★15 優真さんとお母さん②
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エレベーターを降りて歩き出すと、優真さんが階段を駆け下りてきた!
「瑞希!」
すっごく嬉しかった!だけど。
「お母さんと話したいんでしょ?ふ・た・り・で!」
冗談ぽく言ってみたけど、ツラい。
「お母さんとはこの前たっぷり話したよ。今日は瑞希とだ。」
このジゴロ!嬉しくって胸がいっぱいになってしまった。
近くの小さくてショボくて、誰もいない公園のベンチに並んで座った。
「ホント、びっくりしたよ。瑞希が冬美の娘だって。」
「恋人だったんでしょ?なんで別れたの?
守りたかった人ってお母さんだよね?」
「違う、違う。恋人じゃなかったよ。」
ホントに恋人じゃなかったんだ。でも・・・
「・・・水曜日ね、お母さん、すっごく嬉しそうだった。
あんなお母さん、初めて見たよ。
・・・ねえ、お母さんと仲良くしてくれる?」
「ああ、モチロンだよ。」
優しく優真さんは微笑んでくれたけど、私は顔を背けた。
「ありがと。・・・もう、私、来るの、辞めるね?」
「どうしたの、突然。」
感情があふれて、心配そうな優真さんに叩きつけた!
「お母さんのことが好きなんでしょ!」
一瞬、固まった優真さんは真剣な表情となって、
一言、一言大事そうに話した。
「・・・正直、俺は瑞希に恋は出来ない。
だけど、凄く、凄く、大事に思っている。
瑞希といる時間は凄く楽しくて、大切な時間だよ。
だから、瑞希が良ければだけど、これからも会って欲しいな。
誰かと一緒でもいいからさ。」
恋は出来ないと言われ涙がこぼれた。
でもすごく大事に思っているって言われて凄く嬉しかった。
優真さんは涙がこぼれ続ける私の頭を優しく撫でてくれた。
・・・
「10分ほど歩くと和菓子屋さんがあるんだ。なにが食べたい?」
「おはぎ!」
「いいね!そこのきなこは2種類あるんだ。
中身があんこ入と、モチ米だけのやつ。」
「ええ~、あんこ入ってないなんて邪道よ!」
ちっちっちっと指を振って、元気になったことをアピールすると、
優真さんは笑って逆張りしてきた。
「何を言ってる?甘さはきなこだけで充分だ!」
・・・
「ただいま!おはぎを6個も買って来たよ!」
「ありがとう。・・・優真、ありがとう。」
笑顔の私を見てお母さんはホッとしたようだった。
向かいで美味しそうにおはぎを食べていたお母さん。
食べ終わるとその表情が突然曇った。
「優真、ゴメン。ここで伝えさせて。」
お母さんが唇を震わせていた。
どうしたの?
「いいよ。」
隣にいる優真さんは優しく応えると、私の手を握りしめた。
「えっ、ちょっと。お母さんの前で口説くの止めてよ。」
冗談ぽく言ってみたけど、優真さんは私の目を見つめ、
ゆっくりと話した。
「俺はずっと瑞希の味方だよ。」
えっ、なんなの?
「あのね、瑞希、落ち着いて聞いてね。
・・・私は高校1年の時、レイプされたの。」
レイプ!お母さんが?
「嘘!嘘だよね?そんな冗談、酷いよ!」
私を見つめるお母さんの目は暗く沈んでいた。
「私は犯人を刑務所にたたきこんでやろうとしたの。
でも、周りは隙を見せた私が悪いとか、許してやれとか、
そもそも嘘じゃないかとか、色々言われたんだ。
弱っている私を励ましてくれたのが幼なじみの優真なんだ。
だけど、両親と一緒に私は、優真にも内緒で故郷を逃げ出したんだ。」
ホントなの?イヤ!イヤだ、もう止めて!そんな話、聞きたくない!
私を見つめているお母さんの目から涙がこぼれ続けていた。
お母さんの口が開いたけど、声を出さず閉じられた。
まだこれ以上、言いにくいことがあるの?
「妊娠がわかったから。大事な、大事な貴女を産むことに決めたから。」
「わ、わ、私はレイプで出来た子なの?」
「貴女は大事な私の娘よ。」
「嘘!嘘!嘘!」
私が絶望にまみれながら叫んだのに、お母さんはゆっくりと首を振った。
「いや~!」
泣き叫んで、暴れ回る私を優真さんが強く抱きしめた。
「なんで、なんでよ!」
「お前は冬美の大事な娘で、俺の大事な友達だよ。」
優真さんも泣いていた。背中を撫でながら、何度も何度も言ってくれた。
「ゴメンね、瑞希!」
お母さんは私を後ろから抱きしめ、ずっと謝りながら号泣していた。
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