14-2
「言ってくれるね……!」
クロウを握り締めると翼を広げ、先ほどの速さ以上でサンヴァーの目の前に向かった。その刃は迷うことなく、胸部に突き立てられる。
クロウは間違いなく体に埋まっているのに、虚空を切っているような手ごたえだった。咄嗟に場を離れようと身を引くが、埋まったクロウがそこから動かない。
『諦めろ、体を得た今……私には何者も勝てん』
歪んだ笑みを浮かべると肩甲骨から伸びた腕が思い切り振るわれ、ユーの体は小石のごとく吹き飛ばされた。コンダムが瞬時にツタを壁上に広げるがそれを突き破り、不可視の壁に衝突する。
体制を立て直せないまま地面に墜落し咳き込んでいると、背後から視線を感じ顔を上げた。
そこには、悔しそうに顔を歪めるジューメが、青ざめて不安そうに瞳を揺らしながらも、必死に震えを抑えようとしているアンスが。そしてまっすぐにこちらを見つめ、アンスを抱きしめているヴェントがいた。
「……みんな……」
「ふざけんなって。仕方ねぇからオレ達の分まで、あいつと戦ってくれよ……!」
「ユーさん、コンダムさん。無事でいて、勝って……」
「信じてるよ、ユー」
壁に隔たれて聞こえないはずなのに、三人の声はしっかりと耳に届いていた。一切を見逃さないようにと目を見開く彼らに、ユーは立ち上がると手を伸ばす。
「大丈夫。絶対に、あいつを倒すよ」
壁に手を触れると、ヴェントがそっと重ねた。微笑みかけると彼も柔らかく微笑み、キュッと拳を作る。
壁越しに拳をぶつけ合うと、ユーはクロウを握り直した。サンヴァーをにらみ、コンダムの傍に急ぐ
彼はツタをねじり、鋭い針のようにして幾度も攻撃を加えていた。それでもサンヴァーは涼しい表情を崩さずに笑みを浮かべ、コンダムがこめかみに青筋を立てて舌打ちをしているのが見える。
ユーも再び向かって行こうとし、ふと足を止めた。サンヴァーは台座から動く気は一切ないらしく、コンダムの服を引っ張ると彼に攻撃を止めさせる。
「コンダム、ちょっといいかな」
宣言とおり、サンヴァーは自身から攻撃を仕掛けては来ないようだった。それでも警戒しながら視線を合わせるよう翼を広げる。肩で息をし、ツタにも痛覚はあるのだろう、顔を歪めながらもコンダムはユーに視線を向けた。
「野郎、どこを攻撃しても手ごたえがない。空気を切っているようだ」
「それなんだけどさ、なんとなくわかった。今までの経験上」
自分は胸元を、コンダムは両腕、頭部、喉元。さらには翼や眉間などにも攻撃を加えていた、それでもサンヴァーにダメージを与えることは出来なかったが、まだ攻撃できる場所はある。
それは、体の持ち主を倒したときに攻撃した場所でもあった。
「ボクが以前、サーと戦った時は、眼があった場所をついたんだ。ひどく苦しんでたよ」
「……私の時もそうだったな」
「え」
コンダムはツタの先でローブをわずかに開き、胸元をむき出しにした。左胸には確かに小さくあるものの眼があり、ユーは苦笑する。
「単なる痣だと思っていたんだ。オスキュリートの血が流れていると知るまでは、な」
「そうだったんだ。……さて、探してみようか?」
「骨が折れる作業だな」
言いながらも、二人の口の端は上がっていた。




