表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/298

第7話 処刑鎌《デスサイズ》

「えっと、この剣ってどういう名前なんですか? 見た事ない形ですけど……」


 俺が真っ先に手に取ったのは、世間一般で言われる剣よりも薄く、反りのある刀身をしている武器。

 装いは全然違うけど、剣って事は何となくわかる。もしこれに適性があったら、特異職業(ユニークジョブ)持ちの剣使いになれるかもという、(ほの)かな希望を胸にセルケさんに()を聞いた。


「うーんとねぇ……これは刀っていうそうだよ。使い方は、見たまんまだろうね」


 カタナ――その美しい形状に心を奪われていたが――。


「まあ、アー坊とは気が合わないみたいだけどねぇ」

「はぁ……」


 武器が反応しない。つまり適性無しって事だ。


「そんなに落ち込まないで、まだ一回目だよ!」


 肩を落とす俺を励ましてくれるルインさん。大変嬉しいのだが、些か距離が近い様な……。正面には美人さんのお顔。目線を下げても大きな胸が広がっており、目のやり場に困ってしまう。


「つ、次に行きましょう!」


 セルケさんの生暖かい視線を背に次の武器を取った。


「これは……どことなく青龍偃月刀に雰囲気が似てますね」


 次に手に取ったのは、幅広に湾曲した刀身を持つ剣。


「流石はグラディウス家、よく見てるもんだね。それは――柳葉刀(りゅうようとう)。アンタの言う通り、偃月刀とは同郷さ。またハズレみたいだけど……」

「ぐっ!?」


 セルケさんの言葉が胸を打つ。パッと見た感じ、剣士系っぽいのから手を付け始めたのだが、刀剣でこうも空振りが続くとやはり胸に来るものがある。


 こうなれば片っ端から武器を試していくしかない。


 半ば自棄(やけ)で奮起した数時間後――。


「ふふっ……やっぱり俺は無職(ノージョブ)なんだ…‥」


 俺は絶望に打ちひしがれていた。


 手裏剣・苦無(くない)多節混(ヌンチャク)・ナタ・トンファー――他にも名前を覚え切れなくなるくらい多くの武器を試し終えた。

 だけど、全て空振り。軽・中量級の武器が全滅だったことで、やっぱり無理なんじゃないかと心が折れかけていた。


「あ、アーク君! しっかりして!」


 頑張って励ましてくれるルインさんには悪いが、残るはゲテモノ揃いの重量級ゾーンのみ。


 木の棒の先に巨大な横向きの鉄の塊が刺さってる棍棒に見える鉄槌(ハンマー)だとか、鎖の先に球体が付いてるだけの何をするか分からないような武器ばっかりだ。

 潜在的な才能が……というか、見るからに俺では使いこなせそうもない。


「はぁ……ここに無いんだったら別の武器屋に行けばいいだろ!? さっさとやりな!」


 セルケさんに一喝(いっかつ)された俺は気乗りしないながらも、最後の区画に歩き出す。二人の好意に甘えているんだし、無職(ノージョブ)の今に甘んじるわけにはいかない。


 そう思っていた。


「――っ! これ、は……」


 重量級ゾーンにあるのは、さっきの刀や柳葉刀(りゅうようとう)と違って(わけ)の分からない武器ばっかりだったけど、俺の視線はその中の一つに吸い寄せられた。


「斧……? でも刃がないし、鉄棒(メイス)にしては細すぎる」


 全体的に鋭角で細身の長い柄。

 柄の先には紅い結晶が収まっており、そこを中心に鋭角な十字が折り重なる。(ただ)し片側にだけ丸みを帯びた大きなパーツが接合しており、左右非対称。

 それは不思議な形状。


 気づけば俺は、その漆黒のナニカに手を伸ばしていた。


「何だ、この感覚……」


 柄を握った瞬間、何かが繋がったような感覚、欠けていた半身が戻って来たような感覚が俺を襲った。

 今までに感じた事のない不思議な感覚だった。


「――ッ!?」


 そして、柄に収まっていた紅い結晶が光を放つと、目の前のソレが姿を変えていく。片側に付いた丸みを帯びた大きなパーツが起き上がり、緩やかに曲線を描く刃になった。


 茫然とそれを見ていると、身体から何かが流れていくような感覚と共に、かつて天啓の剣に灯った漆黒の光が刃に重なり、より巨大で鋭い魔力の刀身を形作る。


「……どうやら見つけたようだね。アンタだけの武器を! そいつは“処刑鎌(デスサイズ)”――“虚無裂(きょむさ)断罪(だんざい)(やいば)”。」


 俺だけの武器――。


「そんじゃ、アンタの特異職業(ユニークジョブ)は、“処刑者エクスキューショナー”ってとこかね?」


 俺だけの職業(ジョブ)――。


――これで、やっと母さんの想いに報いる事が……。


 どこか禍々しくもある漆黒の処刑鎌に見惚れ、セルケさんの楽しげに呟きに俺の心は打ち震えていた。


「やったね、アーク君! これで冒険者になれるよ!」

「ちょっ!? ルインさん!」


 そんな時、背後から何かがぶつかって来たような衝撃に襲われた。原因は声の主であるルインさんにある。

 自分の事のように喜んでくれるのは嬉しいし、全部彼女のおかげではあるけど、いきなり後ろから抱き着かれるのは色々(まず)い。

 主に背中に暴力的な柔らかいものが押し付けられていたり、後ろから良い匂いがしたりとあって落ち着かない。


 その後、揶揄(からかう)うようにセルケさんまで引っ付いて来て、完全にパニックになったのは余談だ。


 何はともあれ、無職(ノージョブ)から脱却できた。俺もやっと歩き出す事が出来そうだ。

パーティーメンバー


アーク・グラディウス

職業:処刑者←new!

武器:虚無裂ク断罪ノ刃(処刑鎌)←new!

防具:普通の一張羅(傷)


本作を読み、面白い!、続きが気になる!と思われた方は……。


広告下にある★★★★★から評価や、ブックマークへの登録をお願いいたします。


大変に執筆の励みになりますので、何卒お願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ