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12/23

★12 冬美①

よろしくお願いします。

瑞希が市内で一番の県立高校に入学した。

出来たら、いい大学に行って欲しいな。


それまでの仕事になじんでいたけれど、

派遣なので給料が安いから転職することにした。

・・・

私は高校1年の時にレイプされた。

その犯人を刑務所に送りこんでやろうと頑張っていた。


心の支えは幼なじみの大竹優真だった。

優真はカッコ良くて、いつも優しくて、勉強もスポーツも何でも出来た。

その上、私を一番大事にしてくれた。


私は小学校のころから大好きだったけど、優真から告白して欲しくて我慢していた。私から告白しておけばよかったよ・・・


優真はレイプされた私をずっと励ましてくれた。

周りのヤツらからひどいことを言われる私を守り、慰めてくれた。


そしてレイプされた私を好きだと言ってくれた。

嬉しくって泣いてしまった。


だけど、私はふさわしくない、迷惑しかかけていないから断った。


それなのに、何度も、何度も好きだと言ってくれた。


事件から5ヶ月後、私は妊娠していることにようやく気づいた。

つわりだったのに、心労からの体調不良と思い込んでいたんだ。

狼狽して、途方にくれたけれど、絶対に優真には知られたくなかった。


黙っているわけにはいかず、まずはお母さんに相談した。

もう、中絶することは出来なかった。

ますます途方にくれた。


結局、お父さん、おじいちゃんにも相談したら、

おじいちゃんはかんかんに怒って、出て行けって言うんだ。


レイプ犯の家はこの地域の名士で、父親の会社の大口取引先だったから、

父親は職場で色々嫌な目にあって首になっていた。


結局、お父さん、お母さんと夜逃げ同然に出て行くことになって

神戸に出てきて3人で暮らし始めた。


優真にだけ、手紙を書いた。ゴメンねって。


お父さんは就職したけれど、前より給料が安い上に、

すぐに上司からいじめられるようになった。

お酒を飲むことがずいぶん増えていた。


半年ほど、頑張っていたけれど、お父さんは突然消えてしまった。


お父さんは家のお金を全て持ち出して、

飲み屋の女の人と逃げ出したんだ。


お母さんはさらにショックを受けていた。


その上、私はお腹が大きくなっていて働けず、

お母さんもパートでしか働くことしか出来なかったので、貧乏生活が続いた。


お腹がどんどん大きくなってくると、この子どもが大切に思えてきた。

そのうち、可愛い子どもが生まれた。瑞希と名付けた。


お母さんにも子育てを手伝ってもらったけど、

瑞希は小さく、よく泣いたから凄く大変だった。


だけど、すっごく可愛くて、私は幸せだった。


私は瑞希を幸せにするために生きるよ!


でもそのためには私も働かないと!


高校中退の私は働ける場所がメチャクチャ限られていた。

お母さんと同じスーパーで、アルバイトとして雇ってもらえた。


瑞希が保育所に入ると、お母さんと相談して、

私は通信制高校に入ることにした。


お母さんの協力があって、育児、仕事、高校をやっていくことが出来た。


高校を無事卒業する見込みとなって、正規職員として働こうと

考え始めていたら、お母さんが朝、起きてこなかった。


布団の中で亡くなっていた。


その前の晩、胸が痛いって言って、早く休んだんだけど・・・


心筋梗塞だったんだ。すぐ、救急車を呼ばないといけなかったんだ。

まだ50歳にもなっていなかったのに!


私が瑞希を産むってわがままを言ったからだ!


レイプされてから、お母さんには苦労ばかり掛けてしまった。

お母さんに頼り、甘え続けてしまった。

お母さん!ごめんなさい!


派遣職員として働きはじめた。


瑞希はまっすぐに、とっても可愛らしく、すくすくと育ってくれた。


仕事を優先しちゃったけれど、出来るだけ瑞希と一緒にいた。


少しずつ料理を教えて、そのほかの家事も教えていった。

瑞希はなんでも楽しそうに学んでくれた。


父親のことを度々尋ねられたけど、

「いい人だったよ。」

いつもそれだけを、優真を思い出しながら伝えた。


全然納得していなかったけれど、ホントのことは教えられないよね・・・


瑞希は私の宝物で、やっぱり生まれて来てくれてよかった。

私は瑞希の幸せのために頑張るよ!


中学生となった瑞希はますます可愛くなった。

男の子からちょくちょく、告白されているみたい。


私のようにレイプされたり、ヘンな男にひっかからないか、

ますます心配になってきた。

瑞希には、優真のような頼りになる幼なじみもいないから!


瑞希は市内一の進学校に合格した。


私は高校生になっても瑞希に門限を強制した。

瑞希に門限を辞めてくれって何度もお願いされたけど、頑なに拒否した。


口論が激しくなって、ついに瑞希は真っ暗闇の中、出て行ってしまった!

心配で心配で、胸が張り裂けそうだったけれど、

家でじっと待つしか出来なかった。


また、失敗してしまったと涙がこぼれ続けた。


日が変わってすぐに、瑞希は笑顔で帰って来た!


悪漢3人にお持ち帰りされそうになったときにヒーローが助けてくれたって!


もりやゆうまさん、30歳くらいらしい。

うん、ゆうま?

ケンカなんてしたことなかったし、名字も違うから別人よね。


でも、ドキッとしちゃったよ。喜んじゃったよ。

まだ、私は優真のことが気になっているんだ。


これまで何度か、男の人に告白されたけど、全部、断っていた。

瑞希のためって思っていたけれど、

少し、ほんの少し、優真がまだ、気になっているから。


優真!レイプされた私を守り続けてくれたのに!

レイプされた私のことを好きと言ってくれたのに!

黙って、逃げ出してしまった・・・


あんなにスペックの高い人なんだから、

綺麗で優しくって、すっごくいい人ともう結婚しちゃっているよね・・・


家から割と近いスーパーの店舗に、正社員として採用された。


初めて発注なんかも担当するけれど、その分、給料はぐっと増える。

頑張って稼いで、瑞希の大学の費用を稼ぐんだ!


これまで発注を担当していた梶原さんから色々と教えてもらい始めた。


今日は池麺の担当者と初顔合わせ。


「担当が、守屋っていう融通の利かないバカから新卒の女の子に

替わるんだってさ。」

梶原さんは嬉しそうに言ったけど、その新卒の女の子も狙うのかな?

私も気を付けないと。


池麺の「濃い~い焼きそば」はまだ人気のピークが続いていて、

品薄状態が続いている。


新人同士でちゃんと回してもらえるのか不安だよ。


池麺の担当者が引継のために現れた。優真!

なんで?守屋ってどういうこと?


動揺しながらも何とか無事に打ち合わせが終わった。


優真と話したい!

大人になってシャープに、りりしくなっていた。カッコいいよ~

だけど、怖い!どうしよう・・・


優真と視線がずっと合っているんだけど、言葉を交すことは出来ないまま、

優真はこの店を出て行った。


凄く落ち込んだ。


追いかけようか?もう、会えないのかな?


しばらくして事務室のドアが開いた。


「あの、ふ、上条さん、少しだけ話、出来ないかな?」


読んでくれてありがとうございました。


面白ければ評価をお願いします。


また明日更新します。

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