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月天の無為(げってんのぶい)
月の光りがとても静かな半刻
嵐の前触れのような風も
さきほどやんで
隣に座る彼女の手には
さっき買ってきたばかりの
ブルーマウンテンで作った
贅沢なアイスコーヒー
あのねって
年齢の割には無邪気な話し方は
彼女の計算高さからのものだろうか
それとも本当に僕のことが好きで
他愛のないいろんなことを
話したいからなのだろうか?
空想と科学が大好きな僕の心は
隣の彼女の存在以外の全てを忘れ
目の前の大きな月の神話の世界に
行ったまま
はいって
半分飲んだ冷たいグラスを
無造作に僕の口に当ててきた
うんって
残りのコーヒーを飲み干しても
心はまだ月のまま




