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 2章

かくして、二人をもっと仲良くさせるためのキューピット大作戦が立てられるのであった。

「よっしゃ、リクさん、ハリさん。では、4月15日第一回兎と獅子のキューピット大作戦会議!を始めたいと思う。めんどいから兎と獅子作戦でいっか。というか結構眠いんだけど、いやかなり眠い」

さっそく、作戦の名前が変わってしまった。

今は深夜2時、冬樹は寝室で寝ている時間だ。

僕はブルさんのおかげでゲージから出してもらって、リクさんの居る水槽のまわりに集まる。

水槽の薄暗いライトだけが部屋を照らしていて、ほんとに作戦会議っぽい。ほんとに作戦会議なんだけど。


ブルさんそんなに眠いなら、こんな夜中に作戦会議をおこなわなければいいのに。

けどブルさんはこういうのは隠れてやるものだからなと言って深夜にやることになった。

冬樹とはたまに話が通じてるように思えるときもあるけれど、昼間にだって三匹で会議ぐらいできると思う。


僕は夜型の動物だから、このぐらいの時間のほうが目が覚めていて元気だ。

リクさんぐらいになると、一日もうちいつでも寝れるし、起きれるらしい。すごいな、ぼくは必ずお昼寝しちゃうから今度どうやったらできるのか教えてもらおっと。


「まず、現状を報告するとゆっきーはななみんのことすきだろうな、これは間違いない」

「それが前提の会議だからのぉ」

「まあ、そうっすよね。で、問題なのはななみんに彼氏がいるかどうかだ。おれはペットショップに行くときにしか会ってないがそれらしき男はいないと思う」


ブルさん、さっきまで眠そうにしてたのにとっても楽しそうだ。なんかいきいきしている。

「ハリさんはなにか知らないのか?」

「へ?」

「おいおい、きいてるかハリさん。ハリさんは生まれてすぐあそこにいたんだからさ、なにか知ってることあるかとおもって」

「うーん、赤ちゃんの時の記憶はあんまりないからその時はよくわからないけど、彼氏っぽい男の人はいなかったとおもうなぁ。ごめんなさい、あんまり情報なくて」


「あ~まじか、ハリさん。赤ちゃんってついこの前のことじゃねえか、成長はやいな」

「まぁ、仕事場には男は来ないんじゃないかのぉ」

「正直、仕事場にいるときしかおれとかはななみんとあってないからな」


僕のお母さんは僕を含めて6匹の赤ちゃんを産んだらしい。けど、飼ってた人がすぐにペットショップへ預けてしまったからお母さんのことはあんまり覚えてない。

赤ちゃんの記憶ってほとんどないのがほとんどでないのだろうか

兄弟のみんなのことも正直覚えてない。気づいたら僕はたった一匹売れ残っていて、それで一万円っていう紙で冬樹に買ってもらった。

僕たちにはお金とかの概念はない。

人は不思議だ。

冬樹によると諭吉さんって、一万円ってほんとに偉いんだって。

ぼくに、そこまでの価値はあるんだろうか。

ペットショップにくると、あの子は何万円、あっちは何千円、こっちは何十万円。僕は勝手にゲージの中のみんなを順位つける。

ペットショップにいるときはなんとも思わなかったのに。


たぶん、冬樹と会わなかったら僕の価値は下がっていったんだろう。

値段が下がることはあったけど上がることはほとんどなかった。


僕が誰とも会わなかったら、どうなっていたんだろう......





「......ってことでとりあえずデートに誘わないとな!」


「ふへ!?」



「よし、ハリさんもなんか眠そうだし、おれも眠いし、これでとりあえず終わりってことで。」


作戦会議はすぐに終わってしまった。何となくしか聞いてなかった……


決まったことは第二回はブルさんが眠かったから昼にやるということと、その議題はリクさんがななみちゃんとまだあったことないからどうにかしてペットショップにつれていってもらいななみちゃんと話す話題をつくること。


どうにかしてってどうするんだろう。こういうことを全力で考えるのって面白い。


眠そうなブルさんは僕をゲージ戻すとき、ふらふらしててゲージごと倒してしまいそうで恐かったから、昼にやることは賛成だ。


夜ってみんな寝ているから暇なんだ。やることはあるよ、忙しい。

人ほどでは、ないけどさ。


太陽があがって、世界が少しずつ明るくなっていくころに僕は眠くなる。

「 おやすみなさい 」


この声はブルさんにもリクさんにも届かないし、ましてや冬樹とかななみちゃんには到底届かないんだ。それでいいのかもしれない。

ちいさなハリネズミの独り言として神様がきいてくれればそれでいい。

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