表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の国 ~未来のために~  作者: 夢野 幸
第三章 仇成した者
10/59

3-2

 話をしているうちに、ようやく心臓が落ち着いてきた。周囲もそうだったのだろう、長く息を漏らしている者もいる。

 それから、その静寂を最初に破ったのは、ライトニアだった。


「ダリエス、彼のことだが。彼は先日亡くなった」


 ライトニアの言葉に四頭は再び、同時に吼えていた。それに竜人たちはまた耳を塞ぐが、ついには気を失うものまで現れてしまう。ユーもどうにか耳を押さえながら、ライトニアの言葉には耳を傾けていた。


「待て、待て、待て! 彼は寿命をまっとうしたのだ、別に魔界の者によって殺されたわけではない!」

「ならばライトニア、お前とその子龍でこの世界を支えていると、そう言うことなのだな!」


 ブリストはライトニアの腕の中にいるコンに、グイと顔を近づけた。それにコンはおろおろと視線を泳がせ、腕の中を抜けるとユーの傍に来る。不安そうに頭を押し付けてくる彼に、ユーはふと笑みを漏らしながら、体を両手で包んでやった。


「いや、残念だがその子にはまだ、それだけの呪力はない。私が一人で支えている」

「呪力がない、だと! ダリエスの子ではないのか、そんなことがあってたまるか!」

「彼の子の、子だ」

「ならば、彼の子はどこにいる!」


 ソーリス参戦するよう、ブリストに勝る声で怒鳴った。それにうんざりとした表情を浮かべ始めるライトニアに、マリアナがどうにかソーリスをなだめる。


「昔っからだ、お前たちの世話をしていると必要以上の体力を使う。……彼の子はコンを産んだ直後に、亡くなった。子を成すのが早すぎ、呪力が枯渇したのだ」

「だが、ダリエスが亡くなったとなれば、封印は今どうなっている? 魔界の者はなぜ、我らが国に雪崩れ込んで来られた?」


 マリアナが比較的落ち着いた、それでも怒りを感じられる声で問うた。ライトニアは竜人で言うところの眉間にしわを寄せながら、首を振る。


「まだ、封印は続いているはずだ。彼の呪力の強さはお前たちもよく知っているだろう、過去には一人で、我々を奴らから守ってくれた」

「あぁ、よく知っているし、つい昨日の事のようによく覚えているさ。だからこそこうして、何が起きているのかを訊ねている」

「表では何が起きているのだ、こちらからそちらの事情を知るには限界があるんだぞ」

「お前の呪力が小さいからだろう」

「少なくとも、貴様よりは持っているわ」


 ブリストが鼻を鳴らして笑うと、ライトニアは即座に切り返した。それからユーに視線を向け、それに気づいたのだろう、ユーは顔を上げる。


「ごめんなさい、ボクの力が、至らなかったばかりに」

「ウィユ、きみを責めているのではない。私はただ、何が起きているのかを知りたいのだ」


 と、ライトニアはユーに、そっと口を近づけた。ユーはそんな龍に緩々と手を伸ばし、寄りかかりながらも首を振る。


「解りません、突然で……ごめんなさい、少し考えさせて……」

「オスキュリートの者よ、ダリエスに認められた血族よ。お前が自分を責める必要は、一切ないのだぞ。お前たちが重い任を背負わされているのは、良く解っている」


 サドリアが諭すように言い、彼もまた、ライトニアと同じようにユーへ顔を寄せた。その光景に竜人たちは、唖然と彼を見つめている。そんな竜人たちを見てか、ブリストとソーリスはどこか愉快そうに笑った。


「今宵はもう遅い、何もかもを忘れて眠れ」

「何人か、見張りを立ててた方がいいんじゃねぇの?」


 サデルが言うと、龍たちは彼に視線を落とした。互いにチラと視線を合わせ、うなずく。


「お前たちは休むといい、我々が見ていよう」

「何をするにしても、行動を起こすのは夜が明けてからだ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ