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大まかな説明を終えるころ、ユーが薄く目を開いた。
「ユー、大丈夫?」
顔を覗き込んでみると泳いでいた瞳が落ち着き、焦点が合う。彼は深く息を吐き出し、ゆっくりと体を起こした。
「ボクは、平気だよ。……みんな、は」
「……被害はないよ。なんてことは、口を裂いても言えないけど」
「そ、か」
ヴェントに体を支えてもらいながら立ち上がり、ユーは辺りを見回した。ある人物に目を止め、よろめきながらも近寄る。
彼女は頂点に宝石のついた杖を持ったままガタガタと震えており、同族に支えられるようにして立っていた。
「ラポート」
呼ぶと、肩をビクリと震わせ、顔を上げた。そして血濡れになっているユーを見て目を見開き、そっと彼に手を伸ばす。
「ウィユ……」
「このまま、この世界にいるのは危険だ」
「え――」
「裏に行こう。ここに居る人たちをみんな連れて行く、出来る?」
今度は何が起きるのだろうと、竜人はみな、静かにユーと彼女の会話に耳を澄ませていた。ラポートは杖を握って一瞬躊躇うも、小さくうなずき、目を閉じる。
「オスキュリートの者、ウィユよ。この場にいる者をみなか」
「そうですよ、サドリアさん。少なくともここに居るよりは安全だ」
「しかし、問題があるだろう」
「ボク達でどうにかします」
短く答え、ユーはラポートの傍に歩いた。アンスやヴェント、ジューメは光の竜人たちと一緒に他の竜人たちを彼女の周りに集め、龍たちも同じように彼女を中心にして集まる。
「ユー、何が起きているんだい? この、龍といい……光の竜人? といい」
「今はゆっくり話している時間はないよ、だから、全てが終わって、落ち着いてから話す」
それから、準備を終えたのだろう、顔を上げたラポートの頭にそっと手を乗せた。彼女は肩を小さく振るわせ、恐る恐るユーを見上げる。
「ごめんね、無茶させて」
「大丈夫です。では、行きましょう」
トン、と杖で地面を突き。
足元から包まれていく光に、ユーは目を閉じて。その暖かさに体を委ねるのだった。