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地球破壊バクダンちゃんとは青春しない  作者: 友城にい
第四話 此処風羽花が眠った「卒業」の日
35/38

4-11

 背筋をピンと伸ばし、痺れを切らしたようにセカヒが野暮を挟む。いつもの委員長なら、緊張しくまごまごしてしまうところだが、表情を崩さずなにかを言いかけた。

 が、セカヒの顔を見て俯き、くちびるを噛んで、瞼を強く閉じて、


「売らない。売らないよ。セカヒさんは冗談キツいな。羽花さんも、ごめんね。大切にする……ううん、使ってみたいから、今度教えてほしいな。いい?」


 羽花は、首を小さく縦に振った。委員長の予想外の反撃に面食らったようだ。気弱で、小動物チックで、断れない性格。話さなくても、クラスではそれが常識だった。この三つで野々河琲色を表すには、事足りていたからだ。

 少なからずシンパシーを覚えていたのかもしれない。断れない性格に、孤立。おれは、セカヒの話が脳裏を過った。


 委員長が望んでクラスメートと距離を取っている話。


 まあ、最初っからセカヒの憶測で語られただけで百パー信じていたわけじゃないけど、不明な点もあった。そもそも委員長が交友を築こうとした事実が見当たらないのだ。百歩譲ってセカヒの仮説が正しかったとしても、羽花に話しかけてはいないことになる。

 委員長と仲良くなりたかった、と羽花は言った。過去に接点を持っているなら、出てくる言葉とは考えにくい。羽花の性格上、拒絶はしないはずだ。

 もしも委員長が、もしくは羽花の双方どちらかがもっと早くに声をかけていたら、こんな些細なぶつかりなど造作もなかっただろう。


 しかし、きっかけがないと動けない女の子と、受動的な女の子。


 奇しくも友だちになれた二人。これを、奇跡と銘打たずしてなんと呼ぼうか。おれ個人としても、二人は見守っていきたい。

 口を尖らせ、思い悩む羽花。意に介していないようで、時折物憂げな表情を浮かべる委員長。大丈夫、きっと。おれはパーティーゲームを用意し、場を持たせたのだった。


 手短となった祝いの席も、終わりに差しかかる。


「では最後。委員長、またなにかおれに叶えてほしい願い事とかないか。一個聞く」

「唐突だね。うんと、それじゃあ……昨年の逆。わたしのことを、下の名前で呼んでほしい」


 運命か偶然か。おれは昨年も同じ内容のプレゼントをし、『名前で呼んでもいいですか』とお願いされて、「晰くん」と呼ばれるようになった。

 一年越しの名前呼びのお願い。


「相変わらず謙虚だな、委員長は。たしかに馴染みすぎて変える機会がなかったな。お安い御用だ。委員長改めて、その……琲色」


 いざ言葉にして名前を呼んでも、案外抵抗はなかった。もっと照れくさくなるイメージをしていたが、おれの分も委員長……じゃなくて琲色が、顔から火が出たみたいに赤くなっていたからだろう。いい名前だな。琲色って。

 てっきり恋人になってくれ、とかも少し覚悟していた。


「あーくん、私もいい? 願い事しても」


 そこへゲームにも参加していなかった羽花が、琲色の横にと立った。フードを被って、顔つきはモデルモードに入ったようにつまらなそうにしている。


「ん? まあ、おれにできる範囲ならいいけど。羽花は勉強頑張ったし、ご褒美ぐらい。で、なに、願い事」


 元から琲色の誕生会と兼ねて、羽花の慰労会でもあった。おそらく六十点以上は取れているだろう。琲色とセカヒシロムクで代わる代わる指南していたからな。


 委員長――琲色の願いは応えた。最終指令『九』の達成は目の前。


 あと問題は、『六』の琲色とキスを成功させよ、だ。どうしたものか、とうつつを抜かしていると、ふとした瞬間に羽花と一本の線で目が合う。


「――私と付き合お。そして来週デート行こ。夜は、まかせる」


「…………はぁ!? 羽花お前いったいなにを言って」

「今月で事務所辞める。あーくん、私のこと好きでしょ?」

「いやそうじゃなくて。だ、だって羽花、誰も好きにならないって」


「ならないよ。べつにあーくんのこと好きになったわけじゃないし。けど、嫌いじゃないよ。今も昔も変わらず、『そばにいる人』だと思ってる。もしかして私のこと嫌いだった?」

「だから好きとか嫌いの類いでなくて。いいのか、そんな適当で。おれよりいい人なんて、いくらでもいただろ。それこそただおれは、羽花のそばにいただけで」

「もー、あーくん超メンドー。私がいいって言ってるんだからいいじゃん。誠実とか好感度とかガン無視されるし、結局こういうのって流れじゃん、流れ。私が気まぐれであーくんと交際してみたいと思っただけ。いいじゃん、どうせ非モテのくせに!」


 思わず習慣で、すまん、と言いそうになる。謝るのは肯定と同意義だ。おれには、心に決めた人がいる。だけどそれを、羽花に告げるわけにはいかない。


 琲色に聞かれるからとか以前に、羽花におれの思い人への丈は、きっと――届かない。


 Why? なんにせよ、このまま有耶無耶にするのも無理だ。羽花には相応の説得力を働きかける必要がある。なにか手助けはないか、とセカヒを一瞥するがシロムクと同時に顔を横に振られた。こうなったら禁じ手を使うしかなるまい。言いわけは、たくさんしてやるさ。


「おれじつは好きな人がいるんだ。その好きな人って言うのが――」


「――よくないっ。好き勝手に晰くんのこと知ったように言わないで」


5(ラスト)はどうなるのか、今現在で予想とかしてもらえると嬉しい。

では!


友城にい

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― 新着の感想 ―
[良い点] あれあれあれ?って面食らった!! [一言] 執筆お疲れ様です! ちょっと作者様、これどお言う事なのかしら? 面食らってますよww まさかまさかの琲色ちゃんの口撃! てか、羽花ちゃん…あーく…
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