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5 捜索

 ルーヴとの思わぬ再会を果たし、さすがにヴェイも唖然としていた。妙な水が降ってきたと思ったら、今度は人が飛び降りてきて、魔獣を一刀の元に斬り捨ててしまったのだから。


「お前、なんだってここに・・・・・・・?」

「あの街から協力要請を受けていたんですが、アルシャインに先を越されてしまいましたね。まあ、ご無事で良かった」

「ああ・・・・・助かった、ルーヴ」


 と、ヴェイの背後で何かが倒れる音がした。振り向くと、それまでディークに支えられていたアシュレイが地面に倒れかけていた。激しく肩で息をしている。


「大丈夫か」


 ヴェイがアシュレイの傍に膝をつく。アシュレイは小さく頷いたが、顔色は悪い。


「あの魔獣の声は神経に影響を及ぼすようですね」


 ディークがそう呟く。と、ルーヴが進み出て、手にした小さな瓶を差し出した。


「これを」


 瓶の中には透明な水が入っていた。ヴェイがそれを受け取り、栓を取ってアシュレイに渡してやる。


 それを飲んだアシュレイの呼吸が正常に戻った。アシュレイが顔を上げ、驚いたようにルーヴを見やる。


「楽になったか?」

「はい・・・・有難う・・・・・」


 そう礼を言った瞬間、アシュレイはふっと倒れた。ディークが支える。アシュレイは相変わらず顔が真っ青だった。立ち上がろうとしたが、なぜか手足に力が入らない。ディークが傍に膝をつき、何か話している。それを見たルーヴが顎に手を当てた。


「・・・・原水のままでは少し強すぎたかな」

「あの水はなんだ? それに、なんでお前は奴が斬れた?」

「霊水ですよ。魔獣に効果があると分かったので・・・・・それも含め、お話したいことがありました。とりあえずまずは地上へ戻りましょう」

「それは俺たちも同じだ。お前に会いに行こうとしていた・・・・・と、それより、お前の口ぶりだと霊水を人に飲ませたのは初めてっぽいじゃないか。立ち上がれなくなるほど弱らせて、アシュレイの身の安全は保障してくれるのか」


 軽く睨まれたルーヴは肩をすくめ、頷いた。


「大丈夫ですよ。効力が魔獣の邪気に勝ったまでは良かったのですが、勝ちすぎてしまったようです。効果が切れれば、すぐ元に戻るでしょう」


 ディークが顔を上げ、ルーヴを見やった。


「もしかしてこの霊水は酒に近いんじゃないですか?」

「・・・・というより、酒そのものですよ? いえ、酒というよりも・・・・・葡萄酒やら麦酒やらに加工される前の、アルコールそのものと言いましょうか」


 ヴェイが額に手を当てた。


「おいこら、どこが『霊水』だ!?」

「酒というよりも、霊水と言ったほうが有難味が出るではないですか」

「どう責任とってくれるんだ!? そんなのを飲ませたらアシュレイの奴・・・・!」

「あの・・・・それはどういう?」


 ルーヴが首をかしげる。シルヴァスが口を出す。


「アシュレイは隠し味の料理酒でも酔っちまう奴なんだよ」

「・・・・す、すみません・・・・・」


 アシュレイが恥ずかしそうに俯いた。既にアシュレイは激しい目眩に襲われていた。きょとんとしていたルーヴは咳払いをした。


「・・・・・それは失礼」

「・・・・ふん、まあいい。戻ろうか」


 ヴェイが指示すると、階段を下りてきた帝国騎士の一団と鉢合わせた。


「ルーヴ、お前部下放ってひとりで飛び降りてきたのか」


 ルーヴは頭をかくと、部下に指示をした。


「・・・・・せっかく降りてきたが、すまない、すぐ上へ戻る。ゆっくりでいいから昇ってきてくれ」


 従順な騎士たちは不満を顔に出さず、頷いた。ディークがアシュレイを支えつつ階段を上る。


 ようやく外に出た頃、アシュレイはどうにか自分だけで歩けるようになっていた。


「もう平気、アシュレイ?」


 ユーリッドに問われたアシュレイは頷いた。


「ちょっとふらふらするけど、だいぶ良くなったよ」

「アシュレイって、自分で料理する時は料理酒使ってるわよね」


 セレニアが言う。アシュレイは困ったように笑った。


「料理酒入れた料理は、僕は絶対に食べないんだけどね・・・・・」


 ルーヴは一度空を見上げ、それから視線をヴェイに戻した。


「・・・・できれば、帝都でお話ししたいことなのですが、よろしいでしょうか」

「ああ、構わん。だがその前に、誰か使いをやって討伐できたことを知らせないとな」

「なら、私が行くべきですね」


 ディークがそう名乗り出たが、ヴェイは即座に首を振った。


「却下。お前がいないとルーヴの話が理解できん」

「私の話は通訳がないと理解不能ですか」


 ルーヴが腕を組む。ヴェイが「まあまあ」とルーヴを宥める。と、キーファが名乗り出た。


「じゃあ俺が行きましょう。どうせ聞いてもさっぱりですし」

「・・・・そんなに分かりにくいですか」


 ルーヴは不思議で仕方がないという面持ちで首を捻った。ヴェイは苦笑しつつキーファに頷いた。


「じゃあ頼む、キーファ。ただし、くれぐれも謝礼はもらうなよ」

「分かっています。では、帝都で」


 キーファがそう言い、踵を返した。


 ルーヴらとともにアルシャインは帝都へ行き、帝城の会議室のようなところに通された。いるのはルーヴと、ヴェイ、ディーク、アシュレイだけだ。


「さて・・・・そちらの話を先に伺いましょう」


 ルーヴが促し、ヴェイが頷いた。


「この3カ月というもの、魔獣はだいぶ大人しくなっていた。が・・・つい数日前にな、アシュレイがゼクトの気配を感じ取ったんだ。それも、今までのような感じではなく、何か困っているみたいだったと。それが何なのか分からないが、放っておくのもできないからな。アシュレイがだいたいのゼクトの居場所が分かるっていうから、ゼクトを探しに来たんだ」

「ゼクト・・・・・ですか。困っているとは、具体的にどういうことか・・・・・?」


 ルーヴがアシュレイに質問を向け、ヴェイも隣に座っているアシュレイに目を向けた。しかしアシュレイは半ばうとうととしており、まったく会話が耳に入っていなかった。


「・・・・・使い物にならんな。明日の昼ごろまではこんな調子かもしれん」

「・・・・・それほど酷い悪酔いとは知らず、申し訳ない」

「いや、いいさ。それで、お前に事を知らせようと思って帝都を目指し、あの街で依頼を受けた、というわけだ。俺たちはこれで終わり。そっちは?」


 ルーヴは頷き、腕を組んだ。


「あれから魔獣対策本部というものが置かれ、私はそこの主任になりました。その権限を使って色々と調べ回っていたんですが」

「おいおい、強権はやめた方が良いぞ」

「別に悪い意味では使っていません。大したことはわかりませんでしたしね。しかし、帝都の外で演習中魔獣の奇襲を受けた小隊の中のひとりが、迫りくる魔獣を攪乱するため苦し紛れに酒樽をぶちまけたところ、魔獣は逃走。手ごたえも増し、効果があるということが分かりました。まずそれが、説明しておきたかったことのひとつです」

「・・・・苦し紛れに酒樽をぶちまけるって、どういう神経だ? まあいい・・・・次は?」

「ここ最近、異常な魔獣が現れているんです。『人に変化する』とか、『口を利く』とか。つまり、先程倒したあの魔獣と同じ種類のものが、各地で目撃されているんです」


 ディークが眉をしかめた。


「・・・・・あんなのが大量にいたら、対処しきれませんね」

「はい。ですが、数は多くないようです。今のところ確認されている者で5体。内の一体は先程のもの、もう1体は私たちのほうで討伐しました。どれもあの酒・・・・いえ、霊水がなければ傷一つつけられなかった」

「同じものが、あと3体か・・・・・」


 ヴェイが唸った。「そこで」とルーヴがお約束のようにきりだした。


「帝国騎士だけでは、当然の如く苦戦しました。もう一度協力を要請したいのですが、請けていただけますか」

「ま、それが目的でもあったしな。引き受けよう」

「有難う御座います」


 ルーヴが頷いた。それからルーヴは顎に手を当てた。


「ただ・・・・・ひとつ考えたのですが、アシュレイはあの魔獣に対し攻撃ができましたよね。それは少なからずゼクトが関係しているのだと思うのですが」


 ヴェイに視線を送られたディークも頷く。


「それは確実だと私も思う」

「・・・・ならば、残りの3体を倒す前に、ゼクトを探した方が良いかもしれません。確か、ゼクトは魔獣の制御を怠っていると言っていたのでしょう? それが、アシュレイが気配を感じたことと関係あるのかもしれませんし」

「そうだな。まずはゼクト探しか。・・・・話が通じてくれればいいが」


 ヴェイはそう呟く。


「またお前も来てくれるのか?」


 ヴェイに問われたルーヴは顔をそむけつつ、ぼそっと尋ね返す。


「・・・・行ってはいけませんか」

「いいや、大歓迎だ。またよろしく頼む」

「こちらこそ」


 これで再びアルシャインはルーヴと共闘することとなり、「ゼクトを探し、原因を突き止めつつ魔獣を討伐する」という方針に決定した。


 翌日、ルーヴは昨日使ったものと同じ霊水が入った瓶を、ヴェイ、ディーク、アシュレイ、夜の内に到着したキーファにそれぞれ預けた。


「人の言葉を話す魔獣に出くわしたら、すぐ使ってください。替えなら充分持っていますし、気にしなくても良いです。それと・・・・」


 ルーヴは背後を振り返ると、部下の騎士が大きなバケツを持ってきた。


「武器を霊水で清めましょう。通常の魔獣も倒しやすくなります」

「剣が錆びる」


 即座にヴェイが言ったが、ルーヴは苦笑して首を振った。


「私も試して大丈夫でしたから。何せ、霊水ですし」

「いや、だから酒だろ? その有難い水をバケツで持ってくるのはどうなんだ、おい」

「他に容器がなかったんです」


 ヴェイは肩をすくめ、飛燕を抜いた。それを豪快にバケツの中に沈める。それを見てアシュレイとキーファも剣を抜き、メンバーも続いた。


「あたし、やりようがないのよねえ」


 セレニアが呟いた。セレニアだけでなく、符術師ディークもやりようがない。ディークの術符はそれだけでも多少の魔力を秘めているが、使役する前はただの紙である。


 ユーリッドが銃を見つめた。


「僕はどうすればいいんだろ?」

「銃弾全部浸しちゃえば?」


 ユーリッドは唸りつつ、弾を取り出した。


 それが済むと、ヴェイとルーヴがほぼ同時にアシュレイを振り返った。息の合った反応を見て内心吹き出したアシュレイは、北を指差した。


「北です。だいぶ近い」

「北? 北にはバラクリフ王廟のある森が・・・・」


 ルーヴが呟き、ヴェイが腕を組んだ。


「・・・・そうか、北の森だな。あそこにゼクトが封印されていたんだから」


 最北に長く深く広がる森。バラクリフ王廟よりもさらに北にある森は、一応このファル・アレイ帝国の国境となっている。が、地図上「その先はない」。北の森を抜けた先は秘境であり、何があるのか誰も知らない。何度も帝国は開拓隊を送りこんだが、どれも消息を絶った。人々は「世界の端」とも呼んでいる。


「北の森ですか・・・・・あそこは王廟近くの森と違い、一般人も立ち入らない。そしてとてつもなく深い。森の奥に何があるのか、抜けた先に何があるのか、見た者はいません」


 ルーヴはそう言うと、メンバーを振り返った。


「生きて帰れる保証はありませんよ。・・・・覚悟は良いですね」

「覚悟なんてとっくにしています。魔獣を倒すと誓い、武器を取った日から」


 ディークの言葉に、メンバーが一斉に頷く。が、後ろの方でユーリッドが真っ青になる。


「ちょ、怖いよ、ルーヴ・・・・・・」


 と呟いて震えた。


 北の森は以前アシュレイ達が来たときと同じく、明るく穏やかだった。ルーヴは「一般人は立ち入らない」と言ったが、近隣の村民たちは資材を得るために何度か森に入るという。それでも絶対に奥には入らない、行くのはやめろ、と途中で出会った男性に釘を刺されたが、残念ながら行くしかない。


「よし。森に入る前に少しここで休憩をとるぞ」


 ヴェイがそう指示し、森の手前で立ち止まった。


 アシュレイはメンバーから少し離れたところに佇み、森の木々を見上げていた。ルーヴが歩み寄り、声をかける。


「どうしたんだ?」

「あ・・・・・いえ、色々と奇妙な噂の多い森なのに、こうして見ているととても静かで・・・・・絵に描いたら良さそうだなあ、と」


 アシュレイはそう言って、視線を動かすことなく微笑んだ。


「絵はよく描くのか」

「趣味なので・・・・・僕はアルシャインとして各地を回りながら、色々な風景を描いてきました。各地の特色を知るのが楽しくて。だから・・・・・平和になったら、画布とペンだけで旅をするのも良いなって思っていたりもするんです」


 アシュレイは初めて視線をルーヴに移し、照れ臭そうに微笑んだ。


「平和が訪れるのか・・・・・・分からないんですけどね。それでも、夢だけは持っていたいんです」

「・・・・君らしい、良い夢だな。平和は・・・・・強く願えば必ず訪れる。人の思いは、強いから」


 そう言いつつ、ルーヴは「アシュレイはそれが似合う」と思った。ヴェイから聞いただけでも、アシュレイは幼いころから辛い人生を送ってきた。だからこそアシュレイは平和を望み、自然を愛しているのだろう。将来は、そんな世界になっていればいい―――ルーヴは、心からそう思う。


「・・・僕がゼクトの支配を受け入れてしまった理由は、何も両親と故郷を魔獣に奪われただけではないんです」


 アシュレイが不意に話を変えた。


「魔獣に両親や兄弟を殺されたって言う人は、クランの中に何人もいます。でも、その中で僕が選ばれた理由はきっと違う・・・・・」

「血筋・・・・の話は、アシュレイは知っているのか・・・・?」


 アシュレイは頷いた。


「3か月前、ゼクトがみんなに説明するのが聞こえていました。でも、きっとそれも関係ない。・・・・僕は疲れていたんです。そして、毎日に飽きていた・・・・・ただ魔獣を倒すだけの日々が、僕は嫌だったんです。・・・・おかしいですよね、自分でそう望んでクランに入ったのに・・・・・・」

「アシュレイ・・・・・」


 俯いていたアシュレイは顔を上げると微笑んだ。


「けど、ゼクトに解放されてからヴェイに言われて、久々に絵を描いたんです。そうしたら、忘れていた気持ちを思い出しました。・・・・僕は絵を描くのが好きだったんだなって・・・・・」

「良い息抜きになったのか? いや・・・・むしろ、生き甲斐に近いか?」

「生き甲斐・・・・・そうですね。そうだと思います」


 アシュレイは頷いた。


「ルーヴさんは? 騎士って大変だと思うんですけど、何か息抜きってあるんですか?」


 ルーヴは顎を摘まんだ。


「息抜きか・・・・・そうだな・・・・・両親は木彫り師で、元は私に後を継がせる気だったようだから、随分と技術を仕込まれた。今でもたまに、遊びで木彫り人形を作ることがある」

「木彫りですか。素敵ですね」


 アシュレイはそう言って優しく微笑んだ。


「でも、それなら何故騎士に?」

「父が亡くなり、剣の修行ばかりしていた兄は家を出てしまった。残った母と生きるには、手っ取り早く稼げる騎士という職が最適だった」

「あ・・・・・すみません」


 ルーヴは首を振った。


「気にしなくていい。実際、騎士という役職は私にあっていたようだ・・・・・おかげで今もうまくやっている。母も元気だしな」

「あの、お兄さんは・・・・・?」


 ルーヴは肩をすくめ、答えた。


「元気だと思うよ。10年以上家に戻ってはいないけれど」


 と、そこにヴェイがやってきた。


「そろそろ出発するが、大丈夫か、ふたりとも」

「はい」


 ルーヴは頷き、踵を返した。それを見、ヴェイはアシュレイに言った。


「アシュレイとルーヴとは、なんだか新鮮な組み合わせだったな。何の話をしていた?」

「趣味の話・・・・・ですね」

「趣味?」

「はい。ルーヴさんは木彫り細工をするのが好きだって」


 ヴェイが相槌を打った。


「へえ。そんな趣味がねえ・・・・・」


 そのあと沈黙したヴェイを見て、アシュレイが首をかしげた。


「・・・・ヴェイ?」

「―――あ、ああ、いや、何でもない。さあ行くぞ、アシュレイ」


 アシュレイは頷き、ヴェイとともにメンバーの元へ戻った。


 森の中に一歩入ると、アシュレイは胸を押さえた。シルヴァスが駆け寄った。


「どうした?」

「・・・・急に空気が変わった・・・・・ゼクトの気配が近い」


 ヴェイが近寄る。


「どっちだ?」


 アシュレイが指差したのは、森の奥、北だった。ヴェイがかろうじて道になっている場所を進んでいく。


 やがて少し開けた場所に出た。と、そこでセレニアが呟く。


「ここって確か、あたしたちがあの時魔獣と戦った場所ね」

「そうだね。そういえば、ここでアシュレイが倒れちゃって・・・・・」


 ユーリッドが頷く。しかし実際には、アシュレイはこの先にある祠に行き、ゼクトの力で瞬間的に元の場所へ戻ったのだ。アシュレイはあの時のように崖から下を覗いた。そして視線をややあげると、そこにはまた小さく祠が見える。


「ここを降りて、あの祠に行ったんです」


 ヴェイが頷き、崖を飛び降りた。かなりの高さである。それにディークが続き、着地点に術符を張り、風力を宿らせた。これが地面とのクッションの役割を果たす。


「降りて来い!」


 ヴェイが上に向かって叫ぶ。飛び降りた者は地面すれすれで風に受け止められ、衝撃なく着地できた。


 祠は封印が解けたまま、空だった。祠までたどり着くと、ディークがそれを調べ始めた。


「・・・・かなり強い封印だったようだな。アシュレイ、よくこれを解くことができたな」

「えっと・・・・・手を伸ばしたら解けちゃったんですけど・・・・」


 アシュレイは困ったように呟いた。ディークは立ち上がり、ヴェイに首を振って見せた。


「ここにゼクトがいた痕跡はありませんね」

「そうか・・・・・もう少し奥を目指してみよう」


 ヴェイはそう言い、祠の奥の森を見やった。


 その後、休憩を挟みつつどんどん奥へと進んでいった。と、アシュレイが足をとめた。


「ヴェイ・・・・あそこです」


 アシュレイが示した場所には、ひとつの洞窟があった。しかしもうアシュレイの呼吸はあがっており、疲れ果てているようだった。ヴェイは頷き、アシュレイの肩を支えてやりつつ洞窟を目指した。


 それほど広くはなく、奥行きもなかった。最初は真っ暗だったが、やがて目が慣れる。そして誰もが息をのみ、アシュレイだけが声を発した。


「ゼクト・・・・・」


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