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「魔界の奴らが来たぞ!」
ユー達が帰ってくる予定の、その日。空の一部に夜が訪れ、見張りをしていたルシアルの兵が声をあげた。アンスは青ざめるとすぐに自身の荷物を漁り、例の、潜水艇が入っていた機械を取り出す。
「うまく、作動してくださいよ……」
それをきつく握りしめたまま翼を開き、木の枝を拾うと飛んだ。地面に大きな円を描くとその中に竜人たちを集めてしまい、自分は円の外に出る。
アンスは一度深呼吸をし、竜人たちの頭上に機械を放り投げた。中から出てきた潜水艇は格子状に変化し、一つの巨大なドームと化す。それは、円を描いた場所へ綺麗に落ち、竜人たちを囲んでしまった。
「アンスよ、以前も思ったのですが……これは一体なんなのです?」
マリアナはドームを尾で突きながら、アンスへ顔を向けた。彼は頬に汗を浮かべながら銃を構え、口の端を軽く上げる。
「ジューメさんの尾の鱗を研究させていただいたのです。……龍のそれと変わらない強度、奴らは、彼らを傷つけることは出来ない」
ドームの外には現在、五頭の龍とユーの姿になっているコン、ルシアルの兵隊、集落の外で暮らしている竜人たちがいた。彼らの前にアンスが立ち、その隣にはサデルが並ぶ。
「中に入らなくても?」
「結構です。魔界の住人とは、戦ったことがありますので」
ソーリスとブリストはほぼ同時に高らかな咆哮を上げ、互いに競うようにして翼を開き、魔界の住人へと向かって行った。サドリアとマリアナはドームを挟むようにして翼を限界まで開き、ライトニアも二頭がやろうとしていることが判ったのだろう、自身もドームに近寄ると翼を開く。
「ライトニア、ボクはどうすればいい!」
「コン。存分に……酷い怪我をしない程度に、戦え。お前はダリエスの、血を引いている」
コンは深く頷き、ライトニアは全身に力を込めて吼えた。それに高揚されるよう竜人たちは武器を振り上げ、コンも棒を構えると、ソーリスやブリストに続くように飛び出す。
アンスも翼を開き、地面を蹴ろうとしたその時。自分たちがいる場所よりも離れている森から飛び出して来た二つの影に、アンスは思わず動きを止めた。
「ラ、ラポートさん! それに、光の竜人の少年?」
目を丸くし、ドームを振り返った。背を冷たいものが流れていき、中で怯えている竜人たちに瞳を揺らす。
自分はなぜ、全員がここに居ると思っていたのだろう。こうして集団行動をしていれば当然、全員の動きを一人で把握することは出来ない。誰かがこの場を離れるときに、逐一他の者に報告しない限り、目が届かないところもあるはずなのに。
これは、全員がここに居て当たり前で、誰もこの場を離れていないと思い込んでいた自身の怠慢であり、あってはならないことだった。
「早く、早くこちらへ!」
強く地面を踏み込み、叫んだ。ラポートは少年を庇いながらヨロヨロと飛んでおり、彼女たちの姿に気が付いたのだろう、ソーリスとブリストは炎と風を駆使し、コンも小さな体で魔界の住人が彼女たちの元へ行かないよう足止めをしている。
「もっと早く飛べないのか! ライトニアの同胞!」
「えぇい、チビすけ! 小娘と小僧を連れて、サッサとあのドームの元へ行け!」
二頭が吼え、コンは対峙する魔界の住人を棒で吹きとばすと、即座にラポートの元へ向かった。




