

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