★11 幼なじみ②
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1ヶ月前、5月の最終週、上司に別室に呼ばれた。
「梅本、守屋、6月1日から営業に新人が配属されるんだ。
で、その教育係を2人でやってもらいたい。
いずれ、お前らの営業先を1/3ずつ譲って、お前らは新規開拓な。」
「はい、わかりました。」
梅本さんは50歳くらいの営業の古株だ。
「梅本さん、ちょっとは楽になりますかね?」
「大事に育てて、楽になろうぜ!しばらくは交互に連れて歩こうか?」
「そうですね、それで!」
・・・
6月1日、営業に配属されたのは女性で、米谷仁美。
大学を卒業したばかりの23歳。
肩までの栗色の髪、たぬき顔の中々可愛い女の子だ。
4月に入社し、総務、経理、広報で研修していて、これからは営業で働くのだ。
梅本さんと相談した結果、大手のスーパーをまるっと担当させることにして、
少しずつ、各店舗を訪問して引き継いでいった。
米谷は愛嬌がある上に、数字にも強く、勘所をちゃんと押さえている逸材だった。指導した総務の百里、経理の益二郎、広報の奏の評価も高く、可愛がられていたようだ。
ちょっと生意気だけど。
引継も終盤になって、この前、発注ミスを押しつけようとしてきた店に
アポイントを取ると、向こうも発注担当が替わるという。
俺は現担当である梶原というアラフォーのオッサンの、無能で無責任で女好きなところが大嫌いだったから、少しホッとした。
店舗に着くと、梶原が30歳くらいの女の人を連れてきた。
「始めまして、上条冬美です。
まだ慣れていませんが、よろしくお願いします。」
上条冬美!
幼なじみの青柳冬美じゃないか!17年ぶりの再会!
上条ってどういうことだ?結婚しているのか?
衝撃のあまり冬美を凝視していると、顔を上げ俺に気づいた冬美と
二人して固まっていた。
「守屋さん、どうかしました?」
不審そうな米谷に声を掛けられた。
「い、いや、すまん。」
店舗内を案内してもらい、発注見込みを教えてもらい、
直近の発注数量を確認した。
米谷がこちらの発送方法や頻度、万が一の時の対応について説明した。
チラチラと冬美の視線を感じていたが、二人っきりで話す時間は
もちろん全くなかった。
30分ほどで引継はつつがなく終わった。
立ち上がり挨拶を交したが、俺と冬美はお互い見つめ合っていた。
何も言えないまま・・・
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