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英雄の三人が戻ってきたことによりさらに勢いがついた竜人たちと龍は、その勢いのままに魔界の住人を殲滅してしまった。魔界の住人が一匹残らずいなくなっているのを確認するとジューメはわき目もふらずにサデルの元へ飛び、彼の前で膝をつく。
「おっさん……!」
「おいおい、なんつー顔をしてるんだよ。死体を見るよりもひでぇじゃねえか」
ジューメの歪んだ表情に、サデルは彼の頭をガシガシと力強く撫でた。手を払うこともしない彼は、その表情を変えることもなく、青ざめて唇を戦慄かせている。そんなジューメにしばらく考え込むと、アンスに巻いてもらっていた包帯をするりと解いた。
「ほら、綺麗に焼いたから割と平気だぞ?」
「バッカ野郎! 他の奴らに刺激が強いわ、ボケ!」
ヒョイと傷口を見せてきたサデルの頭を思わずはたき、包帯を奪い取ると即座に巻きなおした。晴れることがない表情に困ったように笑いながら、正面に座っているジューメの体を抱きしめる。
「お前が知るおっさんは、こんだけの怪我で死ぬような奴じゃないだろ?」
「……大バカ野郎。そんな問題じゃ、ねぇだろ……」
「もう、魔界の奴はいないみたいだよ」
「魔界の力も感じないね」
見回りに行っていたヴェントとユー、コンの三人が戻ってきた。ジューメはサデルから離れると彼に肩を貸しながら立ち上がり、振り返る。
「もう、ここにも長くはいられないな」
「……夜に話そう。ほかの皆は、治療は終わって?」
「おー。てか、こんなに酷い怪我をしたのはオレだけっぽい。年は取りたくないねぇ」
「当事者……。頼むから少し、怪我人らしくしてくれよ……」
どこまでも普段と変わらない、軽い口調で口を尖らせているサデルに。ジューメはがっくりと肩を落とし、それを見て豪快に笑っているサデルに釣られるよう、口の端を緩く上げるヴェントに。
ユーもどこか、弱々しい笑みを浮かべていた。
夜になり、ユーとヴェント、ジューメ、アンス、ラポート、サデルはみんなから離れた場所で頭を寄せ合っていた。光の竜人の少年はユーとラポートの間で、二人の服をきつく握りしめながら、怯えるようにヴェント達を見上げている。
「ねぇ、ラポート。その子は?」
「ルーチェ=ルフェウス。コンダムの甥っ子だよ」
「……は?」
ユーが答えると、ヴェントの声は裏返った。ジューメは無言のままに目を丸くしてルーチェを見つめ、そうすると彼はますます怯えるように、ユーの背に隠れていく。
「二人は知ってるよね。コンダムに、ボクと同じ血が流れていること。ということは、彼の血族にも、ボクと同じ血が流れている。すなわち、眼があるんだ。純潔じゃなくても鍵の役目を果たすことは、ボクで証明されている」
「……鍵は、ユーだけじゃなかった……」
「そういうこと」
と、ユーはルーチェを優しく撫でた。彼は震えながらもヴェントとジューメを見上げ、わずかに頭を下げる。
「もう、あんまり時間は残されてない。だからね、魔界に乗り込もうと思う」
「どうやって?」
「……扉の場所が、判ったんだ」




