7-1
「ユー、表の世界はどうなってるの?」
「随分と、荒らされてるよ。……どうにか手を打たないといけない」
コンは姿をユーそっくりに変え、棒を手にしていた。ユーはクロウを両手に構えて彼と鍔迫り合いをしている、三年前の自分の姿とこうして対峙するのは、何となく妙な気分だった。
「ね、ね。なんであの大きなハンマーを使わないの? ユーが得意な武器って、あれじゃないの?」
「今は、眼を開きたくないんだ」
コンを弾きながら一足で距離を詰め、ユーはクロウを高く振り上げた。コンはそれをけん制しようと、棒を突き出す。
「あれが扉だからね」
「ふぅん……わ!」
「はい、勝負あり!」
ユーは振り上げていなかった方のクロウを、下方の死角から棒をかすめ取るようにして振り上げた。全く見えていなかったのだろうコンは棒をあっさりと弾き飛ばされ、目を丸くしている。
それでもすぐに満面の笑みを浮かべ、加減なくユーに抱き着いて行った。
「やっぱりユーと遊ぶの楽しい!」
「ありがとう、でいいのかな。そろそろ戻ろう? ジューメ達も話を聞き終えているだろうし、アンス達はご飯の支度をしてるだろうし」
「はーい、お手伝いに行くー!」
元気がいい返事と共に大きく手を上げ、体をよじ登ってくるコンのことを支えながら。ユーは歩き始めるのだった。
夕食を取り終えた後、ユー、ヴェント、アンスの三人はジューメとサデルの話を待った。二人は一度視線を交わし、うなずく。
「で、過去の戦いはどうだったの?」
「……正直に言うと、ほとんど情報は得られなかった」
「え?」
肩を落としているジューメの頭をポンポンと叩き、サデルが言葉をつづけた。
「ブリスト、サドリア、マリアナ、ソーリスの四頭は幼かったために戦いに参加させてもらえず、ライトニアも……ダリエスが魔界の門を封印している時には、ほとんど意識がなかったらしいんだ。あいつ自身、まだ龍としては未熟だったころの話らしくて」
「まぁ、最低わかったのは、昔はもっと龍がいたから奴らと戦う手段は今以上にあったということ。そして呪力、この呪力っていうのが何なのかは、どうにもうまい説明を貰えなかったんだが。呪力が強い闇の竜、ダリエスがいたから魔界の扉が封印できた。ということかな」
二人の言葉に、三人は目を伏せてしまった。そんなユー達にサデルは苦い表情を浮かべ、三人の頭を纏めて胸元に寄せる。
「昔は昔、今は今だ。時間はかかるかもしれないが、方法を探していこう」
「……そうだね。前だって、ボク達は何もわからない状態で斑点のことを調べられたんだ。やれるよ!」
ヴェントが言うと、ユーがわずかに反応した。それに首をかしげるよう、アンスが顔を向ける。
「ユーさん?」
「どうしたの?」
「あ……ううん、なんでもないよ」
薄く微笑み、ユーはサデルから離れた。そのまま立ち上がると翼を広げる。
「ごめん、少し離れるね」
「もしかして、眼か」
鋭くも心配するような声でジューメが呼び止めると、ユーは振り返った。顔色は普段と比べてあまり良くないように見える。それでもユーは、笑っていた。
「大丈夫。さすがに、これが暴れそうなんならみんなに言うよ」
ユーは空に飛びあがると誰が呼び止める声も聞かないよう、森の中へ向かって行った。




