4-8
気に入ってもらえましたら、ぜひブクマなど。
これは、クラスメートらの心の声……?
次々と思考を積み重ねられるたび、おれの脳に流れこんでくる。「バカ」だ「くたばれ」だ「恥知らず」だ「傍迷惑」だ、の罵詈雑言の数々。確信は得られないが、おれの予想していた範疇の本音たちだったので、メンタルは持ち堪えてくれた。
死ね、は言い過ぎとは思うがショックはない。今は、ソウカの思惑を汲み取れ。
(全然イケる)(ヤバこれ。超楽しいんだけど)(スカートが気になって押したくならないし、露出プレイもできて性癖拗らせそう)(スースーしてお尻冷たい)(パンツ脱いで正解じゃん)
なにやってんだ、クラスの女子は……。即座に頭を下げたくなったわ。
ではなくて、集中だ、集中。ソウカがおれに皆の心の声を聞かせることで、導かせようとしている攻略を探すんだ。
当たり前だが羽花の声は聞こえない。セカヒやシロムク、静かに佇んでいる委員長の声も澄ましてみたが除外されている。つまりは羽花の卒業を止めるカギをクラスメートらの本音が握っていると推測した。
しかし、どうすればいい。セカヒとシロムクのように意思疎通じゃなく、一方的に心の話を盗み聞きしているだけ。しかも現状は、おれへのヘイトで埋まってしまっている。
わからない。見つけろ。必ず手がかりがあるはずなんだ。
(――帰れよ)(邪魔アイツ)(オマエが金払えよな)(ほんと目障り)(居る価値ない――)
あーがークソが! クソクソクソクソクソクソ! 全身を循環する血が後ろ指を差して嘲った。段々とイライラしてくる。叫びてぇ、叫びてぇ、と。
歯を食いしばっていないと爆発しそうだ。
「――――――――」
不意に肩を叩かれた。横に目を寄せると、口パクでセカヒがなにか言っている。
「――――――――」
セカヒは繰り返した。だが、心の声が大きすぎて微塵も聞こえない。口の動きから、大丈夫ですか、晰さま、あたりだろうか。
頼るべきか。一瞬迷ったが、おれだけじゃ無理がある、と結論は出た。ダメだ、早くしないと情報過多で自分の思考と心の声がごちゃ混ぜになってきている。
自我が狂いそうだ。だからこそ、一音ずつ言葉で伝えようと丸く口を開ける。それを――抗えない《チカラ》で封じられた。
――許されない。使いの協力を借りる行為は『禁断』の領分だ。里仲晰でやれ。
喉が硬直する。発せられなかった声が、涎となって机に垂れていった。従うしかない。おれは黒板に向き直った。一際周波数の違う甲高い声――ソウカの制止に苦汁を嘗める。
「――――――――――……」
平気だ、前向いてろ。そう言うと、セカヒは渋々おれを視線から外した。
『禁断』――ソウカはたしかにそう言った。おれの記憶が正しければ、禁断の記述にセカヒシロムクの知恵を借りる行為はセーフのはず。そうでなければ、おれはとっくに『禁断』を犯していることになる。
ソウカのミステイク? いや……そんな姑息な手を使う神じゃない。五つと思っていた禁断の〝六つ目〟の存在を唱えるほうが無難か。
どちらにしろコンタクトが取れたときに聞くしかないが……。
と――。
(……)(もう泣きたい)(全部アイツが悪いんだ)(納得いかねぇ)(台無しだわ)(なんで誰も文句言わないの)(なんで俺らが我慢するのか理由が知りたい)(なんで私がこんな思いをしなきゃいけないの)(……)(こんなの絶対おかしい)(地獄に堕ちろよ)(もう、ウンザリだ)
クラスメートらの声が、怒りから罪悪感に変わってくる。脳に負荷がかかりすぎて自衛を始めだしたのだ。
すまない……。本当にすまないと思っている。これが身勝手に選んだ無責任なおれの道だ。周りを巻きこんででも手に入れたかったのは、単なる『富』に過ぎない。
おれだけが得して、おれだけが犠牲になって。影響を受けるお前らが悪くて、たった三年程度の付き合いで。黙らせるぐらい、どうってことないと思っていた。でも……それはやっぱり違った。
心苦しい――。クラスメートらの立場になると心が死にかける。だから、今は更生するわけにはいかない。
自分第一――。こう思いこむことが、十年間ボタンを守る術につながった。
探せ。耳を研ぎ澄ませ。羽花に関する声が、どっかに落ちているはずだ。
(――此処風さん、なんの用事だったんだろ)
見つけた。羽花が話しかけていた女子の誰かだろうか。不幸にもこの声以外、感知できなかった。よし、この子の声に集中しよう。
(はじめて声かけられたから緊張して、感じ悪くなっちゃった。嫌われた……よね。ああ、もったいないことしたなー。せっかく友だちになれるチャンスだったのに。あとで、謝りたい)
なんとも羽花に聞かせてやりたい言葉だろう。羽花は前に、『人気者になりたい』と嘆いていたっけ。
なんだ、ちゃんとファンいるじゃないか。
(でも、怖いな。でも、お近づきになりたいし、モデルのこととかいっぱいお話してみたい。どうやってメイクしてるんだろ。可愛いし、胸大きいし、腰もくびれがキレイで羨ましい)
安堵していた女子の続く言葉に、おれは席を立った。
(でも、私にはムリ。ムリムリムリ。迷惑だろうし、お仕事で疲れてるところをわざわざ起こして謝るほど無神経じゃない。諦めよう。私には縁がなかった。それだけ。このままでいい)
先生の引き止めや教室のざわめきは、どうだったのだろう。授業中に退席するのは、はじめてだ。滅茶苦茶悪っぽいな、これ。
しかし、『学業の怠慢』に抵触しては元も子もない。「トイレ」とセカヒに一言残して、廊下に出る。
ついに10万字到達。
物語は終盤。羽花編も残りわずか。答え合わせが絶望的に下手なので、どうにか濁さずやります!
それと、予定していた場面まで行ってません。もしかすると後日、追加するかもしれません。その際はアナウンス致します!
更新は早めに!(もう詐欺の域)
友城にい




