12-1
岩に腰をおろし、ぼんやりと空を見上げていると、背後に眼が浮かんだ。それに彼は背を震わせて振り返り、出て来た姿に目を細める。
「ウィユ。それに、お前たちは……」
「ほ、本当だ……。本当にコンダムだ」
コンダムは立ち上がり、周囲を見渡した。緩く目を閉じるとすぐにミールが飛んできて、四人の姿に目を丸くする。
「ジューメ、ヴェント! それに、きみがアンス=インヴェンターか?」
「はい。初めまして」
アンスが伸ばした手に、ミールとコンダムも手を伸ばした。そんな二人にユーは微笑み、翼を開くとコンダムに視線を合わせて飛ぶ。
「コンダム、扉の場所、わかったよ」
「そうか。封印の方法も?」
「ううん。……文献が一冊、なくなってた。だから封印の方法は解らなかったし、封印するつもりは全くないからね」
「な……!」
「ぶ、文献がなかったと!」
ユーの言葉に、コンダムとミールの二人は目を剥いた。忌々しそうに舌打ちをし、コンダムは自身の左胸をきつく握る。
「クソ……。また、知らない間に私が……」
「あんたのせいじゃないさ。魔界の奴らにとって文献は邪魔な書物だし、そうじゃなかった伝承者である大天使は狙わないだろ」
きつく眉を寄せるコンダムの肩を叩き、ミールは首を振る。コンダムはどこか弱い笑みを浮かべながらも、ミールの言葉に顔を上げた。
「あとは、ラポート様が覚えていらっしゃることに、期待をしよう」
「……どうもあの子は、暗記が苦手だからな……。最悪の場合、なくなっている文献は欠番か……。いったい、どこが?」
「五九四一だよ」
「魔界との戦いで一番重要なところじゃないか! えぇい、それじゃあ封印の方法が判らないのも無理はないだろうよ!」
「まぁまぁ、落ち着けって」
頭を抱えて唸るコンダムに、ミールも苦笑していた。そんな二人を見てヴェントとジューメは目を点にする。
「なんだ……随分と雰囲気が違うな」
「なんだか、明るいね……?」
「ボクもびっくりしたよ、最初に来たとき」
ブツブツと口先で悔しそうにモノを言い、猫背になって頭を抱えるコンダムの背を、ミールは苦笑しながら撫でていた。だが不意にコンダムが体を起こすとその背がミールの額に直撃し、今度はコンダムが慌ててミールの顔を覗き込んでいる。
「いってててて……急に体を起こすなよ」
「す、すまん。いや、文献がなかったのだろう? ならばどうやって扉の場所を、まさか自力で」
「きみの日記帳に、これが挟んであったよ」
一枚の紙きれを出すユーに、コンダムとミールはそれを受け取ると二人して更に苦い表情になってしまった。そんな彼らに口元を手でおさえ、笑ってしまう。
「うん、あった。扉は、きみ達が書いてくれていた推測通りの場所にあったよ」
「……あんたこれ、どこに挟んでたって?」
「……にっきちょう……」
「ごめん、中身を読んじゃった」
コンダムは紙をミールに押し付けると、一人でヨロヨロと場を離れ、地面に膝と両手をつき深くうなだれてしまった。髪の毛の間からチラと見えた耳は真っ赤になってしまっており、ユーは申し訳なさそうに笑う。
つられるように、ヴェントやジューメ、アンスも柔らかい笑みを浮かべていた。
それでも、いつまでもこうしているわけにはいかない。
ユーの雰囲気が変わったのを見て、振り返ったコンダムもまた、真剣な表情になった。同じ視線の高さにいるユーの事を見つめ、その頬に手を伸ばす。
「行ってくるよ」
「……あぁ。頼んだ」
ユーはコンダムに背を向け、三人を見た。彼らはうなずき、翼を広げるとユーを先頭に飛び立つ。
コンダムとミールに、見送られながら。




