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「ふっざけんな……! ふざけんな、ふざけんなよ!」
ジューメは両手に炎を纏わせ、何度も、見えない壁を殴りつけていた。アンスは力なくそこに座り込んで向こう側を見つめ、ヴェントはそんなアンスを包み込むように胸元へ閉じ込める。
何度殴ろうと、炎を突き付けようとその壁には毛ほどの傷もつかなかった。ジューメはただ肩を震わせ、その場にズルズルと腰を落とす。
「なんでだよ、コンダム!」
「ジューメ」
ヴェントのどこか落ち着いている声に、ジューメは振り返った。ただ見ただけなのだろうがその目は鋭く、睨まれているように感じる。
以前なら身がすくんでしまっただろうそれをまっすぐに見返し、ヴェントは視線を壁の向こうに移した。
「……なにがあっても見続けよう。今のボク達に出来ることはそれしかないよ、絶対に目を離さない、絶対に逸らさない」
全く会話は聞こえないが、サンヴァーを前にして、二人は肩を揺らして笑っていた。それにヴェントも思わず微笑み、震えているアンスを抱きしめる手に力を込める。
「大丈夫だよ。二人は負けない、絶対に勝つさ!」
「お前の得物は前衛向きだろう。私は後方支援に回ろうか」
ユーはうなずき、足を踏み込むと、クロウを振り上げてサンヴァーに斬りかかった。彼はクロウを浮かべる腕を下げたまま口角を上げている。
コンダムの腕から伸びるツタが、自身の脇を走った。気づけばサンヴァーに斬りかかる直前、目と鼻の先で複雑に絡み合って壁と化す。
一瞬遅れ、その壁がサンヴァーのクロウによって引き裂かれた。もしあのまま突進していたらどうなっていたかと、背に嫌な汗が伝う。
「目に映るものに囚われるな、それの腕はそれだけではないようだ」
「コンダム!」
裂けた壁の向こうに、肩甲骨の辺りから腕を生やしているサンヴァーがいた。それは以前、サーと戦った時のことを思い起こさせ、身震いする。
体を硬直させていると残ったツタに体を絡め取られ、ユーはコンダムの傍に戻されていた。
「コ、コンダムっ大丈夫!」
「この程度で根を上げているようじゃあ、とっくの昔に壊れてるよ」
千切られたツタは見る間に伸びていき、元の長さに戻った。サンヴァーは口の端を上げたままこちらを見下し、ゆったりと腕を組む。
『こちらからは仕掛けないでやろう、私はここから動かん。好きに、存分に攻撃をしてくるがいい』
「その言葉、後悔するなよ!」
思い切り体を反らし、残像が見えるほど素早く腕を突き出すと、ツタは鞭のように向かって行った。それはサンヴァーの両腕を刎ね、そのあっけなさにコンダムが前髪の下で目を丸くする。
刎ねられたはずの腕はコンダムがツタを戻す前に復元され、再びクロウを浮かべていた。涼しい顔で戻った腕を見つめ、ユーを手招きする。
『ほら。次はお前の番だよ、ウィユ』




