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僕は他人の画力が見える

作者: 乙

唐突な告白だが、僕は超能力者だ。

他人のオーラが見える。

いや、正確に言うなら「他人の画力がオーラとして見える」というものだ。


この能力に目覚めたのは去年の春だ。


最初は自分の目がおかしくなったのではないかと思った。


オーラも、見える人と見えない人がいて、

もしかしてスピリチュアルな何かが見えてるのか?

と勘違いしたりもしていた。


見えているものが画力だと気付いたのは、美術の授業だった。


美術の部長だったクラスメイトと美術の先生が大きなオーラを纏っていたので、

放課後の美術部に顔を出すと、部員は皆うっすらとオーラを纏っていた。


話を聞くと、たぶん画力の高い人ほどオーラが大きく見えるということが分かった。


これは凄い超能力だと最初は喜んだが、冷静に考えてみると割と使えない能力だということが判明した。


描かれた絵画の価値が分かる訳でもないし、この能力の使い道が特に思いつかない。

画商や漫画編集にでもなればいいのか?でも、才能が見える訳でもないし...


他に使い道と言ったら、漫画家の性癖がちょっと分かるといった所か。

漫画を描いてる人は目を凝らすと、本人が描いた思い入れあるキャラがうっすらと背後霊のように浮かんでいるのが見える。

例えば、教室でいつも一人で小説を読んでいる坂本さんは結構な画力オーラの持ち主で、その後ろには眼帯したイケメンが見える。

ちょっとアゴが尖りすぎてるのが気になるが...



そんな僕は今、超有名漫画家さんと同じ車両に乗り合わせたことにビックリしている。


大学受験で初めて来た東京。

人の多さに圧倒されていたのだが、更に僕でも知ってるような有名な少年漫画の作者さんと同じ電車に乗り合わせることになった。


都会って凄い。

僕らのような、ど田舎暮らしの人間が地元で偶然有名人に会う機会なんて全くないと言えるだろう。


どうしよう、「○○○の作者さんですよね!サイン下さい」って言ってみようかな...

でも、いきなり知らない人から職業当てられて、サイン下さいなんて言われたら不気味がられるかな。


予期せず見かけた有名人にちょっと舞い上がっているのが自分でも分かる。

作者さんが結構綺麗なお姉さんだから、声をかけたら絶対に不審者だと思われそうだ。


しかし、さすがに漫画家だけあってオーラが凄い。

後ろで浮いている二人のキャラも結構ハッキリ見える。


作中で出てくる剣士と武闘家のキャラが見えているが、どちらのキャラもカッコよくて人気がある。

二人はライバルで漫画の中では半目しあっているのだが、目の前の二人は仲が良さそうな感じだ。


もしかしたら、今後の展開で仲良くなるんだろうか。


僕が声を掛けようか迷っている間に、駅に止まった電車から作者のお姉さんが降りてしまった。


残念に思いつつも、漫画のファンでもないのに有名だからという理由でサインを貰うのもどうだろう、なんて考えていると、視界の端に凄いものが見えた。


なんだあれは!?


多分人だと思うが、吹き出るオーラが凄すぎて本人の姿が見えなくなっている。

更に、背後には10人以上の女の子が浮かんでいる。


際どい衣装や短いスカートを着たおっぱいの大きな美少女達だが、存在感というか、威圧感が凄い。


まさに人外!

あれがエロ漫画家って奴か。


発車する電車の窓から、遠くなっていくその人外を見ながら、都会の恐ろしさを感じていた。




さて、色々あったがこの駅で空港に向かう電車に乗り換えたら後は迷うこともないだろう。

少し大きめのリュックを背負い、電車を降りる。


途中まで進んだ所で空港線への乗り換えが進んでるのとは反対側であることに気付き、慌てて引き返す。

まだ帰宅ラッシュには早い時間だが結構人が多く、対向する人にぶつからないよう注意して歩く。


乗り換え方面に向かって歩く途中、前方から胸元を大胆に開き、短いタイトスカートを着たお姉さんが歩いてくる。

画力オーラはあまり感じないが、肩の上に小学生くらいの可愛い男の子が浮かんでいるので多分漫画を描く人だろう。

結構ハッキリ見える男の子を連れたお姉さんとすれ違った。



その時、僕はとんでもない悪寒を感じると共に、冷や汗が身体中から吹き出てきた。


あまりの驚愕にお土産物を入れた紙袋を落としてしまった。



いま、僕は何を見た?



慌てて紙袋を拾って振り返ると、チェックのシャツを着て頭が薄くなったおじさんがこちらを不審そうに見ていた。


そう、おじさんだ。



特に何も問題ないと分かると、肩の上に少年を浮かべたおじさんはそのまま向こうに歩いていった。



なんて事だ、胸元を大胆に開いたナイスバディーなお姉さんだと思っていたあの姿は、あのおじさんのオーラだったのだ。


いった、どれ程の画力と性癖と執念があればあんなことが可能になるのか。



これが、都会...



大学に受かったとして、自分はこんな魔境で生活することができるんだろうか。


まだ見ぬ未来に不安を浮かべ、僕は故郷へと帰ったのだった。




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