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竜の国 ~未来のために~  作者: 夢野 幸
第九章 悪夢
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9-2

 ユーは、コンダムと戦った後から起きたことを、事細かに話していった。

 赤い斑点の事、龍のこと。そしてサーの話を終えるころには二人の眉間に深くシワが刻まれ、険悪な表情を浮かべていた。


「野郎、とんでもねぇ奴だ」

「子の前で、すまないとは思うが。あの野郎は初めて見た時からいけ好かなかったのだ、まさか、そんなことになっていたとは」

「止めてよ、ボクはあれのこと、もう父親だなんて思ってない。……それで、ダリエスさんと一緒にサーを鍵にして扉を封印し直したんだけど……」

「身も心も魔界に売っている者をくさびにしたために、扉が開かれてしまったと」


 深くうつむいているユーの頭に、コンダムは手を乗せた。しかしふとその手を放すと、顎に置きなおして何かを考えている。


「ところでだ。話を聞いたところ、こちらに人が突然増えたのは、その赤い斑点と魔界の奇襲によるものだろう。だがそれ以降、一切動きがないのはなぜだ? 彼らに危害がないように守り切っているということか?」

「ううん、今は裏の世界にいるんだ。魔界の奴らはまだ、裏の世界にまでは来られないみたい」


 そう答えるとミールがビクリと肩を震わせ、コンダムはまばたきをした。そんな二人に何かおかしなことを言ってしまったかと、ユーも黙り込む。


「……おい、今なんと言った。裏の世界に? 一体どうやって」

「え? ラポートが」

「ラポート様が、裏の世界に行けるほどの呪力を持っているわけがない……なぁ?」


 言いながら、ミールの視線はコンダムに向けられていた。彼は口を閉じたまま苦い表情を浮かべ、ミールの方を見ないようにしている。


「さぁ白状しろ、あんた、何をした」

「……ウィユ、ラポートが裏と表をつなぐとき……杖を、使っていないか?」

「あの、てっぺんに宝石がついてるやつでしょ?」

「あー……」

「いつかはやると思ってたけどな、あんたってやつは!」

「あいってぇえええええええ!」


 一かけらの手加減もなく背を叩かれたコンダムは、地面に突っ伏すように体を丸めて悶絶し始めた。彼をそうしたミール自身は腰に手を当ててコンダムを睨み、仕えているはずの主をつま先で小突いている。


「どんだけ呪力が有り余ってんだよあんた、てか一体いつの間にあの杖に細工をした! 表と裏を自由に往来できるほどの呪力なんか!」

「じゅ、呪力が無尽蔵に生まれるわけがなかろう! 杖についている宝石に込められる呪力なんか、たかが知れているわ、せいぜい頑張っても一往復が限界だろうよ!」

「ちょっとまって、もうボク達何往復したかもわからないんだけど」


 コンダムが上げた悲鳴交じりの言葉に、ウィユは思わず制止を掛けた。するとミールの表情は増して凶悪になっていき、コンダムは苦々しい笑みを浮かべている。額に浮かぶのは冷や汗か。


「吐け。何をした」

「その、裏の世界に興味を持ち始めて、龍の呪力のあり方を知ったころに、な。宝石を少しばかりいじって」

「まっさか、他のエネルギーを吸収して、呪力に変えられるようにした。とか、言わないよな?」

「ご名答」


 頭を抱えながら眉間にしわを刻み込み、呆れたようなため息を薄く開いた唇からもらしていく。


「あんたさぁ、まだレガー様がいるころの話じゃん? ルシアルに。その興味好奇心に対する行動を、欠片でも自身に向けられなかったのかねぇ」

「……面目ない……」

「なんかもう、混乱してきた」


 次に頭を抱えたのは、ユーだった。ようやく体を起こしたコンダムは腰に手を当てているミールを警戒しながらも、ユーを間に挟むようにして腰を降ろした。


「えっと、コンダムって大天使なんだから、ルシアルの長なんだよね? 一応」

「一応はいらん。まぁ……ミールとは幼いころから共にあるからな、二人でいるときに堅苦しい態度を取られても気持ちが悪いだけだ」


 そう言って悪ガキのように笑うコンダムに釣られたのか、ミールも同じような笑みを浮かべていた。その間ではユーが眉を寄せて考え込み、不明瞭な低い声をあげている。


「ボクは、ボク達が裏の世界に行けるのはラポートのおかげだと思ってたんだけど、実際は彼女が持っている杖のおかげで行けてたってこと?」

「そうだな。簡単に説明すると、私はまだレガー様が集落にいらっしゃるころに、裏の世界と龍の呪力に興味を持ち、少し杖を拝借して宝石をいじったんだ。裏と表の世界を繋げるように、また呪力が外部のエネルギーで回復するように」

「その、呪力っていうのがわからないんだよね」


 そう言うユーに、二人は首をかしげながら視線を交わした。


「……まぁ、とりあえず、生きている上で必要なもの。との認識でいいんじゃないスか?」

「そう、だな。詳しく説明するには、時間がないだろう。杖についている宝石が使った分だけの呪力を自身で回復するように構造を変えていたのだ。……まさかそれが、キチンと機能しているとは思いもしなかったがな!」

「興味本位でなんつーことをしますかね、ホント」


 白々とした視線に乾いた笑い声をあげ、コンダムは頭を掻いた。

 それも少しの間で、真面目な表情に戻るとユーの顔を覗き込むように視線を合わせた。


「つかぬ事を訊ねる。魔界の封印の鍵であり、門であるお前がこちらに来て、向こうは大丈夫なのか」

「きみの甥っ子に任せて来たよ」


 今度は、二人が固まる番だった。目を点にしたまま互いに顔を見合わせている。


「……あんた、兄弟いたの?」


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