★13 幼なじみ③
よろしくお願いします。
「ふふふ!守屋さん、上条さんとどういう関係ですか?」
助手席の米谷のニヤニヤ笑いが止まらない。
「・・・中学の同窓生だ。」
「ふふふ!それであの雰囲気はないでしょ?
元カノですか?ねえ、ねえ?」
運転中なのに、腕をつんつんしてきやがった。
「うるせえ。それより、あの梶原って野郎だ。
しばらくはヤツが関わっているハズだ。
ちゃんと確認しろよ。気を付けろよ。
梶原は無能のうえに、女癖も悪いんだからな。」
「ふふふ。また、上条さんとどうなったか、教えてくださいね。」
誤魔化そうとしたが、やはり無理だった。
そりゃあ、一旦、車まで帰ってから、また事務室に行って、
二人っきりで、外で話をしていたからな。怪しすぎるよな。
冬美!スーパーの制服に身を包んだ冬美は年齢より老けてみえた。
苦労しているのかな・・・
・・・
夕方7時、その店舗の近くのファミレスに行くと、
緊張した面持ちの冬美が待っていた。
俺を見ると冬美は立ち上がって頭を下げた。
「優真、ゴメンなさい!」
イヤだな。緊張した冬美と話すなんて。
せっかくだからリラックスして、出来れば楽しく話さないと。
笑顔を浮かべて、ゆったりと話しかけた。
「うん。悪いけど、お腹が減っているんだ。先に食べよう。
ちゃんと聞きたいから、話は食べ終わってからね。」
冬美は肯くと微かに笑顔を浮かべた。
先ほどはひとまとめにしていた肩までの茶色の髪を綺麗に降ろしていた。
化粧を直したのか、さっきよりずっと綺麗だった。
2人ともさっさと注文して、チラチラと冬美と視線があったけど、
黙々と食べた。
ドリンクバーでカフェオレを入れてから、
冬美は何度もためらってから話し始めた。
「・・・私ね、あのとき、妊娠しちゃったんだ。」
「マジか!」
呆然とした。あり得たのに全く、考えもしなかったよ・・・
「気づくのが遅すぎて、もう中絶は出来なかったんだ。
おじいちゃんが恥だ!出て行けって!大げんかになってね・・・」
両親と神戸に出てきたけど、すぐに父親が逃げ出し、
母親の姓に変わったこと。
子どもが生まれて瑞希!って名付けたこと!
「瑞希って冬美の娘なのか?」
まだ始まったばかりなのに、驚きのあまり遮ってしまった!
「やっぱり優真が瑞希を助けてくれたんだね!
ホントにありがとう・・・」
沈痛な表情が笑顔に変わった。
うん、やっぱり冬美には笑顔がよく似合うよ。
「いや、そんなの全然いいんだ。
ごめんね、話を遮って・・・続けてくれる?」
瑞希を育てながら、アルバイトしながら、通信制高校を卒業したこと。
お母さんが亡くなってしまったこと!
派遣で働いていたけど、このスーパーで正社員になったこと。
高校に入った瑞希と大げんかしてしまったこと。
俺と知り合ってから瑞希が楽しそうなこと。
「なんでそんなに楽しそうなのかな?」
冬美の視線が厳しくなった!
「じ、じゃあ、次は俺の番だね。
冬美がいなくなって、俺は自分がバカで弱くて、
頼りにならないヤツだって痛感したんだ。」
「そんなことないよ!」
冬美が断固として否定してくれた。
「うん、ありがとう。でも、俺はそう思ったんだよ。」
優しく伝えると冬美はかぶりを振って、悲しげに俯いた。
「だから強くなろうって思ってキックボクシングを始めたんだ。
面白くって結構、のめり込んじゃって。だから大学は三流大学だったよ。」
大学の名を伝えると冬美はびっくりしていた。
「私のせいだよね?優真ならもっと良い大学に行けたのに・・・」
「冬美のせいじゃないよ。俺が選んだことで、そのことに後悔なんてないし。
だから、瑞希を助けることが出来たし。
ああ、高校の時に父親が浮気して俺んちは父親が追放されたんだ。
守屋は母親の姓な。で、池麺に就職して現在に至る。なんか平坦だな。」
俺の話に肯くと、冬美はどうしようか迷った風だった。
「・・・結婚はしたの?」
「してないよ。冬美は?」
「私も。・・・瑞希と付き合っているの?」
冬美の目が怖い!こんな怖い目、初めてみるよ!
「イヤイヤイヤイヤ!」
慌てて否定するも追撃が厳しい!
「毎週、会っているじゃない!」
「だけど、キスはモチロン、手を繋いだことすらないよ!」
「・・・確かに瑞希もそう言ってるけど。じゃあ、次の日曜はなにするの?」
「さあ?昼ご飯を食べるだけ、かな?」
「私も行くわ!」
「そ、そうなの?土日仕事って聞いたような・・・」
「それは前の会社ね。今は日曜が休みだよ。2人で行くから!」
「は、はい。あ、あの、お迎えに行きましょうか?」
「そうね、そうしてくれる?」
キツかった表情が柔らかくなった。
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