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地球破壊バクダンちゃんとは青春しない  作者: 友城にい
第四話 此処風羽花が眠った「卒業」の日
33/38

4-9

 案の定、クラスメートらの声の色が一瞬で変わった。あれだけ苛立っていたのが嘘のように、平静を保ち始めた。

 寄りかかった壁の冷たさがおれを冷静にさせる。突破の手筈は、決まった。


「…………」


 スマホを取り出し、メッセージを開いたところで絶え間なく聞いていた声たちに引っかかりを覚える。妙だ。


 同じ声しか聞こえてこない――。


 となりの学年からの声は、どんなに意識を澄ましてみても、そもそも存在していなかった。無造作ではなく、指定された人(クラス内で)のみ、コネクトしている?


 これが、ソウカの思惑だって言うのか?

 もしそうだとしたら、わざわざ限定してクラスメートらの心の声を聞かせることで、おれはどんな意図を汲めた? 今からおれがやろうとしている突破口は果たして正解なのか?


 また、やらかす……のか?


『――ここまでのようだ』電車で委員長がリバースし、立ちつくしてしまったおれにソウカが言った去り際のセリフ。言い換えれば、失敗と言われたも同然じゃないか。


 二の舞は演じない。二度はない。


 おれは『う』の欄から『い』にスクロールし、メッセージを送った。遠目で確認した一番前窓際のお下げの少女は、先生から見えないようにしてスマホを扱う。


 なかなか返事はこない。と、同時にお下げの少女も画面と睨めっこ状態だ。


 ダメならダメで、おれはそれでいいと思った。最悪おれが実行すればいい。だけど、おれがやったところで皆の本音シラフは聞けないだろう。


 邪魔立てがあるから。だからおれは――委員長に頑張ってほしいと願った。もし断れたとしても、それは委員長の成長だ。甘んじて受け入れよう。でも――

 数分後。スマホがポッケに戻る。静止画だったメッセージに返事がきて、一秒で読んだ。


『よくわからないけど、羽花さんの力になれるなら』


 ――委員長はきっと、頼られたら断らない。〝友だち〟のことなら尚更。おれは傍観した。淡々と進められる授業の狭間、委員長は勢いよく手を挙げ、起立する。顔は俯き、おれが伝えた言葉を懸命に叫んでいるように口が動く。


 先生が酷く驚いた。教室は風船が割れたように騒々しく委員長に注目が集まる。


(なんのギャグ?)(いじめ?)(誰だよ、野々河ちゃんに罰ゲーム吹っかけたのは)(私は知らない)(委員長さん泣きだしたし、笑えねぇって)(こっち見んな)(動画撮ってもよくね?)(冗談キツいって)(そういえば最近――)(それよりなんで急に此処風さんのファンを)(この空気で手挙げろとか恥ずくて無理)(どうでもいい、そんなの)(とりあえず抱きつきたい)(意味不明。まあ俺はファンだけど)(可愛いからって図に乗るな、っての)(ざまぁないね)


 反応はかんばしくない。動揺と好奇の目がぐちゃぐちゃに交錯して、委員長を無言の圧力で突き飛ばした。


 まともに取り合ってくれていない。声を聞かずとも、なんとなく雰囲気で察しできる。ためらっている人もいるが、普段の風潮のせいで無視を決めこんだクラスメート数名。

 悪い判断とは思わない。自分は可愛い。先生はずっと、委員長に注意やら理由を問いただしている感じだ。それでも委員長は座らず、立ったまま肩をすくめた。


 次第にくすくす嗤う声が、意識的に増えてきた。心でなのか実際に薄ら笑いを浮かべているのかまではわからない。けど、明るみに出た感じが気色悪い。

 指でスクロールし、『う』の欄の羽花に助け舟を要請したくて文面を入力していく。


『今すぐクラスの皆に羽花のファンかを聞いてほしい――』


 やらかした。まったく冷静じゃなかった。ただ血迷っただけ。委員長は昨日、羽花の悩みを知りながらアドバイスができなかったことを悔いている感じだった。


 おれはそれを悪用したクズだ。

 勝手に推し量って、リスキーを一切考慮していなかった。お膳立てした気になって、見ていただけの卑怯者だ。所詮おれは、他力本願で、傲慢で、欲張りで、ズルくて、スケベで。

 バカであっても、いまだにおれは羽花と委員長に縋りたいと思っている。嫌われてもいいなんて綺麗事を言わない。嫌われないように努力する。


 だから失敗が怖い。打ち終わったメッセージの送信ボタンにかかった指が震える。一刻の猶予もないのに、羽花を見続けていた。いつもぽやぁと蚊帳の外にいる女の子。気の休まらない日々の中で、おれの憩いにしている存在。


 でも一度だって、追いかけてきたことはない。おれが追いかけなきゃ、どこか知らないとこに行ってしまいそうなほどバカなのに、誰にも依存しない。


 自由で能天気、そして――自分を持っていない。此処風羽花は、そういう女の子であった。

途端、声が止んだ――。羽花が席を立っていた。



「私と、友だちになってくれる人、この指とーまれ――――――――っ!」



 静まり返った教室、まるで鶴の一声のような大きな学校中に響き渡った羽花の戯れ。


 委員長が振り返り、委員長に集中していた目線も一斉に羽花に降り注いだ。


 しばしの無音を置いて、羽花はとびっきりのスマイルを浮かべる。歯を見せ、愛嬌を振りまいた。

人気者になりたい、そう言っていた幼なじみが描いていた光景かはわからない。けど――


「友だちになりたい!」「じゃあ私も」「俺も俺も」「あとでID教えて」「今度一緒にお出かけしよ」「メイクのコツ知りたい」「ファンで写真集持ってて」「羽花ちゃんって呼んでいい?」


 授業中なのも忘れて、クラスのほとんどが羽花のところに集った。先生はしどろもどろになり、やがて諦めた。胴上げでもする勢いで、羽花の周りがお祭り騒ぎになる。


 ――里仲晰にんげん。『三』の達成を伝えにきた。おめでとう。


 ソウカが見計らったタイミングでご登場。ん? 『三』だけ? 『八』は?


 ――『八』は未達成まだのようだね。では、ぼくから間髪入れずに『九』の発表。――これから訪れる二人の少女の《願い》に一度応えよ。次は、最終日。ご尊顔といこう。


ついに琲色編と同じ話数に。しかし、羽花編はもう少し続く

次回は琲色のバースデーパーティの話に入ります。お楽しみに


今回の解決もモヤモヤとした感じになってしまいました

解決という解決ができないらしいです(駄目)


感想やブクマなど嬉しいです。よろしくお願いします。

友城にい

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― 新着の感想 ―
[良い点] ほほー!なるほどねとスッキリしました☆ [一言] 執筆お疲れ様でしたm(_ _)m 琲色ちゃんがやらかした!!と思ったけど 羽花ちゃんも良い?タイミング(*p'∀'q) んん〜あーくんは……
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