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地球破壊バクダンちゃんとは青春しない  作者: 友城にい
プロローグ おっぱいは爆弾より価値がある、おっぱいはお金より価値がある
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プロローグ

 短針が垂れ下がる一歩手前。当時八歳だったおれは、帰り道で見知らぬお姉さん二人に四角い箱型のモノを差し出された。掌サイズでボタンがひとつだけついているシンプルなモノだ。


「これなに?」


 知らない人からモノをもらってはいけない。逃げるのが最善策なのは頭でよく理解しているけど、後ろに立つもう一人のお姉さんのおっぱいが気になってしょうがなくなった。


 強調するように胸元とへそが開いたワンピースタイプのタイトな服装。

 身体の起伏が手に取るようにわかる服だった。よっぽどの自信があるか、誰かの趣味じゃないと絶対着ないデザインと思った。


 えっちい格好だ、と子どもながらに性を刺激された。


 だから逆に、あのメロンのようなおっぱいをガン見したくて時間稼ぎした。


「ふふ、なんだかわかるかな?」


 ちなみに差し出しているお姉さんは絶壁だった。男と遜色ないじゃん。おまけに服同じとかキッモ!


「わかんない。教えて、オネエさん」


 受け取ったボタンを見ても、とくに変哲なとこはない。

 おっぱいをガン見しつつ、はじめてお姉さんの胸から上を視界に入れる。


 神々しい金髪。その金髪が金風に乗って靡いていた。二人とも髪の長さは腰丈で、おっぱい以外はスタイルも似通っている。ぶっちゃけ双子にしか見えない。

 顔は幼い印象を受けた。髪と同色の双眸。まだおれよりは大人かもだけど高校生、もしかしたら中学生ぐらいに感じた。


「これはね、ボタンを押すと地球が爆発するこわーいボタンなのです」

「…………冗談でももっとうまい冗談なかったの? 商売下手すぎない?」


「冗談と言いたいところですが、マジなのでございます。押したその刹那、地球の真ん中に埋められたと言われる超級磁気破壊魔力爆弾マグネットコアに着魔され、ものの三秒で地球が粕と化すでしょう」 


 漢字多っ! 授業中の落書きかっ! 余計だけど最後ギャグ挟むな、知らんけど!


 しかし、妙だ。なぜこんな危なそうなボタンをおれみたいな八歳児に渡してくるのだろうと。普通に考えて、違和感でしかなかった。

 もしかするもなにも、からかわれている?


 だとしても理由なぞ知りえない。が、おれは早く遊びの終いがしたくてボタンを押そうと人差し指を伸ばした。


「シロムク」

「――はい」


 一瞬だった。


 止めが入るかなー、と予想してはいたもののまさか、まさかの。


「ぐ、ぐぢゅじい…………」


 シロムク、と呼ばれた後ろに立っていただけのお姉さんが気づけば、おれの自由を奪っていた。……チョークスリーパーで。


 耳元で優しく、「じっとしててください。けがしますよ」と囁く。


 当たってる! 当たってるって! お姉さんの立派な双瓜が。禁断の果実のような病みつきになりそうなほど柔らかく幸せな弾力がおれに!

 ……あと背中にぽっちらしき感触が――じゃなくて! お、堕ちそう……。


「シロムク、もういいですよ」

「――はい、やりすぎました」


 このお姉さま方には上下関係があるようだった。まるで他人行儀のように言葉を交わしたシロムクというおっぱいのお姉さんは、もう元の位置に戻っている。


 そして、ボタンを渡してきた崖のお姉さんが落としてしまったボタンを拾い上げつつ、おれに近寄ってきた。


「ボタンを決して押してはなりません。いいですね、里仲晰さとなかあきらさま」


「けほけほ、なんでおれの名前を……いったい、お姉さんたちはなんなの。なんでおれなの? おれじゃなきゃダメな理由でもあるの、教えてくれよ。急に技決めてくれるし、意味わかんねぇから」


「技に関しては妹に代わり謝罪します。晰さまの知りたい情報も順を追って説明致しますからご安心ください。なにも誘拐や危害を加えようなどとは思っておりません。ただ――」


 むせ返るおれの前で跪く。おっぱいのお姉さんも一緒になって。



「このボタンを守ってほしいだけです」



 わけがわからない。理解しようにも、おれの頭じゃ、もっとわけがわからなくなるだけだから尋ねた。


「いらない、って言って、逃げてもいいんですか」


 あえて質問にする意図はなかった。逃げたきゃ逃げればいいのかもしれない。けど、さっき味わったおっぱいのお姉さんのスピードを目の当たりにした手前、易々と逃げられるわけないと聞くだけ聞いた。


「いいですよ。晰さまの判断を優先するよう言われていますので。シロムクもわたくしも追いかけません。どうぞ、逃げてみてはいかがかと」


 崖のお姉さんの返答は素っ気ないものだった。なんかおれの予想の斜め上を行く反応ばかりで、また面食らった。


「いいの? 本当に逃げるよ?」

「ええ。晰さまが納得されないのでしたら仕方ないことですので」


「じゃあ……お言葉に甘えて」


 様子をうかがいつつ、お姉さん方から距離を置いていく。ボタンを押そうとしたら容赦なく止めにきたのに、逃げる選択には許容された。なにか罠でもあるのだろうか。


 思わず勘ぐってしまうが、振り返っても平然とした顔を浮かべていた。ただの杞憂であってほしい、と願うが。


「無駄ですが」

「――ですね」


 視線を前に戻したおれに対してなのか、お姉さん方の呟きが耳に入る。けどおれはかまわず、足を進めていた。その矢先――


 ギュルルルル、ギュギュギュギュイ――――――――――――――――――――――――ッ!!!


 突如、Jアラートのような身の危険を知らせる音が響いてくる。いや――こ、これは……違う、全然違った。


「ぐっ……ぐっ……耳っ! 耳が……! 耳が、痛い……耳が、ちぎれそう…………」


 身の毛がよだった。とてもじゃないが立っていられなくて蹲る。


 まるで強制的に全身を鳥肌に張り替えられた気分だった。

 耳を塞いで遮断しても、音は脳で響くようにおれを襲う。

 熱で浮かされ、意識を持っていかれそうな感覚と似ていた。おれがおれでなくなりそうで怖い音だ。


 ノイズの中、人生でこめたこともない力で瞼を開ける。


 ……まじかよ、と正直に思った。


 お姉さん方のヘッチャラな顔つきが目に映って、こちらに歩いてくると音は止まった。


「ざっと二メートルってところでしょうか。晰さまにはこのボタンを十年間、肌身離さず持っていてもらいます。もし二メートルを超すと先ほどのような人体に悪影響を及ぼす超音波が、死ぬまで晰さまを追いかけるようシステムが構築されているようです。もちろん晰さまが逃げれば逃げるほど超音波の範囲は広がり、それだけ被害が増えますので、今後は気をつけるようお願いしますね」


 耳鳴りがする。会話の声が遠い。でも、わかった。最初からおれに逃げ場はなかった。受け取る以外の選択はそもそもなかったのである。少なくとも現段階では。


 だから、あやふやに言った。


「仮におれが十年、このボタンを守りとおせたとして、おれにご褒美でもあるのか」


「ありますよ。無事押さずに守った暁には、莫大なお金を報酬として――」

「やる。やるよ。最初からそう言えばいいのに。ほら、ボタン」

「あら、その歳でずいぶんと現金な性格なんですね。嫌いじゃありませんよ」


 不純な動機でもいい。一%でも大金が手に入るメドが立つなら、おれはやれると思った。


「で、お姉さん方は何者なの」


「ご紹介がまだでしたね。わたくしたちは『神の使い』でございます。わたくしはセカヒ。ヒと書きますが、イ発音でお呼びいただければ。そして、双子の妹でシロムクでございます」


 姉を名乗ったセカヒが紹介するとおっぱいのお姉さん改め、シロムクが会釈する。


「神の使い……? 神ならさっきのシロムクさんの動きも頷ける……のか」


「それと晰さまが知りたがっていたボタン所持者に選ばれた理由ですが、わたくしたちにもお答えすることはできません」


「うーん、なんで?」


「わたくしたちは誰から託されたか明言できませんが、晰さまに渡せ、と命令されただけですので。申しわけありませんが」


「そっか。まあとりあえず十年、ボタンを押さなきゃいいんでしょ」


 おれはもう選ばれた理由などどうでもよかった。このボタンを十年間守ればいい。それにおれが選ばれた。それだけわかれば、ほかはどうでもよかった。


「ですが、ご安心を。今日からわたくしセカヒと」

「セカヒおねえちゃんとこのシロムクが晰さまを」



「「お守りいたしますので!」」



「…………え?」


 ただの八歳だったおれに転機と天使(神の使い)が舞い降りた。


 けれど、この時はまだ知るよしもなかった。甘く考えてたおれに様々な困難が訪れることに。



 ――そして、期日が一ヶ月前に控えたところから日常(ものがたり)は始まる。


3年半ぶりの新作です。ネタとしての目新しさはないと思いますが、なにかひとつ突出できれば、とまた頑張っていこうと思います

感想など待ってます!


友城にい

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― 新着の感想 ―
[良い点] ぐっと引き込まれる様な書き方が良いと思います。なろう特有の書き出しになっていない所も非常に良いです。 [気になる点] 特には無いです。 [一言] これからの展開がどうなるのか非常に楽しみで…
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