★16 優真さんとの夜
よろしくお願いします。
泣き疲れた私は優真さんをぎゅっと抱きしめていることが恥ずかしくなった。
腕の力を抜くと、優真さんも力を抜いた。
「ゴメンね、瑞希。」
まだ謝っているお母さん。
すぐに祖父が逃げだし、お祖母ちゃんが死んでしまって、
たった1人で、私を大事に、大事に育ててくれたお母さん。
背中にあるお母さんの手が暖かかった。
心を覆っていたどす黒いヤツが少し減っていた。
「瑞希、俺がお前と仲良くなったのは、お前の両親なんか全然関係ないぞ。」
優真さんは無理矢理笑顔をつくって、私の肩に手を置いた。
3人の悪漢から見ず知らずの私を助けてくれた優真さん!
まだ10回も会っていないのに、お母さんの次に信頼している。
肩に置かれた優真さんの手が暖かかった。
心を覆っていたどす黒いヤツは半分無くなった。
だけど・・・
「お母さん、今日は帰りたくないよ。」
「・・・そう。優真、悪いけど、瑞希を泊めてくれる?」
「ああ、いいよ。」
「瑞希、明日はちゃんと学校に行くのよ。」
「うん。」
「・・・優真、分かっているわね。」
「ひゃい!」
最後、お母さんの目が、言葉が厳しくなると優真さんはまたビビっていた。
お母さんを送り届けると、帰りの車の中で
優真さんは頑張って明るい声を出した。
「瑞希、気分をアゲるため、何か食べに行かないか?
今日は奮発しちゃうよ?
神戸牛ステーキ、回らない寿司、スイーツ食べ放題、
あとなんだ、てっちりとか?何がいい?」
「じゃあ、スイーツ食べ放題!」
いやあ、食べた、食べた!お腹がぽっこり出るくらい!
優真さんはヘコんでいた。
「くそっ。お腹がいっぱいになる前に、甘さで気持ち悪くなるなんて。
オッサンだから?もうオッサンなのか?ああ・・・」
うぷぷ。
私が先にお風呂に入って、今は優真さんがお風呂に入っている。
テレビで恋愛ドラマを映しているけど、
ドキドキしすぎて何にも頭に入ってこない。
優真さんが、お風呂から上がってきた!
私と同じく薄手のパジャマを着ていた。
「あれ、瑞希、まだ起きてんの?」
「う、うん。ねえ、優真さん。」
「何?どうかした?」
「うん。あのね、一緒に寝てもいいかな?」
「えええええええっ!いや、その、あの~」
私の言葉にひどく動揺している!
「え、え、エッチは無しだよ!そ、その、もう少し話がしたくて・・・」
「・・・分かったよ。」
優真さんはベッドに入って、私に背を向けた。
すっごくドキドキしながら、私もベッドに横たわった。
どうしよう?どうしたいのかな?
優真さんに初めて、あげちゃうのかな?
うん、いいよ。
優真さんの大きな背中にぎゅっと抱きついた。
優真さんもドキドキしているみたい。
2人の体が熱いよ~
ねえ、お願い!私を助けて!
「・・・瑞希。子どものころのこと、教えてくれないか?
習い事とかしたの?」
「・・・うん。」
少し冷静になってしまった。
「えっと、料理とか、家事、勉強はお母さんが優しく教えてくれて。
柔道と合気道をお母さんに勧められたんだけど、イヤで断っちゃった。
あっ、水泳だけは公営プールで毎週、スパルタで教えられたよ。」
ああ、やっぱりお母さんは私を守ろうとしてくれていたんだ。
私は大切に育てられたんだ・・・
「優真さんはどうだったの?」
「小さい頃のライバルは冬美だったよ。
かけっこ、縄跳びや射的、スーパーボールすくいまで何でも勝負していたよ。
でも、高学年になって、男女差が出てくると、冬美、メチャクチャ悔しがってね。
だから勉強では絶対に勝ってやるって。
でも、俺も負けたくなかったから、勉強も頑張ってさ・・・」
優真さんの子どもの頃の話はお母さんばかりだった。
悔しくって、優真さんの体を力いっぱいつねってやった。
「痛いよ!・・・瑞希。プール、行こうな?」
「うん。」
「キャンプ、行こうな?」
「うん。」
「色んな所へ行こうな。」
「うん。」
レイプ犯の子どもっていう事実は動かないから、
胸の中のどす黒いヤツが無くなることはないだろう。
だけど、お母さんと優真さんが守ってくれる!
2人がいれば、笑って生きていける!
「ありがとう、優真さん。大好きだよ、ありがとう!」
添い寝しただけです。あんまり眠れなかったみたいですが・・・
読んでくれてありがとうございました。
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