⑧
《やっぱりここらが限界かい?》
一際、立派にそびえ立ち美しい花を咲かす大木が問いかける。
《そうだ》
《うん》
あちこちから一斉に応える。
《あなただって好き勝手にいじくられて、花を散らすことさえ許されない体に作り替えられて》
《怒ってるだろ》
《悲しいだろ》
満開の花を蓄えた大木は
《確かに…》
と呟いて続けた。
《だがね、彼らは彼らで必死なんじゃないだろうかね?》
《…》
《壁に覆われた、小さな小さな自分たちの世界を守ることに必死なんだ。》
《だからと言って!!》
誰かの反論を遮るように大木は続ける。
《そう、だからと言って我らの尊厳を奪われることを許してやろう、と言っているわけではないんだ。》
《そうさ、アイツらは我々を道具としか見ていない。》
《利用するだけ利用して》
《食用、観賞用》
《やつら自分のことしか考えてないじゃない》
聞こえてくる語調は既に怒りを通り越した何かに変わっていた。
《だから僕たちは死を選ぶ》
《残された唯一の自由を》
《種を育むことも許されない私たちに残された唯一の自由を》
《他者のためだけに、そこに在り続ける、そんな柔らかい檻から解放されたいのよ》
大木はため息をもらす。
《私も…》
《俺もだ!》
とどまることのない彼らの叫び。
《皆の意見は分かった。》
大木は涙を流しながら続ける。
《ならば私が見届けよう。私も後を追うが、皆を見届けてから消えることにする。ここらが幕引きなのかもしれない。》
人間の寝静まったドーム内。
まるで祭りの最中のような異様な熱気は収まることはなかった。