10-2
部屋には天井の高さまである本棚が、壁に沿うように並んでいた。部屋全体を取り囲むそれらすべてに、見て判るほど重量のある本が立てられている。
「ウッソでしょ……何が、見てもらった方が早いって……この中から、探すの?」
表にいられる時間で、今回だけで見つけ出せるだろうか。思わず頭を抱えながらとりあえず翼を動かし、本棚の一番上へ飛んでみた。適当に一冊取ろうとし、手を止める。
「……この数字は、年代? それに、歴って書いてある……」
背表紙に書かれていた数字と文字を見て、ユーは別の本棚に飛んでみた。
「こっちは家・図。これは……戦? 三種類の本があるの?」
よく見てみると本棚は三種類に分かれているらしく、背表紙の下部には違う文字と数字が書かれていた。ユーはその数字を追って行き、歴と記してある本を手にする。背表紙には、一二六五、と書かれてあった。
『人間は龍から呪力を得たことにより、徐々に龍が持つ力と同じものを持つようになった。また、人間の中に龍とよく似た翼を持つ子が生まれるようになり、それが龍の国(=竜の国)の始まりだと推測される』
冒頭を流し読み、本を閉じた。それを足元に置くと再び数字を追って行き、ふと眉を寄せる。
「……五八九一から、五九四一までが飛んで、六〇〇〇になってる?」
『歴』の棚から『戦』の棚に飛んでみると、そこには五八九一から五九四○までの本があった。それを見てユーは、更に眉を寄せる。
「家・図は家系図の事だよね。……歴も、戦も、家系図も。五九四一が、ない?」
眉を寄せながらも五九四○から遡り、三冊ほどを手にすると床に向かった。胡坐をかき、厚い本を開く。
『魔界の住人は実体を持たない。ゆえに奴らは肉体を求め、竜人を取りこもうとした。時折無機質な物や液体、気体の中に舞っている塵に乗り移る魔物もいたために、龍たちは戦いに苦しめられた』
適当に開いたページに書かれていたことに、ユーは眉間にきつくシワを寄せた。それからもう一つ古い本を手にし、ページをめくっていく。
『竜人たちは、魔界の住人が持つ闇の呪力に抵抗する術を持たなかった。体に異常をきたす者、歪な姿になる者が現れ始め、その苦しみから解放されたいがために魔界の住人に従い、住人と化した者もいた。同胞と戦わざるを得ない状況から龍や竜人たちは更に苦しめられ、その数を減らしていった』
勢いよく本を閉じると、ほこりが舞った。それに咳き込みながらも緩々と首を振り、ゆっくりと息を吐き出す。それからもう一度、五九四○と書かれた本を手にした。最後の方から数枚めくり、瞼を痙攣させる。
『魔界の住人の力に毒され、瘴気にあてられ、戦える龍はそのほとんどが倒れてしまった。残ったのは、炎、風、雷、水の幼い龍と、その龍たちを守っていた光の龍。そして、その五頭の龍を自らの呪力により囲い込み、魔界の住人の目に触れさせないようにしていた闇の龍。かく、一頭ずつとなっていた。
その歳、炎の龍ソーリス、一一〇〇歳。風の龍ブリスト、一〇〇〇歳。雷の龍サドリアと水の龍マリアナ、一五〇〇歳。光の龍ライトニア、二五〇〇歳。闇の龍ダリエス、四七〇〇歳である。
一〇〇〇〇以上の時を生きる龍にとって、彼らはまだ若かった』
一番古い本のはずなのに。肝心のページは、ここで途切れていた。
「な、なんで…… 肝心なものが、ないじゃない!」
欲している情報はやはり、『戦』の書物で切れている、五九四一に乗っているのだろうか。
ならばそれは、どこに?




