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未来童話  作者: 志風梢洋
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今朝の一件以来、否定の言葉だけが頭でうずまく。


ありえない

おこりえない


外の世界に起こった何かの後、人間が感じるストレスは徹底的に排除されるようになった。


『強いストレスに晒された人間は何をもたらすか予測できない』


AIはそう結論を出したのだ。


他者からの敵意はもちろんのこと、お金のこと、恋愛のこと、あらゆる苦悶から解放された社会を目指すべく、AIは我々のドームをコントロールしている。


もちろんのことながら、意志持つ生き物、としての人間から、ストレスという、空気のように当然のものとして人間を取り巻く現象を、完全排除することは難しい。

AIもそれを前提として、個々をモニタリングしつつ快適な環境を提供するよう日々、演算を続けている。


だがその前提に立ったとしても植物が枯れるはずはないのだ。

いや植物が枯れるのは知っているし、命が尽きるのは常識として知識がある。


だがストレスレス社会を構築するに際して、もっとも初期の課題として上がった、生命の消失、への対策は随分と昔に完成していたはずだったのだ。


つまりは、死を感知させない、という対策。


全ての生命は死へ向かい、時間を進んでいく。

その過程で見せる前兆をAIは見のがさない。


人という種族に対する葬送は複雑化され、ケースに応じた手段で行われるため一概に伝えることは難しい。


が、我々の管轄である植物に関しては、死、いわゆる枯れるという現象への対処を画一化している。

おおよそ一週間前にはそれの前兆が見てとれるので


抜いて


捨てて


植える


のだ。


工程は全てドローンにより自動的に行われるのだから、枯れた植物など、誰も見たことはない。いや見ることはないはずだった。


言い知れぬ不安に心の平穏が掻き乱される。


『マイナス域への変動を感知しております。至急、薬剤の投与を行ってください。』


帰宅してからずっとAIタブレットがやかましい。


「いやとりあえず休むよ」


彼はそう言うとベッドに横になり、ため息を深くついて、目を閉じた。

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