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竜の国 ~未来のために~  作者: 夢野 幸
第五章 親
17/59

5-3

 表の世界に来て、三日が経った頃。

 サデルとヴェントは風を使って連絡を取り合い、一度ルシアルに集まることにした。それぞれは袋を持てるだけ抱えており、見た目の違いにジューメとヴェントは目を見開く。


「よ、そっちは無事みたいだなー。よかったよかった!」

「よかった、って。お前らどうしたんだ、怪我だらけじゃないか!」


 サデルとユーは、打撲傷や擦過傷さっかしょう、切り傷にまみれていた。ヴェントは荷物を落とすように地面に置いてユーに駆け寄り、ジューメもサデルに近寄る。目を細め、その傷を見ながらも、上着のポケットから軟膏を取り出した。


「ユー、大丈夫? なにがあったの?」

「……この三日、オレ達の前には、ほとんど魔界の住人は現れなかった。お前たちに集中していたのか」


 静かに問うジューメに、ユーは申し訳なさそうに眉を寄せながらサデルを見上げた。彼はそれにキョトンと首をかしげ、歯を見せて笑い、見上げてくる頭をなでまわす。


「なに、悪いな。お前たちの獲物を取っちまって」

「眼を、狙って、ね。でもヴェント達が平気そうで、よかったよ」

「よくねぇだろ」


 口の端を緩く上げているユーの頭を、ジューメは間髪入れずに小突いた。渋い表情をしながら腕を組み、小さくため息をつく。


「一緒に行動していればよかったか……」

「何を言ってんだ、時間の無駄だろ。今日はとりあえず現状報告と、体の休息だ」


 ジロリと睨んでくるサデルに、ジューメは思わず視線を逸らした。なおも紫色の瞳が、ジットリと見つめてくるのを肌で感じる。


「さぁて、ジューメ。なんでも屋として教えたことを言ってみようか?」

「えー……。行動は迅速に、依頼は内容を考えて」

「バッカ野郎! 一番初めに教えたのは、休む時には休む。だったろうが! このガキっ!」


 拳骨を脳天に食らっているジューメを横目にヴェントを見てみると、目の下にクマが出来ていた。ユーが見ていることに気づいたのだろう、彼は目を擦りながら苦笑する。


「あはは、ジューメったら、本当に怒られてるや」

「あんまり寝てないの? 大丈夫?」

「平気だよ。こっちには全然、魔界の奴は出てないんだもん。その分、集められるものは集めてきたよ」


 と、ヴェントは袋の口を開いた。中にはロープやナイフ、短剣、薬草、砥石。毛布や大きめの器が数個に衣類。

 そして、草の茎も入っていた。


「あ、それこっちでも集めた」

「ネロの茎って呼ばれてるらしいよ。ジューメが持ってる袋の半分以上はこれ、残りには木の実や干し肉、干し魚が入ってるよ」

「ボクが持ってる袋も、半分はこれ。あとは同じように干し肉に魚の干物、内臓の塩漬けに海水、度が高いお酒」

「ほら、そっちは確認を終えたみたいだな。チビ達はもう寝て、オレとこいつで見張りはするよ。特にヴェント! ジューメに付き合ってほとんど寝てないみたいだからな。何も気を張らないで、ちゃんと休めよ」


 ビッと指を突き付けるように言うサデルに、ユーとヴェントは苦笑した。

 四人は大天使の間に移動すると、ジューメとサデルは扉へ。ユーとヴェントは隅の方で壁に寄りかかると、目を閉じるのだった。





 日が落ちて夜を迎えるころ、部屋に広がった何かの力に、二人は同時に目を覚ました。得物に手を伸ばしながらも、魔界の力とは違うそれに、近くに来ていたらしいジューメとサデルを見上げる。


「異世界での十日が、こちらでは三日と半分くらい、か」

「これから物を調達するときには、気をつけないといけないな」


 と、荷物を漂う光の中に放り込みながら、四人は顔を見合わせた。自分たちも光の中に入りながら、眉を寄せる。


「さぁて、これでどれだけ持つか……」

「怖いことを言わないでよ、サデル」

「いつでも、最悪の時のことを考えておかないとな?」

「嘘つけ。お前は大概、最高の時のことしか考えてないだろうが」


 歯を見せながら笑っているサデルを、ジューメは膝で軽く小突き。

 光に包まれていくのを感じながら四人は目を閉じたのだった。

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