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プロローグ
「お、久しぶりじゃないか!」
「あ、英雄ユー! 最近見なかったじゃない!」
「あ、え、あ……その、お久しぶり、ですね」
一つの集落に入るたび一斉に声を掛けられ、ユーは手紙が入っている、よく馴染んでいるバッグを握り締めて後ずさった。伸びてくる手から逃げるように手紙を配ってしまい、サッサと集落を後にする。
それを四度繰り返し、バッグの中身を空っぽにしてから向かったのは、ヴェントとよく一緒に遊んだ崖だった。
「ユー! 今日はいつもより、遅かったね?」
「まぁね。まだ英雄扱いだもの、配達するのも一苦労だし、逃げて回るので必死だよ」
立ち上がったヴェントと、そこに腰を降ろして本を読んでいるアンスの姿を目に写しながら。ユーは苦い表情で微笑むのだった。