10/18
水と空気と焙煎と
言霊も咲く春の暖かさに
二人の心も引き寄せられる
凍えた冬空に
ニット越しに手を繋いで
公園を散歩した
誰もいない砂浜で
将来のことを話し合った
満開の梅の天満宮に
家族になれるかを尋ねた
一緒に新居の候補を探し
その夜は見晴らしの良い部屋で
二人きりの朝を迎えた
ホテルの朝食を済ませたら
これから住む街の商店街などを
散策してみる
コーヒーが好きな彼のため
居心地が良い喫茶店もチェックしようねと
お店の佇まいとか勘とかで選んで
三軒ほど続けて入店する
そのうちの一軒は
首都圏の有名店の系譜で
焙煎から抽出まで
真摯にコーヒーに向き合う姿勢に
憧れを感じたから
「また来ようね」と二人で話し合う
産土の神とは
預かる土地の空気の源となり
住む人々の性質にまで
影響を及ぼすというけれど
この街なら
きっと安心して
子育てまでできるよねって
屈託のない彼の笑顔に
わたしは既に幸福を実感している




