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地球破壊バクダンちゃんとは青春しない  作者: 友城にい
第一話 この日を「最後の晩餐」って言うのやめてくれ
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1-4

「――で、パンツは何色でしたの?」


 昇降口に待たせていた二人と合流し、校門を抜けたあたりでセカヒが聞いてくる。よくもまあ、表情を変えずにさらっとシモのネタに走れるな、と感心だけする。


 外は活気あふれる部活生のかけ声をバカにするように気温が落ちこんでいた。手足がかじかむ季節はもうすぐそこなんだろう。


「……また見てたな」


 おれはセカヒを蔑むように睨んだ。


「もちろんです。いついかなるときも晰さまをお守りしておりますので。お相手がいくら琲色さんだとしても、緩める気はございませんよ」

「うーん。あのさ、だからさ、チョー怖くなる発言やめてくれねぇ?」


 もう少し空気とか節度を持って、監視してもらいたいものだが、『いついかなるときも』と出されると守ってもらっている身としては、強く反論はできなくなる。

 どうせなら、結婚式の誓いの言葉で聞きたかった。どうせなら……。


「シロムクもいたなら姉ちゃんの行き過ぎた監視は止めてくれよな」

「申しわけありません。セカヒおねえちゃんが楽しそうでしたので」


 人様の告白イベントをスカートの中を覗いて、ほくそ笑むみたいにやるなよ!


「でも断ったのでしょう。問題なくて?」

「断ったよ。『無理だ』って。そりゃあな……」


 委員長に告白されたのは、今日がはじめてじゃない。それも二度や三度って回数でも。


「本日でフッたのは合計何回目になるんでしたっけ?」

「…………九百九回目だよ」


「最低ですわ」

「軽蔑します」


「おっと、シロムクまでか」

「冗談です。合わせました」


 仲の良い姉妹だ。しかし、シロムクが冗談を言うのはレアであれど、セカヒも下ネタを垂らし出したのは、中学に上がったころだったりする。


 それまでは任務を全うする操り人形でしかなかった。最低限の口数に、家でも邪魔にならないよう隅でずっと佇んでいて、正しく人形のようだった。


 ……というのは半分ウソでセカヒに関しては、前兆はあったな。お背中流しますと風呂に突入されたり、添い寝していたり、同級生のスカートをおれに見えるように捲くって、やたら性を刺激しようとしていたのを思い出してしまった。


 二人がおれと登校し始めたのは中学からだ。小学校では姿を消して護衛に就いていた。認識阻害というらしい。


 じゃあなぜ認識阻害の護衛をやめたのかというと、これらの神なるチカラはかなりの疲労を要するため、一時間交代でやっていたと聞いて、今では極力使わないよう言っている。

 それに、中学生からなら姿形がそのまま成長しなくとも違和感はないし、問題ないだろうと認可した。


 あと二人も護衛する中で学校に通いたくなったらしい。入学方法については触らぬ神ってやつだが……。

 おっと、話が大きく逸れた。


「委員長は本当にさ、おれのことがその……好きで、毎日のように告白してきてんのかなー、って、もしかしたらとこれの影響の一種なんだろうか、とか悩んでたら委員長の青春むちゃくちゃにしてるじゃん、ってなって、最悪だよなーおれ、って」


 はじめて告白されたのは入学式の日だった。よく晴れていたのを覚えている。見た目は今と大差ないけど、荒れた輩も多かったクラスに放り込まれた子犬みたいにビクビクしていた。


 おれはおれでボタンを押そうとくるやつらを対処するのに必死で、好きになられる理由も見当たらなかったから、帰りがけに止められたときはびっくりした。


 セカヒとシロムクも当然いたし、わけもわからぬまま第一声に「好きになりました」と告られた瞬間は、非モテなものだからおもわず「よろしくお願いします」なんて返事しそうになった(セカヒが止めた)。


「そうですね。わたくしどもも一〇〇%ボタンの与える影響を把握しているわけではございませんので、否定も肯定も致しかねます。しかしながら、押したくなる衝動と同様に琲色さんにも強いトラウマのようなものでも植えつければ九百九回も告白され、断る手間を省けたのではないですか?」


「……それは」


「据え膳食わず、ってやつですか。それとも純粋な好意ですか」


「……わからない。委員長は可愛いし、嫌いか好きか言われたら好きかもしれん。だが、付き合うかの話になったら、胸のここらへんがモヤモヤして突き飛ばせないおれがいるんだ」


 恋とはよくわからない。好きになった人を想うと、胸が熱くなって夜も眠れなくなると聞くが、いまいちピンと来ない。


 罪悪感はある。今にも押しつぶされそうな量だ。


 一ヵ月後に委員長が仮に、自分が抱いていた恋心が偽りのモノだったらと気づいたとき、どうなってしまうんだろう、と怖くなって考えないように最近はしていた。

 本物だったら、という期待と、偽物だったら、という不安をごちゃごちゃにしながら。


 そこに、足音を止めるシロムク。


「晰さま」

「……?」


 らしくない声。どこか真剣味を帯びた呼びかけに空いた片方にくつ先が曲がる。


「シロムクも同じく恋心がどういうものか理解しがたいですが、まずは目の前にある壁から解決するのはいかがでしょう」

「えー、それはボタンの期限である残り二十九日間を終えてから改めて、委員長への気持ちを整理しろってことでOK?」


「シロムクは、そう思います」

「……そっか。だよな、うん」


 九百九日ものあいだ、恋の話にはとことん沈黙を守っていたシロムクが痺れを切らしたかのようなアドバイスを、おれはすんなり受け入れることにした。


 ここでうじうじ本当の返答を悩んでも、おれには――YESが出せないんだ。


予定していた部分まで書けてなかったのですが、とりあえず更新しました。

次回こそもう少しペース上げていきます。


それと委員長のキャッチコピーは

「毎日告白するロリっ娘委員長!」

ですかね笑


友城にい

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― 新着の感想 ―
[良い点] 改めて晰とセカヒ・シロムクの関係性が掘り下げられてて良いですな。 セカヒ・シロムクの性格が登場時より柔らかい印象に変わったなぁと思います! [気になる点] あえて言うなれば…やっぱり「ボタ…
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