8-1
表の世界で上空に向かい、ユーは深く息を吐き出すと両手にクロウを構えた。裏世界では昼だったのにこちらでは間もなく陽が落ちてしまう時間の様で、周囲に気を向ける。
「癪だが、今は少しの情報もありがたいんでね」
もし、サーが言ったことが本当ならば、この国のどこかに魔界へ通じている扉があるはずだ。自分たちが表の世界に来るたびに、魔界の住人を数十、多い時では数百単位で消しているはずなのに、一向に数が減らないのはそのせいだろう。
「ならその扉、探し出してやる……!」
果たしてクロウだけで、魔界の住人と戦えるだろうか。いざとなった時には眼をわずかにでも開き、マトゥエを出すほか、ないかもしれない
そう思いながらもユーは、竜の国の空を翔けた。
日が沈み闇夜が訪れると、やはりそれらは現れた。その数にユーは目を見開き、歪んだ笑みを浮かべてしまう。
「あぁ、そう! こいつだけで対処しようと思った……オレがバカだったわけか!」
これまで、ヴェント達と表の世界に物の調達へ来ていた時と数が違った。
それはあの時、コンダムが繰ったビットを彷彿させた。一体一体の力はさほどなくても、空を埋めるほどの数がいればどうなるか。
それは、自身が良く知っている。
ユーは躊躇わず眼を開き、中からマトゥエを引っ張り出した。見たくもない姿が出て来る前に、目の大きさをマトゥエが扱える程度に小さくする。
「掌ほどの大きさが、限界か。これを維持しながらの戦闘……やってやる!」
目的を果たすためにも、奴に屈さないためにも。
ユーは魔界の住人の群れへと、突進していった。
一振りで十を微塵にし、二振りで二十をつぶし。全ての攻撃を受け流すことは出来なくても、ユーは止まることはなかった。体に新たな傷を作り、治りきらない傷を開きながらも、翼を動かす。
「どこかにあるはずなんだ、どこかに……」
「ユー!」
背後から聞こえた声に、目を丸くして顔を向けた。直後、視覚にいたのだろう魔界の住人が棒に体を貫かれ、粉と消えていくのが見える。
「コ、コン! どうしてここにいるんだ!」
「ユー、ユー大丈夫?」
棒を構えながら自身と背合わせになったコンに、ユーはマトゥエを正面に構えながら眉間にしわを寄せた。後ろを見ることは出来ないが、触れている背で、彼が全力で飛んで来たことは解る。
「ったく、ライトニア達には言って来たのか?」
「ユーだって、誰にも言わないで一人で来たくせに!」
心配して言ってみれば反対に怒鳴られてしまい、何も言い返せずに苦い笑みを浮かべるしかなかった。自分たちを取り囲む魔物の数は、確実に減っている。
「とりあえずは、ここを抜けないとな!」
「うん! 早くやっつけちゃおう!」
肩越しに互いの顔をチラと見つめ、口の端を吊り上げると。
二人は同時に武器を振り上げていた。




