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竜の国 ~未来のために~  作者: 夢野 幸
第九章 悪夢
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9-5


「少し、先ほど言った呪力の話をしようか。生きるために必要なものと言ったが、集落の者たちはその呪力のおかげで、風、炎、水。そして雷を使うことができる。その中で私たち光の竜人は記憶力に特化し、お前たち闇の竜人は戦うことに特化した」


 声を抑えようと体を緊張させても、ユーの喉からは嗚咽がもれ、背に回した腕には力がこめられていった。力強いそれに骨がミシリ、と軋む音が聞こえたような気もするが、コンダムは優しく彼の事を撫で続ける。


「その呪力について詳しく知り、キチンと理解が出来れば……龍や私のように、呪力を自在に使うことも出来るのだが」


 と、コンダムはユーの背を撫でる手を放し、頭上にかざした。光りを放つその手は四年前に見たことがあり、サッと青ざめるとコンダムを見上げる。


「コンダム!」

「こうして呪力を分け与え、傷を癒すことも出来る。だがこれは、魔界の中にいて……ここで生かされているから可能なこと。今、魔界を封印することができるのは、扉の外から呪力を使って戦えるお前たちだけなのだ」

「封印したら、コンダム達はどうなるの!」


 コンダムは何も答えず、ただ、静かに微笑んだだけだった。それにユーはますます体を緊張させていき、呼吸を荒げる。


「封印したら、コンダム達はずっと……ここで、苦しむことになるんじゃないの! 封印なんか絶対にしないから、倒す、ボクは必ず……サンヴァーを倒す! 絶対に、絶対にコンダム達を、解放するから……!」


 怒鳴ると同時に声を張り上げ、幼子のように、ユーはボロボロと大粒の涙をこぼし始めた。コンダムは戸惑いながらも体を抱えあげてやると自身の膝にユーを座らせ、ゆりかごのように体を揺らす。


「ボクは何も知らなかった、こんな、こんなことって」

「ウィユ、お前がそうやって、思いつめることはないんだよ。……お前には良い友人たちがいるじゃないか、一人で背負うな、抱え込もうとするな。こうなったのはサーのせいであり、お前には何も責任はないじゃないか」


 竜人たちの会話が聞こえ、ユーを軽々と抱えあげると茂みの中に隠れた。彼らはそこに広がっている血だまりに悲鳴を上げると翼を広げて立ち去り、コンダムはホッと息をつく。


「……一人で背負いこんでしまえば、私のようになってしまうから」


 片手で地面に何かを記し、その中にユーをそっと座らせた。暖かな光を発するそれに目を擦りながらも、コンダムをまっすぐ見つめる。


「無茶はするんじゃないぞ」

「……約束は、出来ないよ」

「まったく」


 涙の筋を作った頬を引きつらせながらも微笑むユーに、コンダムは呆れたように笑いかけ、記しに触れた。

 光が彼を包み込み、はじけた時。ユーの姿はそこから消えていた。




 夜が明けた頃にラポートから話を聞き、ヴェント達はただ、ユーを待つことしか出来ず落ち着きを失っていた。不意に背後から光を浴び、振り返るとそこにはユーが立っている。


「ユー、また勝手に!」


 ヴェントが駆け寄るよりも早く、ユーはその場に崩れ落ちて背を丸め、叫んだ。

 怒鳴ろうとしたヴェントは思わず戸惑い、喉が裂けんばかりに泣き叫ぶユーの体を支えるとそっと抱きしめる。


「ユー、どうしたの? なにがあったの?」

「許さない……! 許さない、許さない許さない許さない! 絶対に、この身に変えてでも! ボクは絶対に、あいつらを……消してやる!」


 一体何度、「許さない」と叫んだだろう。一体どれほどの間、そうして吠えていたのだろう。

 ユーは呼吸を整え、腕で荒々しく目元を擦ると、ヴェントから離れた。目を充血させている彼にヴェントはネロの茎を少し絞り、布きれを湿らせるとユーの頬を拭いてやる。


「ユー、なにがあったの? どうして、怪我が全部治ってるの?」

「ごめん、言えない……」

「ユー」

「言わせないで! お願い……ボクに、見てきたものを話させないで。これ以上みんなを苦しめたくないんだ」


 ガクガクと震え、青ざめるユーを、それ以上問い詰めることは出来なかった。ヴェントは深く息を吐き出すと俯くユーの頭を荒く撫でまわし、立ち上がって彼に手を伸ばす。


「わかったよ、今はこれ以上、聞かない。だけどいつかは話してもらうからね」

「……わかった、よ」

「あと! 今度勝手なことをしたら……いくらボクでも、本当に怒るから」


 目を細めるようにして言うヴェントにユーはうなずき、苦い笑みを零した。アンスも白い目でこちらを見上げ、ジューメに至ってはこめかみに青筋を立てている。


「その、ごめん、なさい」

「お前というやつは……。いい、十日間、お前はきっちりと休むこと。表には行かせないしコンの相手もオレがする、クロウと棒は没収な」

「食事の方も他の方を優先しないよう、キチンと取りなさい。無茶ばかりしてこちらの寿命を縮める気ですか」

「ごめんなさいっ」


 しかめっ面の二人に念押しするように言われ、ユーは即座に二度目を謝ると、肩を落としたのだった。

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