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破戒の聖音  作者: 乙丑
13/24

3・血吸蟲《アスルデージ》 ――2


 宿屋から抜け出した麻姫は、できるだけ人が多く、明るく賑わった場所へと走っていた。

 どこの世界、国でもそうだとは思うが、大きな町ほど市場に人が集りやすい。

 アッビシチの町も例外ではなく、中心にある市場に近付くほど、人の通りが多くなっていく。

「――あった」

 並んでいるお店の中から、カンテラが売っている場所を見つけると、麻姫は呼吸を整えてから、店の中に入った。目的地である『アティウィシャ』が森の中ということを考え、持っていない照明器具を買うためである。

「いらっしゃい」

 と、店の主人が入ってきた麻姫に声をかける。

「あの、カンテラはありますか?」

「カンテラかい? それならここにあるよ」

 主人は商品の陣列棚から、小さなカンテラを手に取った。

「これ凄いんだよ。太陽の光で内臓蓄電器バッテリーが充電できて、こんなに小さいのに連続五日という低燃費。約十二 全光束ルーテン光度カンデラは約百ボルトという……」

「いや、すぐに使えるやつがいいです。アルコールランプみたいな」

 主人の興奮気味な商品説明に若干ひきながら、麻姫はそうお願いした。

「そうかい。それじゃぁこれはどうだ?」

 そう云って主人が取り出したのは、先ほどの小さなカンテラを一回り大きくしたようなものだった。ガラス瓶の中に小さなアルコールランプが入っている。

「いくらくらいですか?」

「こいつかい? こいつは五百アルタだ」

 主人がそう言うと、麻姫はバックから硬貨の入った布袋を取り出したのだが、その硬貨の大きさに、麻姫は首をかしげた。

『どうして、五百円玉とか十円玉くらいの大きさなんでしょうか?』

「おや、もしかしてお客さん旅の人かい?」

 主人にそう聞かれ、麻姫は答えるように頷いた。

「だったら、その大きいやつが五百アルタ。小さいのが一アルタだ」

 主人は、布袋から五百円玉くらいの大きさと、一円玉ほどの大きさをした硬貨を取り出した。

「それじゃぁ、これが五アルタ、十アルタ、五十アルタ、百アルタってことですか?」

 麻姫は布袋から、硬貨を四枚取り出し、主人に尋ねる。

「おう、そうそう。お客さんもしかして知ってた?」

 主人は小さく笑みを浮かべた。知っているもなにも、それら四枚の大きさが、そのまま日本の硬貨と同じ大きさだったからである。

「それじゃぁ、五百アルタいただこうか? 燃料はいるかい?」

「ください。そっちはいくらですか?」

「五十アルタだ」

 麻姫は、五十円玉くらいの大きさをした硬貨を取り出し、主人に渡した。

「そういえば、アティウィシャという村はどちらの方角に?」

「アティウィシャかい? 西に大きな森があるんだ。その中心にある小さな村がそうだよ」

 麻姫はそれを聞くと、頭を下げ、店を出て行った。

「あ、でもあの森は……、ありゃぁ、行っちまったか?」

 主人は頭をかきながら、店番を再開した。


「見つかったか?」

 険しい表情を浮かべたインドラーニーが、ヴァイシュナヴィーに声をかける。

「いいえ、見付からないわ」

「これだけ人が多いと、探すのも一苦労だな」

 賑わう人込みを、インドラーニーは憎たらしく睨んだ。

「そう遠くには行っていないはずだし、目的地はアティウィシャだから、そちらに向かったのかも」

「しかし、麻姫さまはたしかカンテラを持っていなかったはず――」

 インドラーニーは、自分でそう云うや、ハッとした。

「この近くにカンテラを売っている場所があるはずだ」

 そう云うや、インドラーニーは、近くにある店に目をやった。「あそこの主人に訊いてみよう」

 店に入ると、ヴァイシュナヴィーがカウンターに立っている主人に目をやった。

「ここにこれくらいの女の子が来ませんでしたか?」

 ヴァイシュナヴィーは、ちょうど百六十センチあるかないかくらいの高さに手を置いた。

「ああ、それくらいの子かい? それだったらだいたい五、六分くらい前に、慌てた様子でカンテラを買ってったよ」

 それを聞くや、インドラーニーが身を乗り出した。「それは本当か?」

 そう訊かれ、主人は頷いた。

「私たちも後を負うぞっ!」

 インドラーニーとヴァイシュナヴィーは、急ぎ、アティウィシャがある『アティガムニヤ』へと走った。


 『アティガムニヤ』は、来るものを拒み、森の中心にあるアティウィシャの村を訪れるもの以外は決して入れないと云われ、近隣にある町や村の人々からは『死の森』と名付けられるほどであった。

 それを露知らず、麻姫はカンテラに火をつけた。目の前にほんわりとした暖かい光が放たれていく。

 光があるとはいえ、静寂が周りを包んでおり、風によって揺れる周りの木々のざわめきがおぞましく聞こえてくる。

『臆病の自火じかめられている場合じゃないですね。早くしないと苅谷くんが』

 麻姫は呼吸を整えると、意を決して、森の中へと入っていった。できるだけ人が通りそうな、広く整備された道を探しながら歩いていく。

 すると、うしろの方から足跡が聞こえ、麻姫はそちらへと光を放った。――が、なにもなく、麻姫は首をかしげる。

 先に進んでいくと、また音が聞こえ、そちらに光を放ったが、なにもない。

 麻姫は、ゆっくりと光を上へと向けた。その一瞬、細長いなにかが影となって現れる。

『まさか……ヘビ?』

 なにかの本で読んだことがある。野生動物は火を恐れない。つまりは光を持っていることで、自分の居場所を教えているような――。

 大きな音が聞こえるや否や、カンテラの火を消し、その場に置くと、麻姫は走った。

『あんなのっ! あんな大きなヘビ見たことない!』

 麻姫は必死に走った。十メートルはあるであろう大蛇から――。

 走れば走るほど、まるで森が麻姫を行かせまいと細長くなっていく。人が通りそうな道から逸れてしまったからだ。

 それとは対照的に、大蛇は体を器用にくねらせながら木の間をすりぬけ、獲物を狙っている。

「あっ!」

 地面にはみでた根っこに足を取られ、麻姫は転倒してしまった。

 そして振り返ったその視界の先に、大蛇の禍々しい目の光がギラリと、麻姫を睨むように光った。

「キシャァアアアアアアアッ!」

 大蛇は口を大きく開いた。牙からは液体が流れ落ちている。

「や、いやぁっ!」

 麻姫は体を震わせ、大蛇から逃げるように後退りしていく。背中に冷たい感触が走った。

 大蛇は、足が竦んだ麻姫を食い出した。牙が麻姫の太腿を突き刺さる。

「あっ! がはぁっ! あぁっ!」

 悲鳴は聞こえなくなり、大蛇は、麻姫を飲み込んだ。


「なにをしているの? マナサー」

 上空から声が聞こえ、大蛇がそちらに目をやった。その一瞬。大蛇のお腹が一気に、切り開かれていく。

 その亡骸の中から、胃液で服が溶け、一糸纏わぬ姿をした麻姫の姿が現れる。

「またあなたは、関係のない人を食べてしまったわけね」

 剣を持った女性が麻姫を大蛇の体内から救い出すと、険しい表情を浮かべながら、大蛇を見下ろしながら、手を翳した。

 すると、先ほど切られた傷が次第に消えていき、大蛇は息を吹き返す。

 起き上がった大蛇は光り輝き、人の姿へと変えていった。「申し訳ございません。ですが、こんな夜更けに人が来ようなど」

「お前の言い分はわかる。しかしこの子はもしかすると、父上が云っていた異世界からの来訪者の一人かもしれんぞ」

 女性は、抱きかかえた麻姫を、まるで母親が子供を見るような表情で見つめた。

「――急いで傷の手当てをしなければな。それと、この事をお父上とブラフマーニーに連絡しなければ」


 ……痛みが全身に走った。その衝撃で、目が覚めた麻姫は、勢いよく体を起こした。

「あいっつっ! ――さむっ?」

 麻姫は、痛みとともに感じた冷気で体を震わせる。そして自分が服どころか下着すら身に纏っていないことに気付いたのは、その一瞬後だった。

「おや、もう起きたのかい? さすが……といいたいところだな」

 部屋の奥にあるドアが開き、男性が入ってきた。二十歳くらいの青年だ。身窄みすぼらしい白衣を纏っており、無精髭を生やしている。

 麻姫は逃げるように、体を窄めた。

「そんなに怖がらなくてもいい。わたしはこの村の医者だ」

 青年はケラケラと、酒を飲みながら云った。麻姫はポカンと、呆気に取られたような表情で青年を睨む。

「さてさて、お嬢ちゃん。どうしてあんな夜更けにこの森に入ろうとしたんだ?」

「ここになんでも治せる医者がいると聞いて」

「うむうむ、たしかにおりゃぁなんでも治せるよ。知っている医療ならなんでもねぇ」

 青年の言葉に、麻姫は一瞬だけ安堵の表情を浮かべるが、すぐに険しい表情に戻す。

「知っていることならなんでも……」

「ああ、そうさ。いくらなんでも、知らない病気を治せるとでも思ったのかい? おりゃぁ神様じゃないんだ、不治の病が治せるわけがないだろ?」

 そう云われ、麻姫は小さく頷いた。たしかに未知の病を治せるのは神くらいである。

「あの、この村にアガダという医者がいると聞いて」

「アガダ? そりゃぁおれのことだっと――」

 アガダと名乗る青年は、飲んでいたウイスキーのビンをテーブルの上に置き、麻姫に近付いた。「な、なんですか?」

「うんうん、ちょっとみせてもらおうか?」

 言うが早く、アガダは麻姫が体に巻きつけていたシーツをはらった。

「きゃあああああああああああああああっ!」

「こら、わめくなや! こっちはお前さんみたいなガキに興味はねぇよ。ジッとしとかないと毒が取れんし、体に回るぞ」

 それを聞くや、麻姫は体を硬直させる。「い、いま――毒って?」

「ああ、あの馬鹿蛇がお前さんをこの森を燃やそうとしているやつと勘違いしたようなんじゃわいな。ほら、最近ここらで血吸蟲ちゅー魔物が出るって話があるじゃろ?」

 麻姫は、アガダの言葉に聞き覚えがあった。宿屋でインドラーニーが血吸蟲のことを話していたからである。

「こっちは森を燃やされると商売上がったりなんじゃがなぁ」

 アガダはそう言うと、懐に忍ばせていた瓶のふたを開けた。

 そしてピンセットで、その中身を取り出す。ナメクジのような、ヌメッとした虫である。

「それって、もしかして――ヒル?」

「おやぁ? こいつのこと知ってるのかい? まぁ、こっちじゃぁ血吸蟲ってことにしておるがな」

 アガダは血吸蟲を麻姫の太腿に二、三匹放した。

 血吸蟲は太腿の上を徘徊しながら、蛇に噛まれた傷口の方へと近付く。

 そして、傷口のところで止まった。

 麻姫は、なにをされようとしているのか、固唾を飲んで見守っていた。

「ほい終了」

 アガダの言葉に、麻姫は呆然とする。「えっ? もう終わり?」

「――そうじゃよ?」

「いやだって、噛まれたとかそんな痛みがまったく」

 麻姫は震えた表情で云った。

「それなら傷のところを見てみるといい」

 そう云われ、麻姫は蛇に噛まれた場所を見てみると、血が溢れんばかりに出ていた。

「これが血吸蟲に噛まれた証拠じゃよ。こいつは噛んだことすら気付かせないし、どういうわけか悪い血しか吸わんのじゃいよ。痛みがないから毒を食らった子供にも安全なんじゃよ。ほら、子供は注射嫌いじゃろ?」

 アガダの云う通り、血吸蟲の噛む力は微弱で、噛まれた人はそれすら気付かない。

 そのことから、毒抜きに適しているのである。

 ただし、血を固まりにくくする成分を出しながら吸い付くため、、一定の時間は血が止まらなくなってしまう。

「血が止まるまでは安静にな」

 アガダは、もうひとつの傷口にも血吸蟲を放し、同じように血を吸わせた。

 見ると、最初細かった血吸蟲が、血を吸っていくうちに膨らんでいくのがわかる。

「お前さん、こいつらに感謝しとけ、身を呈して悪い血を抜き取ってくれるんじゃからな」

 アガダは、茶色く色褪せたビンの中に血吸蟲を入れていく。

「それをどうするんですか?」

「土に還すのさ」

 そう云ったアガダの表情は、感謝と哀れみに満ちていたのを、麻姫は不思議に思った。


「あら、気付いたみたいね」

 部屋のドアが開き、看護士が着るような服を身に纏っている女性が入ってきた。

「マナサーか。今毒抜きが終わったところだ」

 マナサーと呼ばれた女性は、ゆっくりと麻姫を見やるや、「ごめんなさい」

 と、頭を下げた。

 突然のことで、麻姫はあたふたとする。

「まさか、大切な恋人を助けるために、あんな夜更けにこの森に来るなんて思わなくて」

「えっ? へっ?」

 麻姫は困惑する。どうしてそんなことになるのか。

「マナサー、あなたまた勘違いしてるわよ?」

 開いたドアから声が聞こえ、麻姫たちはそちらを見た。

 車椅子の音が部屋に近付いてくる。「あっ……」

 麻姫は声をあげた。自分の目の前に、烏羽色をした綺麗な髪の女性が部屋に入ってきたのだ。

 それは、アワクルトの王の間に飾られていた女性の肖像画と瓜二つであった。

「あなたが、父上の云っていた異世界からの来訪者ですね?」

 落ち着いた表情でそう聞かれ、麻姫は答えるように頷いた。

「単身ここへ来たことに対しては褒めましょう。ですが危険なことをして、もしあなたが命を落としていたら、友人はどう思いますか?」

 女性は、まるで子供の悪戯を叱るような目と口調で、麻姫に云った。

「すみません」

 麻姫はそう云わざるおえなかった。目の前の女性の云う通りなのだ。

 しかし、それだけではない。まるでそう云わされているような、そんな威圧感が女性にはあった。

 麻姫は目の前の女性を見つめた。自分より同じくらいか、年がひとつ上の印象がある。

「しかし、あなたが無事でなによりです。マナサー、彼女になにか着せるものを、アガダは部屋から出て行ってください」

 女性はアガダをキッと睨みつけた。「おれはここの医者なんだがな?」

「医者である以前に、あなたは男でしょ?」

 女性に睨まれ、アガダはあたふたと部屋を出ていた。


「――えっ?」

 マナサーが用意した服に着替えながら、麻姫は驚愕の表情を浮かべる。

「わたしはアワクルトの国を治めているシヴァ王が一子、ドゥルガーと申します」

 目の前の、車椅子に乗った女性がそう云うや、深々と頭を下げる。その仕草は乱れず優雅であった。

「で、でもそれじゃぁ、どうしてわたしたちは彼女たちに呼ばれたんでしょうか?」

「この国でドゥルガーさまが生きておられることを知っているのは、父上であるシヴァ王さまと、七賢人が一人、ブラフマーニー。そして双子の妹君であられるカーリーさまだけなのです」

 マナサーがそう言うと、ドゥルガーは小さく頷いた。

「ほかの国でも、信頼できるもの以外に私が生きているということを知っているのは極僅かしかいません。これもホウェーと名乗る男を騙すためです。城を守っている残りの六人には辛い思いをさせてしまっていますが」

 ドゥルガーは表情を暗くし、顔を俯かせる。

「でも、どうして生きているはずのあなたを呼び出したのに、わたしたちが?」

「それはおそらく、お前さんと一緒に来たという少年じゃな」

 アガダの言葉に麻姫は首をかしげる。「苅谷くんが?」

「アガダ、そのことは内密に」

 ドゥルガーにそう云われ、アガダは頭を下げる。

「祈祷師は処女の血を媒体として、魔神を復活させていました。わたしはまだやつがマヒシャともう一人の魔神を復活させていることをブラフマーニーから聞き、急ぎやつを倒そうとしたのですが」

「逆に返り討ちにあってしまった――というわけですね?」

 麻姫の言葉を答えるように、ドゥルガーは否定するわけでもなく、そのことを認めるかのように頷いた。

「私の妹であるカーリーが時を戻してくれたことで、どうにか一命を取り留めましたが」

 そう云うや、ドゥルガーは服の裾を捲くった。

 本来なら見えているはずの手首が見当たらない。

「それは……」

「やつと……、ラクタビージャという魔神と戦った時に、傷は命に関わる部分だけを元に戻しましたが、緊急であったため、腕は元には戻せませんでした」

 ラクタビージャという言葉に、麻姫は首をかしげる。

「やつは自分の体が傷付けば、傷付くだけ新たな魔神を生み出すことができる。かつてカーリーがその血が地面に落ちる前に飲み、戦いを終わらせたと記述されています」

「それじゃぁ、もしかして――」

 麻姫は、真一がニシュンバを気にかけていた理由がわかった。

「祈祷師にとっては、シュンバ、ニシュンバの兄妹を復活させたのは徒に過ぎない。本当の目的は、ラクタビージャによって作られた魔神でこの国を滅ぼすこと」

「そのことをシヴァ王には?」

「伝えているはずなのですが、いまだに連絡がないのです。私直々にとも考えたのですが」

 ドゥルガーは言葉を止めた。死んでいることになっている自分が、シヴァ王以外の、信頼できる人以外の眼前に晒すのは、危険だからである。

「よし、準備ができた。急いで――」

 アガダが治療道具一式が入ったバックを肩に掛けようとした時、外から声が聞こえてきた。


「ここにアガダという医者はおらんか?」

 インドラーニーが険しい表情で叫んだ。

「インドラーニー……」

 麻姫が窓から顔を覗かせる。「これは麻姫さま、無事だったのですね?」

 インドラーニーの表情が、一瞬で凍りつく。

「そ、そこにおられるは、まさか……」

「ひさしぶりですね、インドラーニー」

 麻姫のうしろにいるドゥルガーが、優しく微笑む。

「い、生きておられたのですね」

 地面に膝を突いたインドラーニーはドゥルガーに頭を下げる。

おもてをあげなさいインドラーニー。この村の人たちはわたしを両手のないただの患者としか見ていません」

「ですが、一国の姫であるあなたを」

 インドラーニーは、ゆっくりと顔をあげた。

「お姉ちゃん、一緒に遊ぼ」

 病院の窓から、小さい子供が顔を覗かせる。

「いいわよ、なにして遊ぼうか?」

 ドゥルガーは、車椅子を引きながら、子供たちのところへと近付く。

「どうした? 急がなくては友人が危ないのだろ?」

 アガダが、麻姫に声をかける。「あ、はい」

 麻姫は、子供たちと楽しそうにお喋りをしているドゥルガーを見ながら、ふと真一のことを思い出した。

「あの人も、あんな表情してたな」


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