9 対峙
道を進んでいく。何処まで行っても川は続いていた。キーファが首を捻る。
「これはどこに続いているんでしょうか」
「川というよりも池なのかもしれないな」
ヴェイが水面を見やる。僅かに揺らいでいる水面は相変わらず蒼く光り、左目を黒い眼帯で覆ったヴェイの姿が映る。
と、目の前に橋が現れた。アシュレイが橋の手前に佇み、天井を見上げている。ヴェイが隣に歩み寄る。
「どうした?」
「・・・・・魔獣が」
アシュレイは短くそう告げる。ヴェイも天井を見上げる。何もいないような気もするが、アシュレイは分かるのだろう。
「おそらく、騎士たちが討伐を断念した魔獣でしょうね」
ルーヴがそう言う。
「無闇に突っ込むのは危険・・・・・って、ちょっと」
ルーヴが言っている傍からヴェイが橋を渡り始める。
「考えたって戦うのは同じだろ。だったら突っ込むしかない」
「・・・・貴方達の実力は認めますが、帝国騎士だってそれなりの実力ですよ。少し慎重に・・・・・」
ヴェイは耳を貸さず、橋を渡っていく。ディークやアシュレイも続くので、ルーヴは肩をすくめつつ後に続いた。
橋を渡りきった。奥には以前と同じく祠がある。
「さあ来い、魔獣」
ヴェイが刀を抜く。その声に応じたかのように、巨大な魔獣が天井から降りてきた。大瀑布の時とほぼ同じ魔獣だ。ルーヴが双剣を抜き、ディークが術符を構える。
長く太い魔獣の腕が唸る。それを跳躍して避けつつ、ディークは術符を投じた。一度に投じた2枚の術符が魔獣の左右の腕に張り付く。
『炎』
途端に術符が火の塊と化した。その攻撃で魔獣の腕による攻撃が鈍った。
ヴェイの「飛燕」が唸る。強烈な斬撃で激しく魔獣の身体から鮮血が吹き出す。ユーリッドが銃を連射し、魔獣を捕えて動かさない。ルーヴとキーファが首を狙うが、なかなか届かなかった。セレニアの魔術がいつものようにすさまじい火力で襲う。
「ディーク!」
ヴェイが名を呼ぶ。ディークは頷き、一枚の術符を顔の前に立てた。目を閉じ、集中を高めていた。
術符が光る。ディークは術符を放った。魔獣の顔の目の前で術符が停止する。
『灼』
魔獣の足元の地面から火柱が立ち上った。それを見たヴェイが跳躍し、アシュレイが剣を持った右腕を交差させ、剣を構えた。
ヴェイが魔獣の首を斬るのと同時に、アシュレイの剣から放たれた紅い真空波が、魔獣の首を両断した。
ヴェイが地面に着地した瞬間に魔獣が横転する。ヴェイはふっと息をついた。
アシュレイは最後まで見届けることなく踵を返し、祠の前に立った。ルーヴがはっとして口を開きかける。しかしその前に、祠に触れようとしたアシュレイを小さな電光が襲った。
祠に一枚の術符が張り付き、発光していた。アシュレイが振り返る。ディークが軽く身構えていた。この行動はメンバーも予想外だった。
「ディーク・・・・・」
ヴェイが名を呼ぶ。ディークは真っ直ぐアシュレイを見つめた。
「・・・・祠を壊すな、アシュレイ。お前がお前でなくなってしまう・・・・・今なら戻ってこられる。アシュレイ、戻ってきてくれ」
アシュレイが剣をディークに向けて一閃させる。真空波をディークはかわす。その隙に、アシュレイは祠に向けて剣を叩きつけた。
術符から発せられる透明な障壁がアシュレイの剣を押し返そうとする。ディークの表情が苦しげになった。
「ディークっ、やめろ、無理をするなっ!」
ヴェイらしくない、あまりに緊迫した叫びが迸る。その瞬間に、アシュレイの力がディークを破った。
ディークの身体が後方に吹き飛ばされ、ヴェイが受け止める。ディークは激しく息をついた。ヴェイはディークをそっと壁際に座らせる。
アシュレイは剣を降ろしていた。祠を壊すことを躊躇っているような様子だった。
「・・・・これ、以上・・・・・やったら・・・・・僕は・・・・・」
アシュレイが呟く。その時、ゼクトの声が響いた。アシュレイだけではなく、この場にいる全員に聞こえた。
―――今更何を迷う。さあ、早くやるが良い。それですべてが終わる・・・・
その声に背を押されたように、アシュレイは祠に向き直った。そして剣を振り上げる。
「アシュレイ!」
ヴェイが叫ぶ。祠が崩壊する。前と同じように中で光っていた紅い宝玉。それから光が抜け、アシュレイの身体に宿った。
ヴェイが一歩前に出る。アシュレイは振り向きざまに剣を一閃させた。ヴェイですら見えない、神速の一撃だった。避けきれず、ヴェイの左目を覆っていた黒い眼帯が斬られる。眼帯が地面に落ちる。あらわになったヴェイの左目は白濁していた。瞼の上に一筋の傷もある。こっそり「趣味なのか」と思っていたルーヴが、本当に失明していたのかと思わず考えてしまった。
「アシュレイ! アシュレイっ!」
シルヴァスが名を叫ぶ。目を開けたアシュレイの口元に、冷たい笑みが浮かぶ。
『我はアシュレイに非ず。我が名はゼクト―――この地に生きる獣を統べる王』
シルヴァスが目を見開いた。
「アシュレイ・・・・・アシュレイはどうしたんだよ!?」
『奴は私の意識に飲み込まれ、闇の底で眠りについた。私に身体を明け渡し、永遠の微睡みに包まれることを選択したのだ』
「・・・・・っ! ふざけんな、てめえぇっ!」
シルヴァスが殴り掛からんばかりの勢いで怒鳴り、キーファが押しとどめる。
『これですべてを取り戻した。魔獣を統べるこの力を。これでようやく報復ができる・・・・・』
口を開いているのはアシュレイだったが、声はアシュレイではなった。ルーヴが身構える。
「ゼクト・・・・・お前は本当に、全ての人を滅ぼすつもりなのか。そうまでして、何になるんだ?」
『そもそも魔獣とは、かつては人を襲わない動物だった。そう・・・・魔獣などではなかった。何処にでもいる、普通の動物だったのだ』
ゼクトが語った。
『それがなぜ、人を襲う凶暴なものになったか知っているか? 人間がこの大地を支配し始めたことで魔獣は生き場所を失い、人を襲って生きていくしか道がなかったのだ』
ルーヴが眉をひそめた。ゼクトの声に苛立ちが混じる。
『人間とは愚かな生き物だ・・・・・自分たちが魔獣を凶暴化させているとは微塵も思わず、責任は私にあるとアーレイは言った。だから魔獣どもに城を襲わせてやった。アーレイは妻や子を失ったな。その腹いせに私を封印したのだ』
アシュレイは破壊して木屑と化した祠を肩ごしに見つめた。
『私の本体は北の森に、魔獣を使役する力は二つの場所に封印すれば、魔獣が大人しくなると思ったのだろう。しかし無駄なことだ。私は死んだわけではない。力を失っても、魔獣の憎しみが消えることはなかった・・・・・そうしてこれまで、魔獣は人を襲い続けてきたのだ』
アシュレイは一同を見据えた。
『これで分かっただろう? 人間は、それ以外の生物に悪影響を齎すのだ』
「だから滅ぼす・・・・・ということか? 悪いが賛同できないな、人間代表として。とりあえずまずはアシュレイを返せ。アシュレイの姿でそんな不気味な声を出されると悪寒が奔る」
ヴェイが見える片目でアシュレイを睨みつけた。と、アシュレイは笑みを浮かべた。
『・・・ギルバースはアーレイの弟の家系にあたる。王家の者どもはそろいもそろって魔獣を憎んでいた。ギルバースもな。やがてギルバースの家系は政治から消え、今の皇帝家が国権を握った。それはなぜか。ギルバースの一族は魔獣の襲撃で殆どの血族を失い、権力維持ができなくなったからだ』
「それがなんだ」
『魔獣も王家を憎んでいたということだ。主である私を封印したのだからな。そして魔獣は、王家の者を見つけ次第即座に殺していた。それ以外で街を襲うことなど滅多にない』
街を襲うことなどめったにない。それなのにアシュレイの故郷は襲われた。
ディークが呻きつつ声を上げた。
「まさか、アシュレイは・・・・・?」
『そうだ。この者はギルバースの末裔。かつて私を封印したアーレイの弟の家系だ。私の声を聴けたのも、この者の故郷が魔獣に滅ぼされたのも、この者が魔獣を深く憎んでいるのも、祖先の血がそうさせているのだ。互いを深く憎み合っていたのに、私に身を寄せざるを得なくなるとは、皮肉なことだな?』
アシュレイが面白そうに微笑んだ。ヴェイがぐっと刀の柄を握った。
「貴様・・・・」
シルヴァスに治療してもらっていたディークがゆっくりと立ち上がる。シルヴァスは何も言えずにそれを見送る。
無言でヴェイ、ルーヴ、ディークが身構えた。武器の矛先はアシュレイに向けられている。それを見たユーリッドが、彼にしてはなけなしの勇気をふるって大声を上げた。
「待ってよ! アシュレイに・・・・・どうしてアシュレイと戦おうとしてるのさ! アシュレイは関係ないでしょ!?」
「あたし、無理よ・・・・・アシュレイと戦うなんてできない!」
セレニアも叫んだ。するとヴェイが振り返らずに厳しく言った。
「戦え! でなけりゃアシュレイも助けられないし、俺たちも死ぬぞ!」
キーファがそんな二人の肩を叩く。
「俺たちはアシュレイを斬るんじゃない。アシュレイを惑わすゼクトを斬る。・・・・俺は決めた。アシュレイを傷つけても、あいつを助ける!」
それを聞いて、先に身構えたのはユーリッドだった。セレニアが驚いて少年を見やる。
「どうして・・・・」
「アシュレイを助けたいから。アシュレイに元に戻ってほしいから、だから・・・・!」
キーファが笑顔で頷く。セレニアも目を見張っていたが、ふっと笑みを浮かべた。
「・・・・・うん。あたしも、戦うわ」
そう呟きつつ、セレニアも身構えた。
『私に刃向かうとは愚かな。我らの力は人間には止められん』
「やってみなきゃ分からないだろう。何が何でもアシュレイを返してもらう。そのうえで、あんたにお礼をしてやるさ」
ヴェイが不敵に微笑む。そして一瞬で地面を蹴った。
アシュレイが剣を無造作に持ち上げる。ヴェイの刀と激しく火花を散らす。ヴェイはいつになく真剣だったが、アシュレイの力は想像以上だった。彼はつまらなさそうに剣を一閃させる。ヴェイが吹き飛んだ。
「強い・・・・・・」
ルーヴが呟く。その横でディークが術符を投じる。
『縛』
アシュレイの動きが止まったが、それも一瞬だった。しかしその一瞬が大きかった。セレニアの魔術とユーリッドの銃弾が矢の如く襲った。そしてルーヴが斬りかかる。
すると、呆気なく剣に手応えがきた。驚いてルーヴが間合いを開ける。
アシュレイの右肩から血が流れていた。先程まであれほどの力を見せつけていたにもかかわらず、アシュレイの動きが鈍っていたのだ。
『・・・・・くっ。なぜ動こうとしない?』
ゼクトの声が響く。それを見るルーヴの頭に、微かな声が聞こえた。それに気づいたルーヴははっとして、それから表情を引き締めた。
―――・・・・・僕を止めてください。
ルーヴには、はっきりとそう聞こえたのだ。
ルーヴの2本の剣が矢継ぎ早にアシュレイを襲う。本気だった。それを悟ったヴェイもすぐにアシュレイを攻め立てた。
アシュレイは攻撃を防いでいたが、ふっと束の間、その力が抜けた。ヴェイの刀がアシュレイを吹き飛ばす。アシュレイは地面に倒れ、起き上がろうとしなかった。
「アシュレイ!」
ヴェイが駆け寄る。と、傍にたどり着く寸前、アシュレイの身体が紅く光った。そしてその光が抜け、宙で形を作る。
現れたのは巨大な紅い虎のような生き物だった。純粋に虎にも見えず、翼がある。それを見たディークが目を見張る。
「有翼獅子・・・・・!?」
「なんだ、そいつは?」
「神話に登場する生き物です。翼を持ち、獅子の胴をもつ・・・・・それとよく似ている。これがゼクトの真の姿・・・・・?」
そういう神話に詳しいディークは信じられないと言った表情だった。が、そんなものに興味の無いヴェイは適当に相槌を打った。
シルヴァスが駆け寄ってくる。意識の無いアシュレイをシルヴァスに渡し、ヴェイは立ち上がった。
「シルヴァス、アシュレイを頼むぞ」
「ああ」
ヴェイは祠の前にあった五段ほどの階段を飛び降り、身構えた。
『アシュレイめ、ここにきて仲間への情が勝ったか。まあいい・・・・・私の力はすべて取り戻した』
「さっきお前は言ったな。自分は死んだわけではないから魔獣は生きていた、と。なら、お前が本当に死んだらどうなるんだ?」
『さあ、死んだことはないから分からん』
馬鹿にするようにゼクトが言った。セレニアがしらっとした視線を送る。
「・・・・・相当のひねくれ者ね」
ヴェイはにっと笑った。
「じゃあ試させてもらおう。みんな、こいつがアシュレイに巣食っていた寄生虫だ。遠慮はいらない、すぐに始末するぞ!」
これまでなかなか手出しができなかったメンバーが声を上げる。
『愚かな・・・・私が消えれば世界の生態系が狂う可能性を考えないのか』
「お前が操れるのは魔獣だろう? 一応今の世界で、魔獣と動物は別の生き物だ。関係ないだろ」
「浅はかな・・・・・」
ルーヴが呆れて額に手を当てる。ディークが組んでいた腕を解いた。
「しかし一理あるかもしれない。慎重に考えるのは貴方の役目です、ルーヴ。アルシャインは元々考えるのが苦手でして」
「え・・・・・? そ、それは貴方だったでしょう?」
「貴方の目にはそう映りましたか? 生憎と私は考えるより先に手が出る性質で」
ディークは面白そうに微笑むと、術符を構えた。そこで思い返してみると、確かにディークは真っ先に攻撃を開始していた。ディークは知識人で冷静だが、それと好戦的なのは別のようである。
「手合わせ頼むぜ、獣の王!」
ヴェイがそう言いつつ跳躍した。ヴェイが刀を振り下ろす。ゼクトは翼でそれを受け止め、弾き返した。しかしヴェイは空中で剣を一閃させた。
真空波がゼクトを一撃する。ゼクトは僅かによろめいた。
『何? 今の攻撃は・・・・』
「アシュレイと同じだって言いたいのか? 残念だな、これは俺の技だ。まだアシュレイには教えていなかった。だから最初にあいつがこれを使った時には、とうとう追い抜かれたかと思っていたが」
「・・・・結構焦っていたんですね」
キーファが呟く。ヴェイはさらっと無視した。
『成程・・・・少々侮っていたか』
ゼクトはそう言うと、前足を高く上げた。そしてそれを地面にたたきつける。
ヴェイのいる地面が裂けた。
「ヴェイ!」
叫ぶディークの隣で、ルーヴが地面を蹴った。まだそれほど地面が離れていない状態のうちに、ルーヴはヴェイの元に飛び移ったのだ。みるみるうちに地割れが大きくなり、ついにはヴェイ、ルーヴと、他のメンバーに寸断されてしまった。
『私はこの者たちを始末するとしよう。その間、他の者は・・・・私の駒と遊んでいるが良い』
ディークたちの周囲に、様々な魔獣が現れた。ディーク達は自然と背を預けあって丸くなった。ゼクトはヴェイとルーヴに任せるのだ。
ヴェイは隣にいるルーヴを見てにっと笑った。
「・・・・よお。お前、なんでこっちに来た」
「危なっかしくて、見ていられません」
ルーヴがきっぱりと言った。
「それに・・・・アシュレイが目覚める前に死んでもらっては困りますから」
「そこまで堕ちちゃいねえよ」
ルーヴも笑みを浮かべた。そしてふたりで3本の剣を構える。
「行くぞ、ルーヴ。叩き落とされんなよ!」
「はい!」
ふたりは跳躍した。
味方が寸断されたのを見たシルヴァスは慌てて、ヴェイ、そしてディークを見やった。自分たちのところは地割れの被害にあっていない。
「・・・・お、おい、どうなるんだよ、これ・・・・・このままじゃ直に崩れるぞ」
「シルヴァス! お前は先にアシュレイを連れて脱出しろ!」
キーファが叫ぶ。シルヴァスは怒鳴り返した。
「あんたたち置いて先に行けるかっつーの!」
「お前を逃がすんじゃない、アシュレイを逃がすんだ!」
「・・・・・それもなんだかなあ」
シルヴァスがむっとする。
「それにお前は戦えないだろう。俺たちはこっちで手いっぱいだ、お前の身まで面倒みられん!」
「そうかい、そうかい。俺に小言を言う暇はあるんだな、っと」
そうぼやいたシルヴァスの腕の中で、僅かにアシュレイが身動きした。はっとして抱き起こす。
「アシュレイ!」
アシュレイは薄く眼を開けた。シルヴァスは二重の意味でほっとした。アシュレイの意識が戻ったこと、そして、アシュレイの瞳がいつものような透明感のある蒼だったことだ。
「良かった! 元に戻ったな!」
「・・・・・シルヴァス・・・・・」
アシュレイはぼんやりと名を呼び、身体を起こそうとした。が、度重なる戦闘で身体が痛んだ。半ばゼクトに操られて戦っていたので、今までしたことの無いような無理な動きをさんざんやっていた。身体が戻った瞬間、悲鳴を上げている。
「うっ・・・・・ぅ・・・・・」
「まだ起きんな。動けるようになるまでもう少し寝てろ」
「・・・・けど、みんなが・・・・・」
「大丈夫だ。魔獣が襲ってきたら、俺がぶっ飛ばしてやる」
アシュレイが瞬きを繰り返す。シルヴァスは得意げに笑った。
「俺は治癒術師だが、前は剣だって握ってたんだ」
「・・・・期待しないでおく。その時は、僕が倒すよ・・・・・」
「てめっ・・・・・!」
声を上げようとして、シルヴァスはふっと微笑んだ。そして彼らしくもなく、静かな声で言った。
「・・・・安心した。お前がお前でさ・・・・・」
シルヴァスはそっとアシュレイを地面に寝かせた。
「もう、どこにも行くなよ・・・・・」
アシュレイは再び目を閉じた。最後の台詞をアシュレイが聞いていたか、定かではなかったが、聞いていなくていいとシルヴァスは思った。アシュレイにまたからかわれるだけだ。
「・・・・・あり・・・・がとう・・・・・」
かすれた声でアシュレイが呟く。シルヴァスは溢れそうになる涙を、乱暴に拭ったのであった。