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今日のタコ君

作者: ささきさき

多古君はクラスのみんなに体感温度計として重宝されている。


体感温度が暑いと赤くなるからだ。


普段薄茶色の髪から色白の肌まで見事に赤に染まる。

今日は7月梅雨の晴れ間でとても蒸す。

肌が一日分の汗と湿気でべとつき、制服に張りつく。

不快指数という単語を考えた人は天才だ。

あまりに的確過ぎる。


そして今日の多古君は赤い。

まだ夏になっていないのに。

夕方、歩いていても風がない。

でも毎年暑い、異常気象とニュースで騒ぐけど、毎年なら異常でなくて通常じゃないか。

多古君に質問しようとしてやめた。

高校生のカップルの会話に異常気象は無い。


「はるちゃんどうかした?」

くだらない質問をしようとしていたのに気がついたらしい。


「タコの美味しい食べ方考えてた。」


適当に答える。

たこ焼き。

酢の物。

唐揚げ。

姿干し。

タコ飯。


タコ飯がいい。

下ごしらえでタコをこれでもか、と塩揉みしたい。

きっとものすごく柔らかいタコ飯ができる。


「丸かじりじゃない?」


かじってみる?

多古君が私の目の前に手を差し出す?

赤く染まった手。

私は差し出された手の手首をおさえ、甲を噛んだ。

歯が骨の、筋の上を滑り皮だけ噛む。

ほんのり塩味。

多古君はうめいた。


「この山育ちは恥じらいがない。」


私にだって恥じらいはある。

私は今多古君と手をつなげない。


数日前は手どころか腕も組むし、ハグだってためらいがなかった。


友達が話した面白雑学のせいだ。


“タコは精子を手で渡す”


多古君は海産物じゃなくて蛸人だから違うはずだけど、恥ずかしくて手をつなげない。


歯形がついた、犬歯のとこ穴あきそう、多古君が言う。

「倍返しだ!!」


多古君は私の手首を握って力を込めた。

いやな予感がして手を離すと手首にたくさんの吸盤の後がついていた。

小さな鬱血の後が手首を彩る。


私はつい多古君を平手打ちしてしまった。


5メートルは吹き飛ぶ多古君。

本当に私の力で美味しく下ごしらえしてしまった。


「良介大丈夫?」


時期がきたら私を食べてね。

冬に熊鍋なんていかが?


多古良介くん

水泳部

好きな食べ物

ほっき貝の握り

熊野春香ちゃん

柔道部

好きな食べ物

サケとイクラの親子丼

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