★20 冬美と発注ミス!
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木曜日、遠くの方へ営業に行こうとすると米谷から呼び止められた。
「すいません。特売の注文を受けたんですけど、確認してもらえませんか。」
「うん。じゃあ、タブレットで確認するから、俺が見れるようにしておいて。」
・・・
1人車を運転しながら冬美のことを考えていた。
冬美に告白して断られたことがすぐにバレると、
一瞬瑞希は悲しそうにし、それから無理矢理笑顔をつくった。
「私に任せておいて。お母さんに前を向くよう説得するから!」
あれから2週間、冬美とは会っていない。
・・・
1件目の営業が終わり、ランチ休憩の時に米谷の資料を確認すると、
明らかに、冬美の店舗の数量がおかしい!
「あの店舗の数量おかしくないか?」
「はい。私もそう思って上条さんに確認したんですけど、
間違っていないって言うんです。」
「わかった。俺が確認してみるわ。」
・・・
まずは冬美に電話した。
「冬美?発注のことなんだけど、今、梶原さんはいないかな?」
「う、うん、大丈夫。」
「数量はどう確認したのかな?」
「うん、実は、梶原さんがどこの店か言えないけど、
他店の過剰在庫分を見込んでいるって。」
「・・・じゃあ、記録としてはやっぱり冬美の発注だけってなって、
梶原が嘘ついてトボケたら冬美のせいになるってことだな。」
「えぇ!でも仕事はちゃんとしているよ。」
「そうなの?まず、俺は全ての店舗の在庫を把握していない。
だけど、今までの経験からおかしいと思うし、
何より他の店舗で発注ミスを窺わせるものなんてないよ。」
「ホントなの?」
「うん、それに、冬美は梶原をフッたんだろ?
たぶん、大嫌いな俺のせいだと思っていて、俺たちへの嫌がらせだと思う。」
「でも、仕事だよ?自分の店に損害が出るんだよ?
そんなことしないでしょ?」
「梶原のこと嫌いだから、ちょっとゆがんでいるかも。
でも発注数量は絶対におかしいよ。
うん、俺から店長に電話してみるよ。ありがとう。」
「えっと、お手柔らかにね。」
・・・
次の営業が終わってラインを見た。
米谷からも冬美からもメッセージが届いていて、
やっぱり発注を修正したとのことだった。
今は時間がないので、次の営業先へ急いだ。
・・・
18時、ようやく神戸市内に戻ってきた。
会社に戻るよりもまずは冬美の店舗だ。
店舗に着いたらもう冬美は帰った後だった。
梶原はまだ勤務時間なのに、突然用事が出来たと帰ってしまったらしい。
ヤバい?
位置情報アプリを立ち上げ、冬美を探した。急げ!
5分走ると揉めている男女が見えた!
冬美と梶原が揉み合っていて、梶原が大きく手を振りかぶった!
「梶原!」
怒りの大喝に、梶原はビクッとなって冬美から離れた。
「守屋・・・てめえ、店長にまた、嘘ばっか、チクリやがって!」
ホントに他店に過剰在庫があるんだよ!」
梶原は怒りのあまり言葉がへんな抑揚となっていた。
その隙に、冬美が俺の背中に隠れた。
「じゃあ、その店教えろよ!
ちなみに、そんな異常な発注した店はなかったけどな!」
「お前が全て正しいのか!あん?」
「だから、店長にその店を教えろよ。
お前が正しけりゃ、その店を言えば良いだけだ。
言わないってことは嘘ってことだ。」
「うわぁ~」
突然、梶原がキレてパンチを放ってきた!
ショボいパンチだったので、冷静に額でガツンと受け止めた。
「「痛っ!」」
俺と梶原、同時に悲鳴を上げた。
拳を大げさに痛がる梶原の腹に拳を合わせると、
梶原はゲーゲー吐きながら跪いたので、
後ろから押し倒してゲロまみれにしてやった。
「冬美!」
涙をこぼしながら冬美は自分の体を抱きしめ、ブルブル震えていた。
「ゆうま~」
抱きついて来た冬美の背中を、頭を優しく撫でた。
今度はなんとか守れてホッとした。
「もりや~」
怨みのこもった梶原の声が聞こえた。
「てめえを訴えてやる!かかか!警察で後悔しやがれ!」
「お前は、冬美にワザと発注ミスをさせた。
冬美に暴力をふるった。
それらを防いだ俺に、先に暴力を振るった。」
俺はニヤニヤしながらスマホをヒラヒラと見せつけた。
「くっ、覚えていろよ!」
ゲロまみれの梶原は腹を押さえ、えづきながら去って行った。
バカめ、ハッタリだよ。
録画も録音も、そんな余裕なかったわ!
振り返って冬美にキスをした。
「好きだ!」
涙を溜めた目が驚きで、喜びで輝いていた。
最高に、綺麗だ。
俺を見つめ続ける冬美にもう一度、キスをした。
「俺がずっと守る!ずっと一緒に居てくれ!」
柔らかい体、良い匂い、もう離したくない!
「好きよ。優真、好き。」
笑顔になった冬美と何度も何度もキスをした。
大好きな彼女の心を初めて抱きしめたと思えて、
頭のてっぺんからつま先まで幸せに満ちあふれた。
「大丈夫か?叩かれたりしていない?」
「うん、もみくちゃになっただけ。」
「俺の冬美に触るとはふてぇ野郎だ!」
「10倍返ししたでしょ。」
ニッコリ笑いあって、もう一度、キスをした。
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