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朝になり、アンスはラポートの傍へ歩いた。十日の間にすっかりアンスに懐いてしまったコンも、ユーの姿のまま彼の背にしがみついている。
「ラポートさん、いつ表の世界と繋ぎましょう」
アンスの言葉に、彼女の顔からはスーッと血の気が引いていった。唇を戦慄かせ始めたラポートに慌て、アンスは彼女の背をなでる。
「ど、どうしたのです?」
「……言うの、忘れてた……裏の世界の十日は、表の世界の、三日とちょっとなの……!」
泣き出しそうなラポートに、アンスも口を閉ざしてしまった。
確かに以前、裏の世界は表の世界に比べて時の流れが速いとは聞いていたが、どれくらい違うのかは、聞いていない。
「ど、どうしょう! どうしたら!」
「とりあえず一度、繋いでみましょう。もしかしたら彼らは、ルシアルの里に、大天使の間にいるかもしれない。繋いでみて彼らがいなければ……探します」
ラポートは小さく頷き、杖を力一杯に握り締めた。彼女が目を閉じると地面が光り始め、アンスは思わず目を逸らす。
しばらくして光りが止み、恐る恐る視線を戻すと、そこには四人が立っていた。
「あぁ! みなさん!」
「アンス、ラポート! こっちは大丈夫だった?」
「これだけありゃあ、ある程度は持つだろ」
ユー、ヴェント、ジューメが口々に言い、アンスは三人に駆け寄るときつく抱きついた。ジューメは震えている小さな手に、そっと手を乗せてやる。
「よかった、みなさん、ご無事で……。それにこちらの十日がそちらの三日だと、なぜわかったのです?」
「あー、それは完全に、このおっさんの勘が成せた業だな」
ジューメがサデルを指さし、アンスが顔を向けると、何かを放り投げられた。アンスは慌ててそれを受け止め、歯を見せて笑うサデルを見つめる。
「ご苦労さん。それでも食って、元気をつけな」
「さ、サデルさん?」
「そいつはマハトの実、通称力の実だ。栄養分も水分も申し訳ない挙句、保存できる期間も長いから旅や緊急事態の時の、格好の食料になる」
大きさは、リンゴとあまり変わらないほどだった。放たれたマハトの実と放ったサデルを交互に見ていると、それを食べるよう勧められる。
「お前、まともにメシを食ってない顔をしてるぜ。重大任務を任された報酬だ、食べろよ」
戸惑いながらも、アンスは一口、かじった。
それに胃が刺激され、無言のままに食べ進めてしまう。サデルはそれを見て優しく微笑み、三人も互いを見合わせて笑みを浮かべた。
「とりあえずこれを分けてしまおう、ラポート、今度はいつ表の世界に行けるかな」
「……十分に休まりましたから、こちらの世界で五日に一度は行けるでしょう。えぇっと、ですので……表の世界で……」
「ま、約二日だな」
袋を肩に担ぎながら、ジューメはユーとサデルを見た。ヴェントも二人が持つ袋を手にし、手伝うよう、コンも両手で荷物を抱えあげる。
「アンス、二人の治療をお願いしてもいい?」
「えぇ、もちろんですよ。道具はこちらにあります、どうぞ」
ユーとサデルはアンスに連れられてその場を離れ、ジューメとヴェントは、コンとラポートに続くようみんなの元へと向かうのだった。




