エピローグ
「だから言ったのにぃ! 行かない方がいいって!」
「大丈夫だって、アレーシー、ヒース」
「メロンさん、これのどこが大丈夫だというのです!」
青緑の髪をした少年二人が、黒髪の少女を背に庇いながら叫んだ。少女は夜の目と日の光の目をスッと細め、自分たちの前にいる、ならず者たちをにらみつける。揺れる髪の毛は太陽に反射して、金色に光ったように見えた。
「大丈夫」
「強気だねぇ、お嬢ちゃん。十数人いるこっちに対して、お前らは三人だっていうのに……」
森の中に、獣の低い鳴き声が響いた。その声にアレーシーとヒースの二人は肩を跳ね、ならず者たちも動揺を隠せずにいる。
どう聞いても、そこらあたりにいる獣の声ではなかったからだ。
「なんだ、今の鳴き声は……」
「貴様ら! なにをしている!」
輝く真紅の鱗に包まれた龍が、森の中に姿を現したのだ。男たちはそれを見てこぞって逃げ、龍の姿に少年二人も息を飲んで後ずさる。
「さぁ、サッサと失せろ! 消し炭にされたいか!」
「ほらね、大丈夫だって言ったでしょ」
「ぬぁあにが大丈夫なんだ、メロン! 最近、このあたりが物騒になってきてるから、しばらく来るなっつったろうが! オレの話を聞いてたのか、お前は!」
「だから、昨日は来なかったじゃない!」
「あのな、オレは、しーばーらーく、って言ったんだ! お前のしばらくは一日か!」
赤龍の咆哮にメロンは頬を膨らませ、二人は両耳を塞ぐと全身に力を入れた。彼女のオッドアイが楽しげに笑い、振り返る。
「二人とも、紹介するね! 炎の龍さん、ジューメ=エンファー! ジューメ、こっちはアレーシー=ドゥーモスと、ヒース=テラ! 私の友達!」
「そうかそうか。お前は友人を紹介するがために、オレの話をガン無視したってわけか。こいつ!」
爪先で頭をつつくと、メロンはキャッキャと笑い声をあげた。それからジューメの頭もとまで飛びあがり、鼻先に抱き着いて行く。
「ねぇねぇ、私のおじいさんの、そのおじいさんの話、また聞かせてよ!」
「またか。本当に好きだよな、お前。図書館に行けよ、オレの話よりもよっぽど情報があるだろうに」
「行かないよぉ! ジューメのお話しの方が、ずっと面白いもん。コンやライトニアはあんまり姿を見せてくれないし、ほかの龍さんは普通じゃ行けないような場所にいるし。……あ! アレーシーもヒースも、おじいさんのおじいさんと関係があるんだよ!」
メロンの言葉に、ジューメは目を丸くすると二人のことをジッと見つめた。緊張した面持ちで軽く頭を下げ、硬い笑みを浮かべている彼らに、ジューメの口の端を緩めると息を漏らす。
青緑の髪をした風の少年と、ふとした瞬間にどこか冷めた瞳をしている水の少年。言われずとも、それが誰なのかは自身がよく知っていた。
「そうか。どこか懐かしい面持ちだと思えば……そうか」
メロンを頭の上に座らせ、二人の体を掬い上げるように抱えると彼女の隣に座らせた。森の中を適当に歩き、開けたところに出ると自身も地面に腰をおろす。
「メロンは知ってるだろうが、二人は初めましてだからな。オレが知ってる、じいさんのじいさんのことを、最初から話すぞ。
まだそんなに遠くない昔……竜人たちからすると、遠いかもしれないけどな。今からザッと二百年前、ウィユ=オスキュリートってやつがいて――」




