13-2
空を走る速さは龍の如く、コンダムはオスキュリートの里へ向かった。呼吸を整えることもせずにウィユの家に入ると、見えた姿に足を止める。
「局長殿……?」
「……おぉ、あなたは……」
机に突っ伏すように座っていた局長さんは、顔を上げると立ち上がった。深々と頭を下げた彼を慌てて止め、視線を合わせるよう少し腰をかがめる。
「ありがとうございます。ユーに、会えました。愛する我が子に会えました。……本当に、ありがとうございます」
「その、ウィユ達はどこに? 私は彼らの後を追おうと思っているのです」
コンダムが訊ねると、局長さんはゆっくりと腕を上げ、寝室を指した。見てみると床板が剥がされており、頷いてそちらに足を向ける。
「もし」
呼び止められて、コンダムは振り返った。局長さんは不安に押しつぶされそうな表情を浮かべて手をきつく握っており、困ったように眉を寄せてしまう。
「もし行くのであれば、ユーを、あの子達を頼みます。私たちはいいのです、たとえここで生かされていようと……すでに一度は死んだ身。でもあの子達は違います、まだ、まだ死んではいけないのです」
俯いたままでいた局長さんは顔を上げ、震える声で言った。ツーッと流れ行くしずくが床を濡らし、コンダムは驚いて彼の頬を服の袖で拭ってやる。
「だけど無茶をするから、あの子達は無茶ばかりするから。だから、だからもし危なかったら、危険な目に遭っていたら、意地でも引っ張って連れて帰ってきてください。こんなことを言ってしまえば他の竜人たちは怒るでしょう。だけど私はただ、あの子達が心配なのです」
震える局長さんの体を一度優しく抱きしめてやり、コンダムは体を起こした。深く頭を下げ、微笑む。
「約束しましょう。彼らは必ず、無事に国へ届けます」
踵を返して寝室に入ると、床下に眼が見えた。コンダムは無意識に自身の左胸に触れ、深く息を吸う。
そして目をきつく閉じ、その中に飛び込んだ。
周りにあるのは闇ばかりで、コンダムは掌に呪力を乗せるとそれを発光させた。わずかに視界がよくなり、翼を動かす。
遠くに、声が聞こえた。恐らくヴェントの声だろう、穏やかで、それでも切れ切れな声音に、コンダムは更にスピードを上げて飛ぶ。
目に飛び込んできたのは姿が歪になったユーと、彼に攻撃をされながらもそれを避け、語り続けるヴェントだった。
刹那に、なにが起きているのかをコンダムは理解していた。
「よく、耐えきった!」
コンダムはヴェントの襟元を掴み、ユーから引きはがした。放り投げた先は、大剣で体を支えながらも顔から血の気を無くして倒れているジューメと、それを解放しているアンスの元。
突き出された爪を避け、接近してきたユーの体を力一杯に抱きしめた。彼は暴れ、唸り声をあげ。頬に涙の筋をいくつも作りながら、背をひっかいて来る。それでもコンダムはユーの背を優しく摩り、掌を背にあてた。
「ウィユ、暴れるな。大丈夫、お前を苦しめているものを今、消してやるからな」
「コ、コンダム!」




